第35話 レール
さて、鉄道を敷くぞ。
とりあえず、今いる北の第三の拠点から、第一の拠点へと繋げるのが目標だ。
この両拠点の間にはすでに『高架』の道が作ってあり、その上にレールを敷いていけば陸上の魔物をよけつつ列車を走らせることができる。
「晴れてよかったなー」
「ゴっ♪」
俺はチビと一緒に石の階段を登った。
高架の上までくるとやたら陽の光がまぶしい。
ずっと地下での作業だったし、モグラの気分である。
「とりあえずレールを作ろう。ええと、素材は……」
俺は工作BOXを開いた。
原材料
木材:435356
鉄:10893452
石材:6735436
材料は十分。
まずは高架上の道に小さな石を敷いていく。
ジャラジャラジャラ……
こうして砂利を敷いたところに、次は枕木を設置していった。
「枕木は等間隔にな」
「ゴゴ!」
そして、ある程度先まで枕木を配せたところで、鉄のレールをこれに嵌め込んでいくというわけ。
レールは、逆T字型の鉄の棒を思い浮かべ、工作BOXで可能な限り長いものを作り出した。
俺が一度に生成できる1ブロックの大きさは最大約10歩。
これを二本、想定している車輪の幅に合わせて併設していく。
「よし、完成だ」
と言っても、はじめの10歩ぶんだけどな。
でも、この10歩の長さを一単位として作業していくことになる。
「あとはこれを繋いでいけばいいだけだ。チビ、そっちの砂利は頼む」
「ゴゴー」
こうして、また砂利を敷き、枕木を配置し、一単位ぶんのレールを二本嵌め込んでから、最初のレールと繋ぎ合わせる。
結構骨の折れる作業だけれど、鉄製のネジを巻いたり、砂利をならしたりといった補助作業をチビがそつなくこなしてくれたので、思ったより早く進んでいった。
「これで1000単位か……」
やがて、レールを1000本×2繋ぎ合わせると、俺はそう一息ついた。
1000単位、つまり約一万歩ほどの線路が出来上がったわけだ。
「よしチビ、今日はもう帰ろう」
「ゴ?」
まあ、まだそんなに遅い時間でもないんだけどな。
今日のレール敷きはここまでとして、第三の拠点へ帰って別の作業をしておきたかった。
別の作業とは……
機関部の原寸サイズVerの製作である。
線路も届いていないのに列車を作ってどうするのかと思われるかもしれないが、ちょっと考えてみて欲しい。
レールを伸ばしていけば、作業現場はどんどん拠点から離れていくだろ。
そこは必然荒野の真ん中だから、いちいち仮家を建てて眠らなければならなくなる。
しかし、もう列車を作ってしまえば、すでに作ったレールのところまでは列車で通えるってわけ。
「ミニチュア鉄道はできたんだからな。すぐにできるよ」
そう。
頭に思い浮かべれば部材を作りだすことのできる俺にとっては、試作品ができれば原寸大を作ることも容易い。
「が、待てよ……」
第三の拠点へ帰ると、さっそく家に帰って機関部の工作に取り掛かろうと思ったが、そこで俺はまた考える。
原寸大を作るのは容易い。
だが、しかし、車両を運搬するのはミニチュアとは話が違ってくる。
特に、この鉄道は高架上を走るのだ。
そうなると機関部や列車を高架の上へあげるシステムが必要になる。
俺は『素材』であればいくらでもインベントリに保管することができるが、『作ったモノ』を魔法空間上に保管することはできないのだ……
「どうするかなあ」
そこで、列車を作ったり修理したりする『車庫』を、高架の上に作ってしまおうと考えた。
つまり、作ってから高架の上にあげるのではなく、高架の上で作ってしまえばいいのだ。
「どうせなら駅も高架上に作ってみるか」
【第三の拠点、高架上図】
□□□□□□□□□□□階段
← 高架レール □
□□□□■■■■■ □
■ 車 ■ 駅 □
■ 庫 ■ □
■ ■ □
■■■■■□□□□
まず、高架の先端で土と石を積み上げ、高台を拡張してスペースを作る。
階段の邪魔にならないよう配置に気をつけて、車庫と駅とを建設した。
「領主さま、お弁当お持ちしましたー」
「わー! すごいですね」
そんなある日。
第三の拠点の女子四人組がお昼を持って来てくれた。
「すごく大きいです!」
「これが本物サイズなんですか?」
車庫で作業していた俺に、女の子たちはそう尋ねる。
そう。
車庫にはすでに9割がた完成した機関部が、鉄光りの威容をたたえていた。
「そうだよ。もう少しで完成ってところだな」
俺はずっしりした鉄製の機関部をペシペシと叩いて、ニマニマとほほ笑んだ。
「メシ食ったらちょっと動かしてみるよ。この前約束したし、試しに乗ってみるか?」
「本当ですかぁ!」
「わーい!!」
こうして昼飯を食べると、機関部の最終調整をしてから、いよいよ列車を走らせてみることにする。
ガシャコン……!
車輪がレールに嵌る。
機関部の後ろにはけん引車両が一両。
「それじゃ動かすぞー」
「「「はーい!」」」
俺は機関部に乗り込み、燃料タンクに魔石を投入する。
キュイーン……☆
魔力エネルギーがほとばしり、車輪へ動力が生じたようだ。
「動いた!」
後ろの車両から少女たちの黄色い声があがる。
ゴット……ゴットン……ゴットン、ゴットン……
列車が次第とスピードに乗り始める。
「よし、今だ」
そこで俺は運転席に垂れ下げた紐を引いた。
すると、悲しい音色の汽笛が、青い空と荒野一面に響き渡る。
その情緒はまるでこの果てしない大地と帝国の交りを象徴するかのようで、みごと美しかった。




