106 一先ず鉈尾山城へ
「傳兵衛殿!此度の事、誠に忝ない。この御恩は必ずや御返し致します!」
遠藤六郎左衛門殿が物凄く感謝してくれている。
まあ、領地を取り戻せたばかりではなく、飛騨からの侵略や家臣の謀叛など一気に解決出来てしまったからな。
気掛かりなのは、長井隼人に嫁いでいる母親の事ぐらいだろうか?
こればかりは、イガイガに任せるしかない。
「なんの、共に織田家を支える同輩なれば当然の事。大隅守殿も宜しくお願いしますぞ」
六郎左衛門殿との友好を深めながら、大隅守にくれぐれもと釘を刺す。
「無論に御座る。後の事は尾張守様や三左衛門殿と相談の上という事になりましょうな」
なんか、俺の役目は終わったから、さっさと上役と代われと言われているような…
まあ、それは上の人が決めてくれればいいよ。
「では、戻るとしよう」
無事に終わって、漸く久々利へ戻れるとホッとする。
「殿!蓮台より源八郎が参っております!至急の御目通りをと!」
森小三次が、蓮台にいるはずの自分の弟で、俺の小姓である源八郎が来た事を慌てて告げる。
え~、蓮台で何か問題でも起こったのか…
「すぐに呼べ」
聞きたくはないが、至急と言っているので仕方ない…すぐに源八郎を呼ぶ。
源八郎が転がる様にやって来て要件を話す。
「殿!尾張守様、稲葉山城へ御出陣に御座います!」
おおう、本当に稲葉山城を攻めたのか…今年はもう、お腹いっぱいなんだが…
流石にこんな大勢のいる中、聞かなかった事にして、のんびり過ごし「間に合いませんでした~」とか言うのは無理があるしな…
まだ間に合うのかな?
いや、史実なら半月程で終わったはずなので、帰り道で陥落の知らせが来るかもな…
現状、他国からの援軍や侵攻は無さそうだが。
「一先ず鉈尾山城へ向かい、佐藤六左衛門殿に話を聞く」
関城へ向かう途中にある鉈尾山城の佐藤秀方なら、今どうなっているか分かるはずだし、それまでに情報も入ってくるだろう。
佐藤秀方は、美濃制圧後に織田家についているので、もう一色家に見切りをつけているだろう。
未だ決めかねているようなら、背中を押してやろう。
ということで、鉈尾山城へと出発する。
「尾張守様は、瑞龍寺山に陣を敷き、井ノ口の町を焼き討ちになさいました。その後、鹿垣を作り逃げ道を塞いでおられます。現在稲葉山城との間で睨み合いが続いております」
途中、稲葉山城戦の続報を持ってやって来たもう一人の小姓である安孫子竹丸の話を聞く限り、まだ稲葉山城は落ちていないようだ。
「殿、如何致しますか?」
「予定通り、鉈尾山城へ向かう」
内蔵助と方針を決めていると、
「傳兵衛殿、我等は…」
小栗信濃守が肥田玄蕃と共に話に入ってくる。
「おお、信濃守殿、玄蕃殿。無論、鉈尾山までで結構に御座る。此度の援軍、忝ない。誠に助かり申した」
まあ、姉小路との戦いの援軍に来たのだから、これ以上付き合う必要はないよね。
鉈尾山城まで付き合ってくれるならば、佐藤秀方に圧をかけられるからな。
「傳兵衛殿は如何なされる?」
「蓮台の知らせ次第に御座る。何事も無ければ、このまま金山へ兵を帰して、某は蓮台へと向かいまする」
もしも稲葉山城の攻略が始まった場合を考えて、ウチの主力は残していったのだし、奥田三右衛門や山田八郎右衛門にも言い聞かせてある。
前野将右衛門や堀掃部大夫殿、奥田七郎五郎殿にも頼んであるので、ちゃんと参戦しているはず。
「それから内蔵助様に、御父上の伊豆守様と蜷川道哉様が蓮台へ御越しに御座います」
「父と道哉殿がか?」
竹丸の報告に内蔵助も理由が分からず首を捻る。
たしか、蜷川道哉こと親世と息子の親長は、永禄の変の後に城を捨てて父は奥州へ、息子は四国の長宗我部家へ逃げたんだったか?
奥州へ向かう途中に寄ったのかな?




