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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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176 残念なお知らせ

 残念なお知らせが入ってきた。

 越前にいる足利義秋が、来年春に美濃へやって来る。

 これで来年春以降の上洛が決定した事になる。


 それに合わせて、関白近衞殿下もやって来られる。

 何をする為に来るかといえば、足利義秋の元服である。


 史実では、元関白の二条晴良が朝倉家に招かれて行われた様だが、この世界では織田家によって、現関白の近衞前久を招いて執り行われる様だ。


 本当は係わり合いになりたくないのだが、どうやら殿は、室町幕府を再興して畿内の平穏を取り戻したいとお考えの様なので仕方ない。

 所謂、天下布武ってやつだな。


 足利義秋とは、そんなに会う事も無いだろうが、織田家の方針に大きな影響力を持つ奴なので、じっとしていて欲しいと切に願う。

 俺は上洛や天下統一などはどうでもいい、御家と家族と自身の無事を第一に考えている極普通の田舎武将だからな。


 だというのに今、目の前には…


「おお、傳兵衛殿。一度、お会いしたく思うておりました」


 爽やかイケメンがニコニコしながら物静かに語りかけてくる。


「これは忝ない。某も兵部大輔殿に是非とも御話を伺いたいと思うておりました」


 兵部大輔こと細川藤孝は、越前にいる足利義秋から元服や上洛の話を詰める為に、和田惟政、摂津晴門と共に岐阜へやって来たのだが、伯父である平野右京進のせいで俺と会う事になってしまった。


「ほう、今話題の傳兵衛殿が某に聞きたい事とは、興味深いですな」


 まあ、藤孝が俺の事を知っているのは分かる。

 平野右京進を通じて情報収集をしていたのだから、向こうにもある程度、俺の情報が流れるのは当たり前の事だろう。

 織田家中でなら兎も角、京や越前で俺の事が話題になる訳もないので世辞なのは分かるが…右京進がある事無い事言ってないか心配だ。


「某、領地で茶器を作り始めておりますが、田舎者故、審美眼に自信が御座いませぬ。どの様な物を目指せば良いか、是非とも高名な兵部大輔殿の御意見を伺いたく」


「ほほう、某にですか…」


 笑みが深くなり、よりニコニコしだす。


「某、主に茶と歌を嗜みますが、やはり京で高名な方に一度教えを受けたいと思うております」


「ほう、傳兵衛殿は歌も嗜まれますか」


 兵部大輔殿の笑みが一層深くなる。


「下手の横好きに御座いますが…郡上郡の遠藤家に知己を得まして、東氏の書などを拝見させて頂きましたが、無学非才の身にて難儀しております」


「東氏の書に御座いますか!それは羨ましい。是非とも拝見致したいものに御座いますな」


 歌の話を振ると、やや食い気味に俺の話に乗ってくる。

 やはり将来、古今伝授を授けられる者としては(史実通りなら)、古今伝授の元祖とも言える東氏の書となれば黙っていられないか。


「六郎左衛門殿に頼んでおきましょう」


「それは有難い。是非とも御頼み致す」


 よし、態々俺が郡上郡に出向いて、六郎左衛門殿に恩を売って仲良くなった布石が役立った。

 対細川藤孝兵器、遠藤家所蔵の東野州の所縁の書。

 文化人の兵部大輔殿なら、古今伝授の祖とも云われる東野州こと東常縁の書を、見られるならば見てみたいだろう。

 話題作りの為に、先程の茶器の話と、あとは料理の話を用意していたが、やっぱり歌の話の方が良さそうだ。


 色々悪いイメージもあったりするが、仲良くしておいて損はないはず!


 折角用意したから、天ぷら擬きと鰻の白焼きを食わせてみよう。

 京でも通用するはず!

 食通の藤孝に改良点とか言ってもらえたら助かるし。

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― 新着の感想 ―
[一言] 嘘みたいだろ……この爽やかイケメン、突進してきた牛の角を引っ掴んで投げ飛ばすんだぜ……
[一言] 歴史変わりまくりだなぁ。 そして、足利義昭にどっぷりハマってしまった信長さん、 巻き添えで大ダメージ食いそうなんだけどー。心配だ。
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