Ep-73 登城と謁見
著者は御前でのルールや貴族社会の掟などなど、貴族のシステムに詳しくないので、
違和感を感じたら感想にお願いします。
土曜日。ユカリが王城へ行くことになった。
俺とクレルは同行する権利が存在するので、安全のため同行する。
王城なんぞ行ったら変態貴族共に何をされるか分からないからな...
何もされなくとも、目を付けられたら学院を卒業した後が面倒臭い。
ここはどちらかの正妻という体にしてしまっても........いや、ユカリなら
「あなたにはユイナがいるでしょ?」くらいは言うな。
俺も美男子という自信は無いが、とにかく恋愛に興味のない女だからな...
しかし....これはちょっと...
「どうしたの?アレックス」
「いや.............なんでもない...........」
そう、ユカリの正装が余りにも可憐だったのだ、いや...美しいの領域に入る。
最近伸びていて後ろでまとめられていた髪はしっかりと整えられて、前髪もしっかり後ろに押さえつけられている。服装も普段の実用性重視で女性が着るようなものでは無いとも思えるドレスアーマーとは違うクレルがどこからか買ってきたドレスで、ユカリの美しさをより際立たせていた。....こいつ、あんまり女らしいことしないから今まで忘れてたけれど、結構魅力的なんだな...
-
と思っていると、腕をつままれた。
振り向くと、ユイナが笑っていた。
「アレックス..........」
「...すまん」
そうだった、俺にはユイナがいる。
いくら最近まで家督を継げない立場だったとしても、
エストニアの男子たるもの不義理では駄目だ。
ユイナと婚約するまでは...
「行くよ、クレル、アレックス」
「おうよ、お姫様」
「クレル、シュナに」
「わー、すまん!それだけは!」
いや、クレルもあんなんだしユイナがいない所でなら...
などと俺は邪念を抱くのであった。
◇◆◇
レンタル馬車で王城までの道を行く。
運転手は俺だ。
クレルは乗馬は出来るが運転は出来ないからな。典型的な放蕩息子だったからこそ...
いや、貴族なのに馬の運転ができる俺も俺か。
本来なら従者にやらせるべきなんだろうけど、クレルは地方貴族の三男、俺はスキルが全く使えないせいで最近までは長男として家督を継ぐことは出来なかった、ユカリはそもそも従者を断ったらしいので、仕方なく俺が運転している。
何を言われるか分かったもんじゃないが、まあこれぐらいの泥なら被ろう...
馬車は街中を進み、貴族街へと入る。
ボロ馬車なので、散々注目を浴びるが...
俺は何も見なかったことにして馬車を走らせた。
途中、
「あれ?アレックスじゃないか...なんで馬車なんか運転してるんだ?」
「アレックスさん、そのようなことは貴族のすることでは...」
等と知り合いが集まってきて不満を述べるが...
別にいいだろ!俺だって馬車の運転くらいしたいんだっ!
….俺は何を思ってるんだ?
後ろから声が聞こえてくる。
「クレル、あなたは貴族街に知り合いとかいないの?」
「俺は田舎貴族の三男だが...まあ、居ないこともないな、確か————」
人がじろじろ見られて苦労してる時に暢気な奴らだなーと思いつつ、少し速度を上げた。
貴族街を抜け、王城へと近づく。
俺の実家があるのはこの辺だ。
この辺に住めるのは大貴族ばかりで、俺も本来ならここで貴族の修業を.......
いや、過去のことはどうでもいい。
今は未来のことを考えよう...
◇◆◇
王城に着くと、門の前に人が集まっていた。
見れば、あのイケメン騎士が部下の騎士たちに囲まれていた。
多分、俺たちを待つために外に出て、それを騎士に咎められてる最中なんだろうな...
「ジョセフ様、困ります...」
「迷惑を掛けてすまない。だがお前たちが万一ユカリ嬢一行に問題を起こせば父上の顔に泥を塗ることになる。...だから父上は私を騎士に任じたのだ、分かるな?」
「はい...」
本当に、俺のどこに価値があるんだろうか...
アレックスとクレルも困惑顔だ。
確かアスキーの話では、俺はあの魔導飛行船襲撃イベで戦ったのがバレて王城に呼ばれたんだよな。けれど、それにしちゃ少々待遇が良すぎないか?
待てよ...そもそも、俺がこの世界に転生した理由が分からないんだよな。
この間の幻獣マルコシアスのように、この世界を滅ぼそうとする存在を倒すために来たのかもしれない...と考えると、その敵の罠という可能性もある訳だ。
ふむ...警戒だけはしておくか。
俺たちはイケメン騎士ジョセフの案内で馬車から降りて王城を歩く。
ゲーム時代に散々探索したおかげで、全く迷わない。
どこがどこか直ぐにわかるな。...あっ、あのタペストリーの裏には隠し部屋の入り口があるな。...確か普段は塞がっていて、左右の右手と左手をそれぞれ左右対称になるように掲げている像の首を掲げていた手と反対方向に回すと入口が開くんだっけか。
「ユカリ、王城が珍しいのか?」
「いや、ちょっとね」
おっと、あんまりきょろきょろすると怪しまれるな。
俺は周囲を見渡すのを止めて前を向いて歩く。
途中、騎士や侍女とすれ違うが、全員がしっかりと地に伏す。
俺とクレルとアレックスのお貴族様パワーもあるんだろうが、
何より大きいのはジョセフさんだろうな...
「着きましたよ」
しばらく歩くと、ゲーム時代の記憶通り謁見の間の前の.............天地の扉前に来た。
天上たる人々、王族が住むエリアと、地にて生きる俺たちのような貴族以下の人間を隔てるという門だ。...ジョセフを見てると天上人と言ってもそこまでじゃ無さそうだけどな。
門の横の壁から、ゴゴゴゴゴゴゴと轟音が鳴り響き、門が少しずつ開いていく。
観音開きの門で、左右の魔法装置...専用の鍵がないと動かない装置を動かして門を開けるのだ。セキュリティはばっちりだな。
門が完全に開く瞬間、ジョセフが小声で言った。
「ユカリさん、お気を付けて。殿下以下兄弟は、何故か貴女にご執心です。私はそういったことに興味がないので傍で見ていただけですが...何をしてくるか全くわかりません。...いやな時はきっぱりと断ってください。いざという時にわた...僕が盾となりましょう」
「分かった」
「ジョセフ様、不敬を承知で言いますが...盾となるのはこのアレックスです。」
「待て、盾になるのはこの俺だ。お前には盾になるべき人物が他にもいるだろう」
「そう言うクレルも盾になるべき人物は他にいるでしょ?」
「ギクッ!」
「今はそういうの気にしなくていいから、危なかったら3人で守ってね?」
「ああ」
「勿論」
「約束は守ろう」
まあ、大抵のことが無ければ守ってもらう必要なんてほぼないんだけど...
権力に関してはいくら貴族の長女だったとしても何も持ってないので、アレックスとクレルに守ってもらおうかな。特にアレックスは最近何故かスキルが使えるようになって、長男として返り咲いたからね。本当は学院から出て教育を受けなければいけないんだけど、
「平民との交流でしか、学べないこともあるのです。父上」
とかいうイケメン台詞を言って父親を納得させたらしい。
もっともそれくらいで納得するはずがないので、きっとアレックスの父親にも何か思うところがあるのだろう。
クレルは....三男だから長男ほど権力は無さそう。でも、口ぶりからするに複数の貴族家を味方につけてるっぽいな。...よくやる。
「ユカリ、跪け」
「いきなりどうしたのっ!?」
アレックスが小声で跪けと言ってきたので、何のことかと思っていたら俺の頭を無理矢理押してきた。仕方なく膝をつく女性用のポーズをとる。
これ結構つらいかと思いきや、そうでもなかった。
この数か月で一気に筋肉がついて体が柔らかくなったおかげかな。
そして王様と王子様とお姫様がとうじょ....
「おおっ!やはり似顔絵の通りの美女ではないか!」
「やりましたねお兄様!お妃ゲットですよ!」
「..........」
王子様は俺の顔を見るなり大声で騒ぎ出し、お姫様がそれに便乗する。
そして何故か国王はそれを咎めずじっと見つめている。
..........やっぱこの国ダメかもしれない。
一抹の不安をどうしても抑えられず、謁見はスタートするのだった。
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