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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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135 桑部城を降して

「殿、城主大儀須若狭守が降伏致しました。北城守将毛利次郎左衛門は、落ち延びようとしたところを又四郎が討ち取りまして御座います」


 林助蔵が報告にやって来る。

 どうやら、今後の作戦を考えている間に、桑部城攻めは終わってしまったようだ。

 兼松又四郎も、珍しく活躍出来て何よりだな。

 まあ桑部城は、肩慣らしみたいな物だけどな。

 本番は、これから始まる春日部氏戦だし。



 伊勢の西側を攻めている滝川彦右衛門殿は、春日部氏の星川城に向かっているらしい。

 いくら此方がゆっくり攻めようと思っても、滝川彦右衛門殿の行軍スピードには合わせないといけないので、少し巻いていかないとな。


 桑部城を攻略した後、直ぐ南東にある金井城を攻めるが、元々の兵力が違いすぎる為、鎧袖一触、城主の松岡彦之進を討ち取り、直ぐ近くの小向(おぶけ)城もついでに落城させ、城主の飯田庄之助を自刃させた。

 次いで西の埋縄(うずなわ)城を攻めて、城主の疋田(ひきた)左京を討ち取ったところで、長門守殿に評定を開くと呼び出され、主だった家臣を連れて長門守殿の陣へと向かい、今後の話をする。


「傳兵衛殿、縄生(なお)城の栗田監物(けんもつ)より降伏の使者が参った」


 長門守殿の言葉に少しがっかりする。

 この辺りの国人は、長島一向一揆の時に裏切る奴らが多いから、まとめて成敗しておきたかったのだが、まあ仕方ないか…流石に誰が裏切るかまでは覚えてないし。


「この後の事だが、予定通りにこのまま西へ向かい、広永城を攻めようと思うのだが、何やら春日部氏が周りの城に救援を求めているとの話が入ってきた。傳兵衛殿は如何思う?」


 まあ、春日部氏にしても、自領に攻め込もうとしている織田軍をボーっと眺めているだけの訳もないしな。

 今いる埋縄城の南には朝明川(あさけがわ)が流れており、川沿いに西に進むと次の目標の広永城がある。


「彦右衛門殿は、今何処に?」


 滝川彦右衛門殿の位置次第じゃないかな?


「彦右衛門殿は、伊坂城へ向かっておられる」


 無茶苦茶頑張ってるやん!

 もう既に星川城を落として次の城へ向かっているとは…


「では、伊坂城からの援軍は御座いませぬな…」


 朝明川のおかげで、北西にある伊坂城からの援軍がないならば、南側の対岸だけに注意していればいい。


「援軍は、主に春日部家に南部家、朝倉家から出るようだが、彦右衛門殿が伊坂城を攻めれば、それよりも少なくなろう」


 伊坂城の近くの朝倉家などは、そちらの対応に追われて、あまり此方へ援軍を出せなくなるか。


「予定通り、広永城を攻めて良かろうかと」


「だが、城攻めの間に援軍が来れば挟撃を受けるやも知れぬが…」


「問題御座いませぬ。半数を城に張り付かせておけば、広永城からは出られぬでしょう。寧ろ、城から兵を出させれば、それだけ早く戦を終わらせる事になるやもしれませぬ」


 広永城へ援軍を送ろうと思えば、向こうが川を渡って来るしかない。

 兵力は此方の方が上なので、広永城に兵を封じ込めるのも、出てきた兵を討ち取るのも、どちらでも対応出来る。

 それに…加木屋久蔵の方を見ると、確りとした頷きが返ってくる。

 久蔵に任せた調略の結果に自信があるのだろう。


「久蔵、直ぐに繋ぎをとれるか?」


「無論に御座います」


 久蔵に念押しするが、これは大丈夫そうだな。


「長門守殿、援軍の方は何とかなりそうに御座る」


「ふむ、では傳兵衛殿にお任せ致そう。この後に詳細をお聞かせ願おうか」


 そしていよいよ広永城を攻め、春日部氏との戦いが始まる。

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