145 浜田城
赤堀城を落とした俺達は、周囲を警戒していた大矢知遠江守の軍と合流し、急ぎ浜田城へと向かう。
これだけ騒ぎを起こしたのだから、すぐ近くにある浜田城が気付いていないという事はありえない。
しかし、此方の戦力は赤堀城の備えに置いてきた兵を除いた戦力と、大矢知などの織田方についた伊勢衆の一部、合計2500程。
対して浜田城に籠る戦力は、100程度・・・のはず。
圧倒的な戦力差があるし、待っていれば長門守殿の軍もやってくる。
浜田城は平城で防御も固くない。
しかし、神戸家や関家の援軍が来ないとも限らないし、その前にとっとと方を付けよう。
活躍の欲しい大矢知遠江守や、今回あまり活躍出来ていない与力などを中心に浜田城へ突入させる。
勿論、俺の家臣も突入させるが、森小三次、仙石新八郎、野中権之進の三人は俺の護衛に残しておく。
他の脳筋は煩いので、突入させておこう。
恨まれたくないし、居ても邪魔だし…
城内の指揮は谷野大膳に任せて、脱出しようとする者がいないかチェックする。
暫くすると「ワーッ」と声が上がるが、どうやら門を突破出来たようだ。
少数でよく粘っていたようだが、流石に兵力差がありすぎてどうしようもない。
敵も勝てるとは思っていなかっただろうし、皆討ち死にする覚悟が出来ているのだろう。
死兵なんて怖いから、近寄らない~っと…
もう勝ちを確信して、なんとか長門守殿が来る前に落とせると、ほっとしていると、堀尾茂助が、お坊さんと若者を連れてやって来る。
「殿、城を出る者を見つけ捕らえました。どうも浜田近江守の嫡男であったようで…」
まあ、それはいいんだけど、この坊さんは誰?
「拙僧、近江守様より嫡男、与右衛門様の事を託されました、東漸寺の東玄性と申します」
ありゃりゃ、嫡男を逃がそうと託されたのに、茂助に捕らえられちゃったのか…うーん…
「そうか…寡兵であろうと降伏せず己を貫く近江守殿の御嫡男だ。このまま生きておられれば、さぞかし武名を轟かせる事となろう。この様な者にこそ、上総介様のお役に立ってもらいたいのだ」
と、浜田親子を持ち上げてみる。
赤堀城で牧月斎に約束したから、どうしようかと思ったけど、グッジョブ茂助!
「御坊に咎はない。ただ少し手伝いを願いたい。赤堀牧月斎殿との約束で、なるべく浜田家の者を助けたい。近江守殿に降るよう説得して頂きたい」
咎はないと言った事で、東玄性もホッとしたようだ。
「近江守様の事はお任せくだされ。それにしても、傳兵衛様は熱心な一向門徒と聞き及んでおりましたので、仲の悪い高田派の拙僧の命は無いものだと思うておりました」
俺、一向門徒ちゃうって!
「御坊は勘違いをなされておられる。某は仏の教えを守る者を尊敬しております。それは、本願寺であろうと高田派であろうと変わりませぬ。一向門徒は仏の教えに背く唯の暴徒故、容赦致しませぬが、他の僧には等しく敬意を持っておりまする。何卒、誤解なきよう御願い致す」
そうなんです、一向宗が嫌いなだけで、本願寺派だろうと高田派だろうと構わないのです!
一向宗を孤立させたいだけで、本当に宗教なんて気にしてないさ。
むしろ、一向宗にもっと圧をかけてくれと発破をかけ、高田派の皆さんに宜しくと伝えると、大層喜んで高田派の諸寺に織田家への支援を働きかけてくれると約束してくれた。
東玄性は、近江守の説得しに再び城へと戻ると、暫く後無事説得したのだろう、城主の浜田近江守元綱は降伏し、浜田城は落ちた。




