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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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 97 洲股攻略

佐久間信直視点です

 尾張国小牧山城  佐久間信盛家臣 佐久間左京亮信直



 兄、半羽介(はばのすけ)が殿から洲股(すのまた)に砦を築けとの命を受けた。

 しかし、今まで何度も城跡に砦を築いたが一色軍により妨害されてきた。

 此度(こたび)も同じ事になる気がするが。


「兄上、何か妙案があるのか?」


 しかし、兄は腕を組みながら首を横に振る。


「しかし、殿の命だ。やるより他あるまい」


 確かにそうではあるのだが、それでは今までと同じく失敗に終わってしまう。

 何か手立てを考えねばならないが、そう簡単に思い浮かぶ訳もない。


「殿、柴田権六郎様、森三左衛門様がお越しになられました」


 と、家人が兄に知らせる。

 権六殿と三左殿が来られるとは…もしや、兄を心配して来て下さったか…


「何?権六と三左が?すぐに上がって貰え」


 兄もすぐに御二人を奥に通す。



「半羽介、妙案でも浮かんだか?」


 権六殿が冗談半分で兄に尋ねる。

 何も浮かんでいないのを分かっているのだろう。


「浮かぶ訳があるまい。権六は何かあるのか?」


「無いぞ。三左は何ぞあるか?」


「無いな」


 御二方にも妙案は無いかと諦めるが、三左殿はニヤリと笑みを浮かべ言葉を続ける。

 

「儂にはないが、傳兵衛にはあるぞ」


 なんと!策があるのか。


「ほう、傳兵衛がな」


「それは是非とも拝聴せねばな」


 兄と権六殿が、笑いながら先を促す。


「洲股の地で一から砦を造るから襲われるのだ。予め柵を作ってから行けばよい」


 は?どういう意味だ?


「柵の部分を予め作ってから、筏にして川に流し、洲股で組み立てればよい。組み立てるだけならば、さほど刻はかかるまい。後は堀を作れば、取り敢えずの役には立とう」


 成る程…確かにそれならば…

 しかし傳兵衛殿が、これを考えたのか…

 皆、感心し唸っている。


「目眩ましにどこか兵を出した方がよいか」


 兄が呟く。

 確かに敵の目を他に向ける事が出来た方が、成功しやすいだろう。


「ならば、儂が兵を出そう。敵の目を適度に引き付けた後、半羽介の援軍に回ろう」


 権六殿が手助けを申し出る。


「頼む。であれば、まずは木材の手配をせねばな」


「まあ、急くな半羽介。木材は既に用意が出来ておる。傳兵衛が以前より手配しておったからな。筏の船頭も、配下の川並衆を使えば良かろう」


 三左殿の言葉に一同息を飲む。


「待て三左。傳兵衛は殿の命が下る以前より、洲股に砦を建てる事を考え算段を立てておったという事か!」


 この事は権六殿も知らなかったのか驚愕の声を上げる。


「木材の手配は、昨年蓮台を任せてから故、それ以前より考えておったのだろうな。まあ、洲股の他にも二、三候補はあったようだが」


 傳兵衛殿は、それほど前から策を巡らせておったか…


「三左よ、策を用意しておった傳兵衛の手柄とせずともよいのか?」


「構わん、傳兵衛も承知の事。さっさと美濃を落とせるならば誰でも構わん。むしろ手配した木材が無駄にならぬよう売りつけろと言っておったわ」


 兄も後ろめたいのか三左殿に尋ねるが、三左殿は笑って許可なされた。


「なれば、三左、権六よろしく御頼み申す」


 と、兄が御二方(おふたかた)に頭を下げるのに合わせて、某も頭を下げた。



 権六殿が陽動を買って出てくれるなか、昨日の暮れより、資材を筏に組んで川を下り洲股へと運び、それを組み立て柵を築いている。

 兄は、その指揮で忙しい。

 俺は物見を率い、敵軍が来ないか見張っている。



「与十郎、進捗はどうなっておる?」


「はっ、想定よりも早く進んでおります。やはり前野将右衛門殿、坪内玄蕃殿等の力が大きいかと」


 一旦洲股へと戻り、兄の元で作業の指揮をしている与十郎に状況を聞くが、与十郎の話では想定よりも早く終わる事が出来そうだ。


「やはり傳兵衛は、端から事を想定して好を通じておったのだろうな」


「で、ありましょうな…」


 感心するやら呆れるやら。


「まだ権六殿からの知らせは来ぬな?」


「御座いませぬ」


 まだ、陽動に掛かったままなのであろうか?

 流石に、もう知られていると思うのだが…


「左京亮殿!」


「これは新次郎殿、この様なところで如何された?」


 突然、織田家筆頭家老である林佐渡守殿の娘婿の新次郎殿に声を掛けられる。


「近くの十七条城に林家の者がおりまして、その者を調略しておりました。織田家との内通を取り付け、此度の築城の報せを遅らせる様に頼みました故、一色の援軍が来るには今暫くかかるかと思いまする」


「ほう、それはお手柄に御座るな!」


 しかし何故、今この時に調略を?


「三左衛門様より急ぎ、林家の縁者を調略してもらえぬかと頼まれまして、慌てて駆けつけましたが、何とか間に合ったようで…」


 三左衛門殿が…いや、三左衛門殿は、この策は傳兵衛が考えたと言っておられた。

 これも傳兵衛の仕業であろうか…

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― 新着の感想 ―
[一言] 不自然なまでの準備の良さ。 流石に怪しまれるかな。
[良い点] 織田で転生するなら誰もがやりたい墨俣RTA完了! 結果論だけど前の利三勧誘といい光秀、秀吉のデバフと本能寺妨害に余念が無いね [一言] 半兵衛が仕官拒否するのは傳兵衛のこれまでの活躍から自…
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