142 次は赤堀城
寝返った富田城の南部兼綱と大矢知城の大矢知遠江守は、所領安堵なので置いておいて、討ち死にした朝倉掃部輔の茂福城、春日部家春の蒔田城は岩室長門守殿が接収する。
捕虜となり降伏した萱生城の春日部太郎左衛門尉は、滝川彦右衛門殿に引き渡し、そちらに協力させる。(そっちの方が城に近いからな)
「では、長門守殿が茂福城より南下して羽津城を攻めるのであれば、某は南の赤堀城を攻め落とそうかと思いまする」
朝明川の戦での後始末を終え、茂福城に入った俺達は、次の目標である赤堀氏の攻略に乗り出す。
長門守殿と二人で、すり合わせをした後、長門守殿は寝返った南部兼綱を伴って、赤堀三城と呼ばれる赤堀氏の三つの城の内、一番北にある羽津城を攻める事となった。
俺は、三城で一番南に位置する赤堀城を奇襲する。
無理なら長門守殿と合流して、徐々に南下していけばいい。
三城の内、俺の攻める赤堀城と長門守殿の攻める羽津城とは少し離れているが、残る浜田城は赤堀城のすぐ近くなので慎重克つ迅速に攻めないと、すぐに援軍が来てしまう。
出来れば浜田城から羽津城への援軍が出てから攻めたいところだが…
広永城へと戻り、家臣を集め準備を進める。
今回、我が軍には調略した大矢知家の兵が加わる事になった。
なので、大矢知家当主の大矢知遠江守に赤堀城、浜田城の事を聞く。
「赤堀城だけでなく赤堀三城は、全て平地に盛り土をした平城に御座る。侵入は然程難くは御座らぬ」
成る程…なら本当に潜入出来るか、現地に物見を出すか。
「茂助、仁右衛門と三郎四郎を連れ、赤堀城の物見へ出ろ。潜入出来そうか、出来るなら何処からかを探って参れ」
「はっ、承知致しました」
こういう事は、茂助に任せておけば何とかなるだろう。
増田仁右衛門と戸田三郎四郎をつけて偵察に出す。
「長門守殿が羽津城を攻めた後、夜陰に紛れて赤堀城を奇襲する」
もし羽津城へ援軍を出してくれれば、赤堀、浜田両城の兵数が減って楽になるかもって話だけどね。
出なくとも攻めるんだけど。
茂助が戻り、侵入経路の確認をする。
長門守殿が羽津城を攻撃を開始したのだろう、浜田城からの出兵を確認。
赤堀城からは援軍を出さなかったのか動きはない。
そして夜が更け、赤堀城への潜入を決行する。
「お主らは宵の内に城付近に潜み、塀を乗り越えて内から騒ぎを起こせ」
部隊を率いていない兼松又四郎や可児才蔵らの脳筋共に城内への侵入を命じる。
なるべく中に乗り込んでから、騒ぎを起こすように!
「三郎四郎、彦作、甚之助は中で潜み、騒ぎが起こり次第、城門を開け兵を中へ入れよ」
敵兵をやり過ごし、城門を開ける役目を戸田三郎四郎氏繁、乾彦作和信、森甚之助正成の三人に任せる。
お前らは騒ぎに参加するんじゃないぞ!
「大膳らは城門が開き次第突入し、城内を制圧する。首は取るな!何よりも素早く落とす事を第一とせよ!」
谷野大膳や八郎右衛門らの兵を率いている者に命じるが、首を取るなと言ったからか、反応が鈍い奴等もいるな。
首なんか取ってる暇なんかねーよ!
「日が昇る前に赤堀城を落とし、次いで浜田城に攻めかかる。長門守殿が羽津城を落とす前に、赤堀、浜田の二城を落とすぞ!」
『応!』
今日中に二城落とすと言えば、皆のヤル気が出てきた。
皆の気合いを入れたかっただけで、別に俺達で浜田城を落とす必要はないけどな。




