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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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Ep-702 パーティー再び

「えっ、パーティーを?」


私は咄嗟にそう言ってしまう。

なんでかと言うと、お父さんが提案してきたからだ。

この間酷い目に遭ったばかりなのに...とは思ったけど、お父さんもそれは理解しているみたいで、


「そうだ。それは分かっているが...お前主催であれば、話は別だろう」

「つまり...?」

「お前主催でパーティーを開き、上級貴族たちの結束を高める。その上で、ユカリ。お前が変な虫が付かないように気をつける事だ、今後のための練習にもなる」


更に話を聞くと、私をパーティーに招待したい貴族はたくさんいるが、例の事件で魔物の軍勢がフォールナウトに攻め込んだ事件を聞いてからはそれを恐れて自粛しているそうだ。

そこで、私がホストとなってパーティーを開くことで、自分が当事者にならずにパーティーに参席出来る.....という事らしい。


「あとは、お父さんがお前のパーティー衣装を見たい」

「.....分かったよ」


滅多にできないし、親孝行と思ってやろう。

でも、あの衣装はもう使えない、ドレスの使いまわしは上級貴族のマナー上厳禁だ。


「お父さん、冒険者として活動したいんだけど、大丈夫だよね?」

「? ああ.....いいが、何をするんだ?」

「ちょっと、お小遣い稼ぎをね」


ドレス代とか、オシャレの代金は、親を頼りたくない。

だから、高報酬の討伐依頼を攻略してお金を稼ぐ。


「.....無理はするなよ」

「大丈夫!」


今の私が無理をする事態は、それこそフォーランドが滅ぶくらいの規模の敵を相手にしないといけない。

その規模の敵に賞金を付けるとなると、ギルドが倒産するだろう。


「お父さんに心配はかけさせないから」

「......ああ」


そして、もう一つ。

幻獣はまた来るだろう。

その時はお父さんには戦わせない。


「じゃあ、行ってきます」


私は父に別れを告げ、扉を開けて外に出る。


「お」

「ジェラルディン、行くよ」

「ど、どこにだよ!」


どこって、決まってんじゃん。


「冒険者ギルド。依頼を探しに行くよ」

「山はいつ行くんだよ!」

「また今度!」


明日、また明日と延長される登山の予定。

だけど、私は忙しいので仕方ない。


「大体、なんで俺が!」

「重たいジェラルディンを運んだシロは疲労困憊、コルは居ないし」

「俺だってお前の為に頑張って疲れてるんだが!」

「そんなに疲れてる?」

「ああ!」


なら仕方ないか....

とは、ならない。


「水神の継承者たる我が命じる。理よ屈服し、彼の者の肉体に光と希望を齎したまえ」

「おお!? なんか疲れが飛んだぞ!?」


これくらいなら信仰力も使わない。

高位の聖女が無意識にやれる回復行為だけど、こうして詠唱付きで発動すると効果が増大する。

まあ、神酒ネクタルくらいの効果にはなるかな。


「さあ、行こう!」

「助けてくれ」


ダメ。

私はジェラルディンを引きずって、屋敷の外へと出る。

しかし、途中でジェラルディンが思い出したように屋敷に戻った。

何なのだろうと思っていたら、剣を持って戻ってきた。

それも、普段使いの剣を。


「ナメてる?」

「い、いやだって...魔物討伐だろ?」

「雑魚狩りはしないけど」

「え?」


雑魚狩りは土着の冒険者たちの仕事だ。

彼らの仕事を奪うつもりはない。

私が狙うのは...


「ギルドには、高ランク冒険者向けの依頼があるから」

「マジかよ...」


私たちのクランは解散していて、今は一人でやっているけれど。

ギルドマスターからは一騎当千のクランとして認められているためBランクは剥奪されていない。

それなら、B向けの大型依頼を受けられるはずだ。


「ほら、行くよ!」

「勘弁してくれーっ!」


ジェラルディンを今度こそ引きずって、私はギルドへ向かうのだった。







「マジでこの中に入るのかよ?」

「行くよ」


数時間後、私達は沼地の前に立っていた。

ただの沼地では無い、毒沼である。

刺激臭が鼻を突き、猛毒の霧が立ち込めている。

しかし、


「ジェラルディンにも加護を渡してる。だから毒程度で死なないって」

「そうは言うけどよ!」


毒気祓いをジェラルディンに掛けているので、毒に対しては強くなっている。

勿論蓄積する分はどうしようもないけれど、聖水を飲めば健康な状態に戻すことができる。

最悪〈魔皇之再誕〉で肉体を作り変えればいい。


「今回の依頼は覚えてる?」

「こ、ここのボスを倒すんだよな?」

「そう」


この沼地…ロタック草原という名前の場所を、下等(レッサーヴェノム)毒竜(・ワイバーン)という魔物が支配している。

そのせいで交易路が途絶え、困っているものの…攻略要件が高く、尚且つ毒沼は対策が厳しくそれに見合うリターンが少ない。

なので、依頼額を引き上げて募っていたようだ。


「ジェラルディン、ゼパルにもらった方の魔剣を使って、じゃないと溶けるよ」

「わ、分かった」


ジェラルディンの使う二本の魔剣のうち、片方は人間製の魔剣である。

つまりは、普通に溶ける素材で出来ている。


「それにしても、臭いは何とかならねえのかよ?」

「やってもいいけど、お金を取るよ?」

「構わねえよ」


仕方がないので、一時間500オルクで引き受けてやった。

結界を張り、内部の空気を浄化する。

そのまま歩き続ければいい。


「ただ、戦う時は臭うよ」

「それもしょうがねえ」


遠距離から撃てばいいけど、ジェラルディンは遠距離攻撃手段を持たないし、何より彼のためにならない。

経験値は入るだろうけど、スキルは最初から得られるものが決まっているわけじゃなくて、彼の意思と才能が影響してくるようだから。


「おっと残念、掛けたばっかなのにね」

「ああ」


その時。

沼地から巨影が飛び出した。

それは、巨大な蛙。

グレーターヴェノムフロッグだ。


「あ、ジェラルディンは出なくていいよ」

「ん?」

「どうせ物理攻撃効かないし」


カエル系の特徴だ。

私は即座に魔法陣を描く。


「〈轟雷砲(サンダーキャノン)〉」

「グエエエエッ?!」


雷の砲撃を浴び、毒カエルは即座に絶命した。

経験値が入ってくるが、レベル制限で弾かれる。


「終わったよ」

「あ、ああ…すげえな」


湯気を漂わせるカエルの死骸を、私は素手で触れてインベントリに放り込む。

死骸になった時点でインベントリに入るからね。


「行こう」

「ああ」


また私たちは沼地を進む。

それにしても、環境まで変えてしまうのだから竜種の持つ魔力は凄い。

ホロリンとかは本物の竜種だから、その気になれば低気圧を作り出せてしまうだろう。


「私にも出来るのかな」


竜種ではないけれど、魔力汚染くらいなら出来そうなものだ。

聖域を作り出すことも出来るのだから、魔王の魔力を使えば…って、作ってどうする?

住むわけでもないのに要らないか。魔物が湧くし。


「どうした?」

「何でもないよ」


私はジェラルディンの懐疑の視線をかわしつつ、そう答えたのだった。


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