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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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105 畑佐の戦い

「傳兵衛様!安養寺ら各門徒が敵陣への突撃を開始致しました!」


 さて、いくら一向衆を捨て石に使うと言っても、此方(こちら)も何もしないという訳には行かない。

 森家の印象が悪くなるからな。

 此方も遠藤家に合わせて、突撃しなければ…

 いつもなら、なるべく戦わずに済むように工作するのだが、今回は遠藤家に恩を売る事と、姉小路家に美濃侵攻を断念させること、郡上郡の一向衆との親密度アップの為に、頑張ってもらわなければ…勿論、俺ではなく家臣がだが…


 今回は激戦を予想して、開発後に封印していた管槍を使って突きまくろうと思う。

 俺自身は、乱戦に参加する心算(つもり)など更々ないが、巻き込まれる確率大だし、周りの武将の批判もあるだろうが、自分の命の方が大事だし。


 先程、一向宗門徒共が敵陣に突っ込んでいったのだが…よくやるよね。

 俺なら絶対出来ないわ…



「次郎右衛門!今、真宗門徒が敵陣に切り込んでいる。武士として、森家の者として、遅れをとる訳にはいかぬ」


 夏目次郎右衛門は頷くと、兵たちに発破をかける。



「これより我等も敵陣へ突撃する!僧どもに負ける事など赦さぬ!より多くの首を上げよ!」


「敵を狩り尽くせ!突撃!」


 号令かけると左右に肥田、小栗の軍を配し敵陣へと突貫する。

 遅れて両遠藤軍も少し遅れて突撃を開始する。

 森家を印象付ける為にも、遠藤軍より遅れて突撃する訳にはいかなかったので、先ずはよしとしよう。

 でも皆、勇ましく突撃していったが、被害を抑えろって話をした事、覚えているだろうな!



「安養寺門徒、円覚坊殿、正専坊殿、妙専坊殿、御討ち死に!」


「最勝寺専賢殿、御討ち死に!」


 一向門徒たちの討ち死にの報告が届く中、我が軍の主な者たちはまだ健在だ。

 他より戦っていないはずの俺でも、雑兵の首を十ばかり取っている程の戦いだ。

 渡辺忠右衛門などは俺よりも多くの首を取っているが、それでも長島一向一揆で二十七人を討ち取った我が弟は、やはりどこかおかしいな。


 しかし、中々終わらない…

 そろそろ、ウチにも犠牲者でそうなんで、早く終わって欲しいんだけど。

 そう思って内心焦っていると、突然敵軍が崩れていく。


「遠藤清兵衛殿が後方に回り込み、飛騨への道を押さえられました!」


 遠藤六郎左衛門殿の家臣である遠藤清兵衛が、(ようや)く回り込んで、飛騨への退路を塞いだようだ。

 これで姉小路軍は、降伏するなり、飛騨への突破を図るなりするだろう。

 ということで、姉小路軍は無視して、畑佐軍へ突撃を敢行する。


「敵はもはや総崩れだ!畑佐六右衛門の首を取れ!」



 別に取れなくても飛騨へ逃げるだろうから構わないのだが、取れるならば取っておこう。

 俺も管槍で敵を突いていく。

 雑兵を二人討ち取った辺りで、


「畑佐六右衛門の首、久留善四郎が討ち取った!」


 との声が上がるが、正直意外な奴が討ち取ったな。

 他家に討たれなかった事は良かったので、良い仕事をしたな。


「殿、終わりましたな」


「大勝利に御座いますな!」


 と、ずっと側で戦っていた岸新右衛門、乾七郎左衛門に稲田次郎兵衛が寄ってくる。

 次郎兵衛は前の戦いで大将首をとっているので、今回は俺の側で待機だ。

 他の者にも武功を上げてもらわないとな。

 張り切っていた大津土左衛門も、兜首は取れなかったものの相応の活躍はしたようで、他の者もまずまずの戦果があったようだ。


 よし、ささっと帰って久々利の領地の開発に勤しもう!

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