104 金山城からの援軍
取り敢えず、金山城からの援軍と合流しますか。
援軍を率いるのは、夏目次郎左衛門廣次。
その下に、渡辺忠但馬守秀綱、仁兵衛廉綱に、鳥居四郎左衛門忠広、大津土左衛門宗常、久留善四郎正勝、岸三之丞教明。
見事に俺がスカウトした、三河一向一揆からの転向組ばかりだ。
残念な事に大津土左衛門の兄の半右衛門吉明は、今年の頭に病で亡くなってしまった。
スカウトしておいて、あまり活躍をさせてあげられなくて申し訳なかったが…
なのでこの戦いは、兄の知行を狙っているのか、弟の土左衛門が張り切っているので期待したい。
今回の戦いの味方は一向門徒が多いので、うまいこと連携してくれるだろうが、釣られて一緒に突撃したりしないだろうな。
門徒を盾に被害を抑えてくれよな。
遠藤軍が陣を構える久須見へと向かうと、両軍膠着状態となっていた。
両軍かなり被害が出たようで、一先ず様子見となっているようだ。
取り敢えず夏目次郎左衛門率いる森軍の陣へと入る。
「次郎左衛門、どうなっておる?」
「あまり、よろしくはないかと。負ける事はありませぬが…」
雪が積もる前に勝って帰りたい所だが…
「やはり、誰かに無理をしてもらう必要があるか…」
「我等が先陣を切りますか?」
渡辺忠右衛門などは、ヤってやりますか!って顔をしているが、そんな顔をされてもな~。
「先の大樹様の弟君であられる覚慶様が、近江へと逃れられている」
突然関係ない話を始めてみた。
皆がキョトンとしているのが少し面白い。
「恐らく殿にも、覚慶様より御声がかかる。殿の御考え次第では上洛となるやもしれん。畿内の大舞台を前にして、このような前座の小競り合いなどで、兵を損ないたくはない」
ザワザワとかドヨドヨとか騒いでるな。
やっぱり皆、京へ上りたいよな~。
「傳兵衛様、上洛というのは確かでしょうか?」
渡辺忠右衛門が尋ねてくるが、恐らくって言ったやろが!
歴史通りならばの話で、美濃攻めも少し早くなっているから、どうなるか分からんが、そのうち上洛はするんじゃないかな?恐らく!
「御声がかかるのは間違いなかろう。それを受けるかは、殿の御判断次第だがな」
ざわつきが大きくなる。
「では、遠藤家の被害も抑えねばなりませんな?」
内蔵助らが確認してくる。
「そうだ。遠藤家には越前、飛騨への壁となってもらわねばならん。遠山家もそうだが、この壁が脆いと我等が代わりに壁役を担わねばならん。他の者が上洛を目指しておるのに、美濃で指を咥えて見ておるだけなど詰まらぬであろう?」
遠藤家と遠山家、ついでに徳川家は、東の壁だから、突破されるとウチに被害が及んでしまう。
「では、寺に動いてもらいましょう」
「頼めるか?権之助殿」
「容易き事にて」
権之助殿に一向衆を煽ってくるよう頼む。
さて、後は用意してきた秘密兵器の幟を配る。
『南無阿弥陀仏』と書かれた幟で、弟の於乱ちゃんの兜の立物にも、その文字が使われていたとか、いないとか。
美濃も飛騨も一向門徒が多いので、味方の一向門徒からしたら心強いだろうし、敵からしたら躊躇してしまう…事もあるかもしれない。
俺が一向宗と敵対しているというのは身内なら知っているが、他の者は知らない者の方が多いだろうし、勝手に勘違いして好意を持ってくれるかもしれない。
一向宗だけじゃなくて、真宗…いやそれ以外のところでも『南無阿弥陀仏』と唱えるところは多いし、大丈夫だろう。




