154 北伊勢攻略援軍到着
「久しいな傳兵衛!」
「息災で何より」
「御無沙汰しております、権六殿、久六殿」
増援にやってきた柴田権六殿と佐久間久六殿に挨拶する。
楠城が落ちたので、小城である小古曾城より楠城へやって来たのだろう。
しかし、援軍の先発隊が権六殿と久六殿か。
今まで干されていたっぽい権六殿も、漸く活躍の機会が巡ってきたのだ。
頑張って活躍し、出世してもらいたい。
「此度の戦でも大層活躍したようだな。一日に二城落としたとか。三左も嘸や鼻が高かろうて」
いや~、有名人に誉められるのは良い気分やなぁ。
いや、そんな事よりも近江の事など聞いておかないと。
俺にとって、伊勢なんかよりも、近江の方が大事やねん!
「権六殿、近江の方は如何でしたか?」
権六殿は、腕を組み少し考えている。
「如何と言われてもな。戦となる前に美濃へ戻る事となった故、詳しくは分からぬが、やはり六角と三好は手を結んだようだな」
いや、そこは知ってるからええねん!
聞きたいのは、六角の内情とか、浅井の反織田派の反応とかやで!ついでに一向宗と比叡山もか。
まあ、戦ってないし、美濃へとんぼ返りしたから分からんよな。
「左馬頭様は、如何されましたか?」
「左馬頭様は、若狭へ逃れられたそうだ。美濃へお越しいただけれは話は早かったのだろうが、仕方あるまい」
やっぱり義秋は若狭へ逃げたか。
まあ、こうなっては生きていてもらわないと。
義栄(今は義勝だが)が将軍になって、六角が浅井討伐を願い出て、ついでに同盟の織田も袋叩きなんかされたら敵わんし。
「左馬頭様を岐阜へお迎えするとして、いつ頃叶いましょうか?」
「朝倉の出方次第であろうな。出来れば次の夏までには上洛したいものだが…」
まあ、そうだよね。
若狭に逃げたのだから、隣にいる名門の朝倉家に上洛を促すよなぁ。
しかし、朝倉義景は動かないだろう。
義秋の我慢がどこまで持つかで、上洛できる時期が変わってくる。
六角氏式目が制定されるよりも早く、何とか攻め込みたいのだが…式目の制定も早まるかもしれないし。
浅井の調略も進むだろうから、それも阻止して浅井の拡大を防いでおきたい。
はぁ、どうせなら織田に逃げて来いや!
「して、傳兵衛。そちらの様子は如何か?」
逆にこちらの状況を聞かれてしまった。
「残る城は采女城のみに御座いますが、城主の後藤采女正は神戸、関両家より支援を受けております」
「で、如何すべきだと思う?」
えー、俺に聞くんかい…どないしよ…
「采女城ではなく、高岡城を攻めてみるのは如何でしょう。高岡城に敵の援軍を集中させた上で、両城へ調略をかけます。応じればよし、応じねば兵を回して攻め落とします。敵も援軍は期待出来ぬと此方に降るやもしれませぬ。なんなら両城を封じ込めた後、神戸城を狙うのも良いのでは?」
采女城なら、史実でも落城しているので落ちるとは思うんだけどな。
史実でも、高岡城より先に神戸城を狙い降伏させているし、何とかなるだろう。
大量に兵を連れてきているんだから、三城同時攻めくらい出来るよね。
「ふむ、ではまず高岡城を攻めて釆女城の兵を退かせるか?権六」
「そうだな。殿が来るまで何もせぬのも面白くない」
まあ、二人とも俺に聞くまでもなく高岡城を攻めるつもりだったのだろうな。
なんだろ?俺をテストでもしているのかな?




