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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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173 神戸家に挨拶に行こう

 さあ、来年の上洛戦、六角攻め(たぶんあるよね?)の下準備をしておこう。

 史実通りであれば、三好義継が三好三人衆と決別し、松永久秀と結ぶのが二月。

 六角氏式目が成立するのが四月。

 織田家の動きが早いので予定が早まる恐れもあるが、それまでに六角家の切り崩しをしておきたい。

 これが上手くいけば、国人衆の反発で上洛戦までに六角氏式目が成立しないんじゃないだろうか。

 観音寺騒動で殺された進藤家と後藤家の者を中心にガリガリ削っていきたいのだが、それは殿や他の者がやるだろう。

 やはりここは、折角鈴鹿山脈の麓に領地を貰ったので、その反対側にある甲賀郡を攻めていきたい。

 その為に先ずやるべき事は…よし!三七様に挨拶に神戸城へ行こう!



 早々に三七様に挨拶を済ませ、今後の打ち合わせに入る。

 出席者は、神戸家家老の岡本太郎右衛門重政、関安芸守盛信、神戸蔵人大夫具盛に俺と内蔵助、弥八郎。

 三七様は、まだ九つなので家老の太郎右衛門が仕切っている。


「翌年に上洛、折角手にいれた鈴鹿峠を使わぬ手は御座らぬ。そのためには安全に峠を越えられる事が大事に御座る。近江側の安全の為、甲賀郡の国人衆を切り崩すのに、是非とも御力を御借りしたい」


 早速、六角家への工作の協力を頼む。


「しかし、神戸家は南伊勢の備えをせねばならぬ。兵は出せぬぞ」


 太郎右衛門は、どうやら否定的なようだ。

 安芸守と蔵人大夫も何も言わない。


「兵を貸せなどとは申しませぬ。関家の方を御貸し願いたい」


 なんか皆が渋い顔をしているので、言葉を続ける。


「三七様はまだ幼い。備えもせねばならぬし、領内も纏めねばなりませぬ。此度の上洛にも呼ばれる事はありますまい。なればこそ、このような調略を持って上洛への貢献とすれば、後に三七様の為になりましょう」


 三七様の株を上げるのに協力するよ、と擦り寄ると太郎右衛門の顔は輝く。


「それは良き、お考え。安芸守殿、蔵人大夫殿には神戸家の為にも傳兵衛殿に御協力して頂きたい」


 うん、清々しい程の手のひら返し、素敵です。

 とっても扱いやすいから。

 俺の事を三七様に友好的と思ってくれれば、今後もやり易いだろう。

 今のところは、別段なんとも思ってないが…

 あと、今の神戸家の当主は蔵人太夫なんだから、様付けしろよ。


 当然、安芸守殿と蔵人大夫は、面白くなさそうだな。


「…承知した」


 と、安芸守は短く言葉を返した。

 気に入らないのは分かるが、大人ならもう少し取り繕うぜ。


「では、細かい打ち合わせは後日、某の城にて行いましょう」


 太郎右衛門をはじめ織田方の者がいては、あまり話が進みそうもないので、場を変えてお互いだけで話をしたいかな。



 場所を大久保城に移し、酒を酌み交わしながら、関安芸守、神戸蔵人大夫、それに安芸守の弟でウチの領地の近くの小岐須常陸守と話をする。


「いや、安芸守殿、蔵人大夫殿。侵略してきた織田家の、それもまだ年端もいかぬ童をいきなり主君とせよと言われ面白くないと思われるのは当然の事。しかし、御家の復興を望まれるのであれば、やはり三七様に手柄を立てていただく事が一番の近道に御座る」


 実際、関安芸守も神戸蔵人大夫も、三七様を軽んじて、殿の不興を買っている。

 別段、関家や神戸家、それに三七様がどうなろうが、此方に害が無ければ構わないのだが、今は六角攻めに使える人材なので活用していきたい。

 まあ、敵対するよりは友好的な方が、利が多いのは当然だろうし。


「それはどういう事に御座ろうか?」


 俺の口振りから、三七様の一派ではないのを嗅ぎ取ったのだろう、幾分皆の表情が柔らかくなる。


「これから織田家は上洛し、更に勢力が増しましょう。戦場は四方に移り、軍を率いるのは、殿の家臣に任される事となりましょう。そして出来るならば、軍を率いるのは有能な家臣よりも有能な御一門の方々が望ましい」


 無能な家臣より有能な家臣、有能な家臣より有能な一族。

 同じ一族でも、息子の方が良いに決まっている。

 後継争いが起こらない前提の話だが…

 そこは一族で固めている関氏なら理解出来るだろう。

 神戸家には裏切られたりもされているが…


「戦場が外に広がれば、優秀な子を戦の無い伊勢に置いておくのは勿体無い。必ずや、四国や山陰、山陽といった外へ赴くことになりましょう。そうなれば、再び関氏が鈴鹿郡を治める機会も巡って来るというもの。或いは新たな者との養子縁組を行い、神戸家との養子は解消となる事もあり得るやも知れませぬ」


 実際、三好家との養子縁組をするために、神戸家とは解消されている。

 まあ、本能寺の変のせいで、三好家との養子縁組も無くなったが。


「しかし、三七様に能がないとなれば、伊勢に居座る事となりましょう。仮に謀反を起こそうにも、最早北畠では相手にならず、長野工藤家、六角家共に分裂しております。武田家、浅井家とは同盟しており、頼むべき者がいないとなれば、三七様に活躍して頂きつつ己の評価を上げ、三七様に伊勢より出て頂くのが一番かと愚考致す」


 一応、反乱を起こしても勝ち目は無いぞと釘を刺しておこう。

 相手に反抗的な態度を取って足を引っ張るより、出世させて追い出せばいいのだ。

 周りの評価というオマケも付いてお得だよ?

 まあ、結果どうなるかは上司によるんだけど、そこは言わない。

 本当に出ていくかなんて知らんし、どうでもいいし。

171話で、いきなり一生吹山城の名が出てきて、小林家から取り上げている事になってしまっていたので、160話に以下の一文を追加しました。(抜けていました。スミマセン)


どうやら小林家は、三重郡の西部にある佐倉村に主城である佐倉城と、その南にある智積村に出城である一生吹山城を持つ国人らしい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新が早くて快調ですね。 [気になる点] 鈴鹿峠を越えて近江八幡側と言うのが、すごく気になったので、たぶん観音寺城の京都側のつもりで書かれたと思うのですが?だとしたら、郡名の野洲にしたほう…
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