Ep-726 レウケー討伐
こうして、私達は白い森の各所に、ベルの〈魔木樹領〉を設置することが出来た。
これで、私は神聖術を展開できる。
ただし、それをやるためには、再び中央に向かう必要がある。
「皆、時間稼ぎをお願い」
「分かったわ! 頑張って!」
私は魔皇剣を仕舞い、即座に七天破魔剣セブン・ヘヴンスを呼び出す。
「〈聖光八天翼〉!」
翼を出し、私は飛び上がる。
白い森の上空を一気に滑翔し、レウケーのいる広場の真上に出る。
『――――――――』
「ごめん、何言ってるか全然分からない」
古代語は学んでないので、レウケーが何を言っているかは私には分からない。
なので、詠唱で返す。
「海神の宝冠を戴き、水神の座を継ぐ我が命じる」
上空に広がった巨大な神聖陣に、私は術式を書き込んでいく。
「理よ屈服し、魔の木々を掌握せよ」
直後、神聖陣がベルの魔術を乗っ取る。
これだけ陣が大きければ、レジストのない魔王の魔術の制御を奪うことは容易だ。
『――――! ――――――――!!』
「この森は私のものだ。お前は消えるがいい!!」
私は叫ぶ。
神聖陣が起動し、神性が海神の傲慢さに近づいたことで、森を一気に私の神聖力で染め上げた。
「よし、アルビオン・スコール!!」
海聖水を空から降らせ、領域を奪われたことで大きく弱体化したレウケーの木々を一網打尽にする。
そして、再生する前に次の術に繋げる。
「海よ荒れ狂え、風よ暴れよ、雷よこの手に集え!! 〈天雷纏槍〉!」
前に見せた〈神之名於終ノ宣刻〉。
時間が終わると同時に神聖力の爆発を引き起こすあれの、一点収束版だ。
私はそれを、レウケーの身体に向けて投擲した。
『――――――――』
「やった!」
雷の槍が、レウケーの全身を引き裂いた。
私は勝利を確信した....けれど、違った。
「えっ!?」
引き裂かれた体が、再生しようと動き出したのだ。
勿論切断面は浄化されていて、再生できないが、どんどん歪になっていくのにも関わらず、レウケーはその大きさを増していく。
『――――――――!!!!』
「嘘....」
樹の化け物が、誕生していた。本来届かない筈の、空まで届いていた。
どうやら、第二ラウンド開始のようだ。
私はセブン・ヘヴンスを構え、巨大になったレウケーへと立ち向かう。
「立ち向かう...って言っても、どうすればいいんだか...」
私は呟く。
レウケーは浄化領域の内部に居ながら、浄化されていない。
つまりは、私と同じように聖と魔の両方の属性を併せ持っている状態ということ。
どうやって倒せと...?
「いや、待てよ...」
悪魔にだって魂はある。
なら...
私は翼と剣を消し、即座に〈魔皇之翼〉に切り替える。
そして、
「〈魔皇之武器創造〉! 魔皇魂奪鎌タナトス!」
魂に直接干渉する武器といえば、これしかない。
私は翼を翻し、大きく飛び上がった。
『――――――――――――!!』
「くっ!」
近づくと同時に、樹の表面から夥しい数の根が生えて、凄まじい成長速度でこっちに向かってきた。
流石に悍ましすぎて、近づけない。
「え? 投げていい? ...分かった」
タナトスに宿る意思が、投げていいと伝えてくる。
とはいえ、勝算も無いのに投げられない。
「大規模戦闘用魔術、ローリングスラッシャー!」
タナトスを放り投げた私は、それに魔術を使って回転を加える。
そして、指向性を持たせてレウケーへとぶん投げた。
タナトスは一気にレウケーの体へと飛んでいき、その身体を真っ二つに両断する。
『――――――――――――――――――――――――!!?』
悲鳴が響き渡る。
どうやら効いているらしい。
私は反対側に回り込んでタナトスを回収し、経過を見守る。
効いては居るけれど...これじゃいつまで経っても...って感じなのかな...
既に斬った部分も再生が始まっている。
もっと大規模にやらないといけない。
それなら...
「二跳増刃! 二跳増刃! 二跳増刃!」
斬撃を飛ばし、それが斬った瞬間に二つの斬撃に分かれて飛ぶ、ゼパルの使う剣術。
それをタナトスで使い、魂斬りの性質を持った斬撃を無数に飛ばした。
レウケーの身体が、どんどんと傷付いていく。
よし、これならいける。
「大規模戦闘用魔術...」
私が詠唱しようとしたその時。
十六方向から緑色の光条が飛び、レウケーを押さえつけた。
これは...ベルの援護かな?
私から制御を奪い返したらしい。
ベルも中々やるよね!
「...ミラーワールド!」
直後、レウケーの周囲に途轍もない数の鏡が出現する。
私はそれに二跳増刃を飛ばす。
増えた斬撃は、鏡に入ると二つになって再び飛ぶ。
タナトスの斬撃が、半永久的に増えていく。
レウケーの魂魄を傷付けながら。
「これで、終わらせる...〈時神の箱庭〉!」
レウケーの身体が崩壊し始めたその時、私は時間を止める。
止めるって言っても、今の私の技量じゃ二秒かそこらだけど、それで十分。
タナトスを持って近づき、崩壊していくレウケーの中にある本体を、斬った。
「じゃあね」
『―――――――――!?』
声にならない悲鳴が響き渡り、レウケーの身体が完全に崩壊する。
森の制御が完全に私のものとなり、昇降機に絡みついていた根も消え去った。
どうやら、勝ったらしい。
「ユカリーー!」
「ベル」
『―――――、――――――――――――――――――?』
「え?」
その時。
居なくなったはずのレウケーの声が響いた。
何を言っているかわからないが、ベルには分かったらしい。
「なんて言ってた?」
「...ルシファー、友よ。我を殺して何になる? だって」
「?」
ルシファーの友?
記憶にないので、私はその言葉を大したものとして認識しなかった。
しかしそれは...いずれ、私の足を掬うものとなるのであった。
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