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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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Ep-718 魔界へのゲート

「......あとどれ位で着く?」

「二時間くらいッス...」


私は召喚した飛竜に乗り、エルドルムの空を飛んでいた。

あんまり高く飛ぶと境界面に接触するっぽいから、飛竜を使う。

私の魔力じゃ、翼を維持しながら長くは飛べない。


「急いで」

「へい!」


私は肩の鳥と、並行して飛ぶバイコーン? の姿を取っている悪魔を順番に見る。


「ねえ、何がどうなってるの?」

『言った通りだぜ! 魔界零層と人間界が繋がっちまったんだ』

「だから、魔界って....」

『俺たち悪魔の最後の楽園だぜ.....俺たちの王様が、結構ヤバイ事やっちまったからよ』

「何をやったの?」


悪魔が魔界に追放されたらしいというのはなんとなく察せるけれど、よほどヤバい事をやらないとそういう事にはならないだろう。

何だかセンシティブな話題のような気がするけれど、聞かないと分からない。


『ありゃ? 知らないんで?』

「知らないよ....」

『でも、あんたは魔神様のお気に入りだろ? 確か、ルシファーとかって』

「だから、転生したけど記憶はないんだって」

『成程なぁ....だとすると、猶更言えねーぜ』

「なんでよ」

『俺たちが説明する事じゃあねぇ』


じゃあ、誰が説明するんだろう?

そう思っていると、前から三個の光球が飛んできた。


「飛竜、止まって」

「ヘイッ!」


飛竜は頑張って止まってくれた。

私は三個の光球を前にして、それが私に用事があるという事が分かっていた。


「何の用?」

『王が』

『王がお呼びです』

『どうか、上へ』

「今はまだ無理。エルドルムの首都で報告をしないと」

『困りました.....』

『戻れば、処罰されます』

「じゃあ、見つからなかったことにしてどこかで遊んでて」

『畏まりました』

『どうか、お早く』


光球はそれだけ言うと下に降りていく。

訳のわからない状況だけど、一つだけ分かる事がある。

『王』とやらが、私を呼んでいる。


「ねえ、バーン、ゴッツ」

『なんだァ?』

『どーした?』

「”王”って一人だけ?」

『ああ、そうだぜ』


一人なら戦闘になってもどうにかなるかな......

ともかく、魔界に行くならいつものメンツと一緒に行きたい。

魔皇之王喚(ルーフェン)〉でハルファスを呼べば、飛行船の残骸の近くにいるみんなと他の人間たちを首都に避難させられる。


「王って、どんなの?」

『実は....』

『俺たちもよく知らねえんだ』

「変なの...」


バーンとゴッツは、多分だけどかなり下位の悪魔っぽいから、知らなくても当然なのかもしれない。

勿論、この二柱だけでも本気になったら、小さな城塞都市くらいなら滅ぼせると思う。

だけど、名前を貰わないと臨界出来ないという話だし、多分正規の方法じゃない手段で....つまり、この場合開いてしまったゲートを通って来たから、本来の姿になれなかった....って事かも。

つまり、今地上にいる悪魔たちは、名前さえ与えられなければ無害。


「あとどれくらい!?」

「三十分くらいですッ!」


眼下を見れば、森が切れて平原と、街の端が見えてきた。


「....ここまでありがとう、あとは自分で行く!」

「お気をつけて!」

「うん! 〈魔皇之滑走翼(プリューム)〉!」


飛竜の背から飛び降りた私は、新しい魔術を展開する。

〈魔皇之翼〉を改良した新しい魔術。

滅茶苦茶早く飛べるけど、改良と言っても既存の術式に推進用の魔法陣を合体しただけのものだ。


「ッッッ!!」


加速で、一瞬だけ風の壁にぶん殴られる。

すぐに体勢を立て直し、街の中心部に向けて突撃する。


「これ、飛行魔術というか特攻魔術だな.....」


飛行魔術の繊細な術式は、私の浅い魔術知識ではそうそう弄れない。

ルシファーがそういうのに特化していたからか、極限まで最適化されている術式は芸術の域に達していて、魔王たちが全員標準で魔皇の魔術を使えるのも納得がいく。


「っ!」


中心部に達した私は、速度を殺しつつ噴水に突っ込んだ。


「いてて.....水神の名を継ぐ我が命じる、水よ我が衣より退け」


私は即座に脱水すると、街の様子を見る。

誰もいない。

人の気配はあるけれど、みんな閉じこもっているらしい。


「空き地を探さないと....」


私はエルドルム首都、エルダリオンを散策して、結局場所がなかったので郊外でハルファスを呼んだ。


「ハルファス、どう?」

「魔力が乱れていますが....位相は何とか合うでしょう.....恐らく、この空のない場所へは飛べないかと」

「行きはいいけど、帰りは駄目って事?」

「そうです」


魔界への入り口が発生しているエルドルムには、物理的な接続での侵入は可能だけれど、魔法を使った侵入は「入る時」だけ安定するみたいだ。

「出るとき」は、ハルファス曰く位相が安定しないとか....


「そういえば、この幾何学模様はどこに向かってるんだろう?」

「魔力の乱れの中央部から、あの光球が湧いて出ているようです」

「だよね.....ゴッツ?」

『どーしたんだ?』

「貴方達は、この乱れの中央部から来たの?」

『いや...俺たちはこの上、境界線の所から来たんだぜ』

「じゃあ、中央部に何かがあるって事だね」


私は顔を上げ、ハルファスに向き直る。


「みんなをここに避難させて。あと、色々頼んで悪いんだけど.....使い魔を王都に行かせて、ゼパルも呼んでほしい」

「分かりました、ユカリ様」


私は私でやる事がある。

まずは、伯爵と話を付けないといけない。

それから、リュート達を伴って魔界に行って、王とやらに会う。

その結果がどうなるかは分からないけれど、やるだけやってみないとしょうがない。


「ゲートが自然消滅するとは思えないし...」


このタイミングで王が呼んでいるらしいなら、恐らく上のゲートは王の干渉によって起きたもの。

異なる世界を繋げる魔術.....もしかしたら、地球に帰る手段になるかもしれない。


「あっ」


そういえば、まだ神様一同に話を聞いていなかった。

私は〈神王召喚大聖陣〉を展開し、みんなを呼んだ。

ハルファスが塔を建てるその横で、月神と水神、最高神を呼んで話をする。


「呼ぶのが遅くはありませんか?」

「だって.....その、色々あったから」


ぷりぷり怒る月神。

水神はクールに振舞ってるけど、こっちを厳しい目で見てくる。


「.......貴様を、他の神らは心配していたぞ」

「ごめんなさい....」


それなら勝手に出て来ればいいのにと思ったけど、もしかして神聖陣から勝手に出てくるのってかなりのルール違反なのかな?

太陽神のノリだから出来たとか?

今は夜だから、太陽神は出てこれないしね。


「ねえ、最高神。......魔界に行くべきだと思う?」

「我々の神界と同じで、一度入れば戻ってこれなくなる可能性があるが.....どうするのだ?」

「え、神界って戻ってこれないの?」

「神界は個人の持つ余剰次元に近いのだよ、それ故に、それに封じ込まれ出てこれない神もいるのだ」

「ふうん....」


そういうのとは出来る限り関わり合いになりたくないなぁ....

思いつつ、私は完成した塔から出てくる人々を見た。


「じゃあ、私は伯爵に会ってくる。非常事態だけど....多分応じてくれると思うし」


避難民の受け入れと、王城への連絡。

足跡を残しておかないと行方不明にされちゃうしね。

私はとりあえずその場を離れ、街の中心部に向けて歩き出した。


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