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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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161 佐久間理助

 佐久間久六殿の与力として、佐倉城奪還に向かう事になったのだが、長門守殿から借りていた兵は返してしまったので、自前の兵力に赤堀家、楠木家の残存兵力や楠木兵部大輔殿が調略した小勢力の兵を加え、佐倉城へと向かう。


 佐倉城へ物見を出したところで、久六殿が若武者を伴ってやってくる。


「傳兵衛、嫡男の理助だ」


 でかい…今はまだ俺より少し低い位だが、数年すれば抜かれるんじゃないだろうか。


「理助盛政に御座います。傳兵衛殿には、一度お会いしたく思うておりました」


 久六殿の嫡男という事は、これが将来鬼玄蕃になるのか…


「しかし、理助殿は幾つであろうか?随分若いような気もするが、その歳若さで戦場に出られるとは相当に優秀なのでしょうな」


「十三だな。これが初陣だ。傳兵衛も同じ歳で初陣しておろうが」


 久六殿は、苦笑しながら教えてくれる。


「傳兵衛殿が十三での初陣なされたお陰で、某も早くに初陣する事が出来ました」


 俺が十三で初陣したから、皆子供をそれくらいで初陣させようとしているのか?


「理助も妻を娶っておるのだ。早すぎるという事はあるまいて」


 な、なん…だと…!こいつ…もう結婚しているだと…!


「ほう、理助殿は妻帯しておられたか…」


「はっ、三つになる娘もおりまする」


 バ、バカな…娘もいるだと!

 しかも三歳という事は、理助が十一歳…満年齢で10歳の時に生まれたということか!

 嬉しそうに娘がいる事をカミングアウトする理助に愕然となる。


 まだ結婚なんて考えてもいなかったが…

 これ程の敗北感を味わったのは初めてだよ!ちくしょーが!!



 物見が帰って来たので、理助への複雑な思いを敵にぶつけてやろうと意気込んでいたのだが、敵は既に城を捨て本拠地の峯城へ逃げ帰ったらしい。

 おら!逃げてんじゃね~よ!


 空となった佐倉城へ入ると、今後の事を久六殿と相談する。


「如何する、傳兵衛?」


 小林八郎左衛門の要求は満たしたし、千種家の南下も防ぐ事が出来た訳が…


「このまま、何もせずに帰るのも面白くありませぬな。権六殿への援護も兼ねて、峯城を目指して南下致しますか?」


 峯城まで攻めるのは無理だが、敵の兵を此方に向けさせる事が出来れば、権六殿が楽になる。


「そうだな、このまま兵を進めるとしよう」


 二人の意見が一致して、更に兵を進める事になった。



 さて、周辺の国人衆の調略などより大切な事がある。

 八郎左衛門も言っていた、智積村の松木家の事だ。


 松木家は武家ではなく公家だ。

 先々代の松木宗綱の頃より、京の戦乱を避け、荘園のある智積村へ下向していて、京と智積村を行ったり来たりしている。

 現当主である左近衛中将宗房は、飛鳥井家から養子に入り現在も京にいるが、先代の宗藤の実子で宗房の義姉である加賀姫が智積村に残っている。

 ここは保護して、松木家、飛鳥井家との仲を深めておきたい。


 なので、この戦いも佐倉城での戦闘とならずに済んで、ホッとしている。

 加賀姫のいる加賀屋敷は佐倉城のすぐ近く、目と鼻の先だからな。



 早速、八郎左衛門に手紙を持たせ、加賀姫のいる加賀屋敷へと向かわせる。

 俺は現在の松木家の荘園には、手をつけたりしないという内容の物だ。

 あくまで俺や久六殿はだが…


 あっ、八郎左衛門の話によると加賀姫は、とても温厚で慈悲深い五十過ぎの女性らしい…姫という言葉に騙されるところだったよ。

佐久間盛政(1554~1583)

虎姫(1564~1610)

どっちかの生年が間違ってそうだけど、無いとまでは言えないので、そのまま採用。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎回、ちゃんとオチがあって、思わず座布団出したくなる(笑)
[気になる点] >早速、八郎左衛門に手紙を持たせ、加賀姫のいる加賀屋敷へと向かわせる。 >俺は現在の松木家の荘園には、手をつけたりしないという内容の物だ。 >あくまで俺や久六殿はだが… >あっ、 「八…
[良い点] 更新ありがとうございます。 [一言] 盛政は一説に六尺あったらしいですから、当時としてはデカイでしょうね。当然横にもデカイのでしょうから巨漢ですね。利家や兼続と同じくらいかな。 傳兵衛は…
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