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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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130 北伊勢侵攻準備

 永禄九年、俺は北伊勢への侵攻軍に参加する事となった。


 今回、伊勢侵攻軍に組み込まれてしまったが、戦線が領地の戸田から遠ざかるのは良いことだ。

 話題に上がらないので忘れているかも知れないが、俺が殿から頂いた土地は戸田村。

 滝川彦右衛門殿の蟹江城のすぐお隣さんだ。

 伊勢に攻め込むのは構わないが、攻め込まれるのは大変困る。

 折角、穀倉地帯へと育て上げた土地が戦禍に晒されるのは頂けない。

 戦いは領地の外でやってもらわないと。


 依然、長島の願証寺の脅威はあるが、将来長島を攻略する為にも、伊勢にある港を制圧して海上封鎖が出来るようにしておかないと。

 なので、ウチからも戦力を出して、微力ながら兵数の強化を行う。



 さて、この侵攻に参加するに当たって、一向門徒の家臣は置いていけと言われてしまった。

 代わりに与力をくれるという話だ。

 元々、伊勢近辺の領地を持っている武将は参戦するのだから、一向門徒の兵など腐るほどいるだろうに、なぜ俺だけ注意を受けたのか…

 家臣で一向衆の者など三割もいないのだが、三河一向一揆参加者を召し抱えたので、そのような印象を持たれているのだろうか?

 それとも周りからは、俺が度を越す程の狂信的一向門徒にでも見えるのだろうか?

 俺、無宗派なんですが…

 まあ、与力を貰えるというのなら貰っておくが…


 貰える与力だが話を聞いた時点では、まだ決まってなさそうだったので、一応親父を通して数人ピックアップして提出してみた。

 希望が通らなくても別に構わないのだが、駄目元で美濃衆の中から高木貞久、一柳直末、安田国利、古田勘阿弥、松野一忠、木全忠澄、林能勝(よしかつ)など幾人の名を挙げてみた。

 結果、一柳直末、林能勝、安田国利の三人がつけられる事となった。

 まあ、名を挙げた者達は、無理だとは思ってたが、一柳直末、林能勝は有難い。


 一柳直末は、秀吉の時代に6万石を有する大名となる。

 羽柴秀次の家老となる『熊』と渾名される猛将で、彼が死んだ時に藤吉郎は悲しみで三日間口も聞かなかったとか。

 1570年くらいから藤吉郎に仕えるらしいが、その時の俸禄が15貫だか25貫だかなので、物凄いお得感がある。

 目指せ直臣!


 林能勝は、蜂須賀家の家老で5500石。

 1614年の大坂冬の陣にも何と八十一歳という高齢で従軍し、しかもそれで戦功をあげる程の長期間に渡って活躍する武勇に優れた武将だ。

 あと、なんか蜂須賀家の軍師らしい(エピソードは知らない)。


 安田国利は、正直知らん…

 なら何故指名したかというと、国利の息子である国継。

 こいつが、本能寺の変でウチの於乱ちゃんを討ち取った安田作兵衛だ。

 何故かその後に、於勝ちゃんの家臣になっているのだが…

 於乱ちゃんを討ち取ったのは頂けないが、明智家(斎藤内蔵助)の家臣としての仕事をしただけなので、まあ許してやろう。

 道具に文句を言っても仕方ない。

 その代わりに、ウチでさっさと確保しておく。



 さて、他にも新たな人材を求めて熱田へとやって来た。

 この日の為に(よしみ)を通じていたと言っても過言ではない、前田又左衛門殿の兄である前田蔵人利久殿。

 その蔵人殿の家臣をお借りしようと、熱田へとやって来た。

 流石に家臣にスカウトするのは難しいだろうが、北伊勢限定での助っ人なら大丈夫だろう。



「傳兵衛殿のお申し出は正直有り難い。宜しく御願い致す」


 遂にあの前田慶次を仲間に加える事が…出来ませんでした!

 残念ながら既に滝川彦右衛門殿の所へ陣借に向かったそうで、一足遅かった。

 あ~あ、漫画の様な活躍を期待していたのに…残念!

 代わって軍に加わってくれたのは、前田兄弟の三男である五郎兵衛安勝殿だ。

 家臣にではなく陣借だが…


「いや、慶次郎等が滝川家にて陣借しておる故、皆で押し掛けてもと思い、儂は遠慮しておったが、傳兵衛殿からの御誘い、真に忝ない」


 五郎兵衛殿の娘さんは、前当主の蔵人利久の養女となり、前田慶次の妻となっている。

 本来なら慶次と共に彦右衛門殿の軍に加わっているのが当然だと思うのだが、他の家臣達が参戦する方を優先したようだ。

 守勢での活躍がある武将なので大いに活躍して…活躍の場ってあるのか?

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