107 佐藤六左衛門
鉈尾山城へと着くと、佐藤秀方はあっさりと織田方についた。
まあ、今の時点で稲葉山城へ援軍を出していないという事は、一色家への忠誠心など無いという事だからな。
なら、さっさと織田家に臣従を申し出ればいいのに、どうやら郡上郡を狙っていたようだ。
ウチが遠藤家へ援軍を出したせいで、様子見していたらしい。
肥田玄蕃、小栗信濃守とは予定通り、ここで別れて身軽になる。
これにて遠藤六郎左衛門殿の領地奪還作戦は終了。
「次郎左衛門、御苦労であった。父上には郡上郡の領地について六郎左衛門殿と話をするよう伝えてくれ。次郎左衛門も菊に宜しく言っておいてくれ」
「「はっ、畏まりました」」
夏目次郎左衛門率いる森家の援軍も解散だ。
青木次郎左衛門も、そのまま金山へと帰る。
「大膳、お主は兵を久々利に戻してくれ。俺はそのまま、稲葉山へと向かう」
ついでに久々利から連れてきた俺の兵達も谷野大膳に連れて帰ってもらおう。
頑張っていたし、これ以上拘束するのは可哀想だ。
「内蔵助、お主は蓮台に戻り、御父上の要件を聞いて参れ」
「戦の方が大事に御座います」
「火急の用やも知れぬ。要件だけでも伺って参れ」
相手が痺れを切らして、奥州に行ってしまうかもしれないからな。
今、稲葉山城は織田軍によって包囲されているのだが、一色龍興は固く守って出てこず、睨み合いとなっているらしい。
「六左衛門殿、稲葉山へ兵を出しては頂けぬか」
佐藤六左衛門殿に援軍の要請をしてみる。
六左衛門殿も稲葉山城の攻略に貢献出来た方が、殿の覚えも良くなるので利があるだろう。
「それは無論、参陣させていただく」
まあ、少しくらい兵が増えたところで戦況は変わらないだろうし、物資の消費が増えるだけ損なのかもしれないが。
「六左衛門殿も織田方についたとはっきりすれば、籠城しても無駄だと分かりましょう」
籠城側の心を折っていかないとな。
佐藤家としても、落城前から参陣していたという事実は評価されるかもしれないし、やっておいて損はないだろう。
よし、殿に知らせなきゃいけないよな。
味方にタコ殴りに合いたくはないし。
今ならば、一色軍への援軍の振りをして、敵を城内から引きずり出し挟撃するという作戦も出来るからな。
稲葉山城攻略には諸説あるが、兵の半数ほどを敵の後方へと隠し、一色軍有利と思わせて進軍させ、隠した兵を敵の援軍に偽装させて挟撃したという話を、どこかの宣教師が言っていた。
成功するかは分からないし、無駄に兵を損なうのでやらないかな?
いや、戦功が欲しいとか、時間をかけたくないとかの理由で、実行するかもしれないか…
さて、フロイス日本史と信長公記、どっちに近い展開になるのかなぁ。
出来れば最後は、信長公記の方の展開だったら助かるのだが…




