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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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117 竹腰摂津守

 郡上郡の畑佐で予定通り銀山が発見された。

 これを殿に献上して、代わりに貰ったのが葉栗郡の柳津(やないづ)だ。

 位置は蓮台のすぐお隣。

 すぐ近くとかではなく、お隣!

 楽でいい。


 領地が増えたならば、新しい家臣を探さなければならない。

 未来の佐久間半羽介殿が殿から貰った折檻状の中でも、所領が増えたのに家臣を増やしてないと怒られていたので、領地が増えたらちゃんと家臣を増やさないといけない。


 で、誰か牢人を探さないといけないのだが、大体の有名武将は、既に織田家に仕官していたり、誰かの与力となっているので、どうしたものか…

 あんまりマイナーな武将とか分からんのだが…


 加藤光泰は牢人していたような気がするが。

 佐藤右近右衛門殿の所の湯浅讃岐や長沼藤治兵衛、イガイガの所の松野一忠とか譲ってくれないだろうか…無理だろうなぁ…


 仕方ない、少し訳有りの人材でもスカウトしてみようか。

 親父にも相談しなきゃな。



 稲葉山城が落ちた時に、保護していた人物は遠藤六郎左衛門殿の母親以外にも二人いる。


 一人は長井隼人の息子である半右衛門頼次。

 降伏してからウチで預かっている。

 長井隼人は自刃して果てたし、丁重に扱ったから、ウチへの印象は然程悪くはない様だ。

 家臣になってくれるかもしれない。


 もう一人は、斎藤五郎左衛門頼元。

 親父の旧主でもある土岐頼芸(よりのり)の四男で、頼芸が美濃を追放された時は、まだ幼かったので、斉藤家の扶助を受けていたらしい。


 半右衛門は大丈夫だろうが、五郎左衛門の方は殿の考え方次第だろうな。

 一応、土岐家の人間だし、邪魔になるか、それとも使い道があるか、どうでもいいか。

 もし許されたのなら、父親の頼芸を呼び寄せ、捨て扶持を与えて美濃で余生を送らせてあげてもいい。

 たしか頼芸は晩年盲目になったので、既に盲目になっているか、そうでなくとも症状が出ているかもしれない。

 その場合は復権は難しいだろうから、呼びやすくなるだろうし。



 厚見郡佐波村にやって来た。

 此処に目的の人物が隠れ住んでいるとの情報を得てやって来た。

 前世の知識で佐波村にいるのは分かっていたので、捜してもらったのだ。


「摂津守殿、某は蓮台城城主、森傳兵衛と申す」


「無論、存じ上げております。して、傳兵衛殿は某に如何な御用か?」


「此度、上総介様に新しく柳津の地を任され申した。是非とも柳津の地を知る摂津守殿に御力をお借りしたく参りました」


 目の前の壮年の男に丁寧に礼を尽くして口説いていく。


「一色家が滅びた今、刀を捨て田を耕すと決めております。御声掛けは誠に有難いが、どうかお帰り頂きたい」


「摂津守殿程のお方が、隠遁などと余りに惜しい話に御座る。某に仕えるのが不服であられるなら、上総介様にお仕え出来るよう取り計らいまする。あくまで斉藤家に仕えたいと申されるならば、道三入道の末子である新五殿や、大納言殿の子である久蔵もおります。どうかその御力を世の為に御貸し頂きたい」


 少なくとも新五殿の所へやる気はないが、殿や久蔵の所は許容範囲だ。


「いや、右兵衛大夫様に御仕えする事を最後の御奉公と決めておりました」


 強情やなぁ。イガイガの軽さを分けて貰いなよ。


「稲葉彦四郎殿、氏家常陸介殿、伊賀伊賀守殿、何れも織田に降りました。摂津守殿と同じく最後まで右兵衛大夫殿に尽くした不破太郎左衛門殿も織田に降り家名を保っております。此処で竹腰の名を終わらせるなど勿体なき事に御座います」


 まあ、兄の家系は尾張藩の家老になっているけどな。


「…」


 摂津守殿が無言で考え込んでいるが、どうだろう。


「伊豆守殿は残念に御座いましたが、御嫡孫と甥御は生きておられます。家名を繋がれませ」


 息子の伊豆守は亡くなっているが、孫と甥は生きている。

 二人の為にも頑張ってみない?と、迫る。


「孫はともかく、甥には継ぐ家を残してやらねば、兄に申し訳が立たぬか…傳兵衛殿、宜しく御願い申す」


「おお!有難い!摂津守殿、感謝致しますぞ」


「傳兵衛殿、宜しくお願い致しまする」


 よし、斉藤家の六宿老と呼ばれていたのだから有能だろう。

 摂津守の受領名を捨てて、元の新助に戻そうかと言う話も出たが、すでに新助は、加治田新助がいるので止めてもらった。

 竹腰摂津守尚光、君に柳津と、ついでに蓮台の事は任せた!


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