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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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Ep-701 魔物たちの神

私は、ダンジョンを訪れていた。

何でかというと、裏切った三体について話を聞くためだ。

彼らの位置、既存の情報とどう変化したのかを。

彼等と幻獣が組んでいるのはほぼ確定だから、彼らがいる場所がそのまま幻獣の次の陰謀の地となる。


「ホロリン、ワイズマン、デッドアクシズのうち、行方が分かっているのはホロリンとデッドアクシズだけですね」

「ワイズマンはいないのね....」


ワイズマンはかなり凶悪なアンデッド系魔術を扱う。

放置すると、デッドアクシズと組んでとんでもない事になる可能性もある。


「ホロリンについては、ユカリ様と会敵後、移動中のスキーズブラズニルが東方面に飛んでいくのを目撃しています」

「デッドアクシズはハオン地方で魔力が一瞬観測されています。武林と呼ばれる地域で、特殊な霧のせいで魔力探知が効きません」

「次はそっちかな」


だとすると、周遊はここで一度終わりにするべきだろうか。

一度王都に帰って、そこを経由してハオンに行くべきか。


「ところで、私の特製聖水はどう?」

「はい、全く問題ありません。性質を反転させたのですか?」

「ちょっと違うんだけど....まあ、結晶が機能してるならいいよ」


私とアビスは、魔聖水についての話をする。

聖水は魔物に対してダメージを与えるけれど、私はその性質に手を出すことを決意した。

魔王の魔力を聖水の持つ特殊な波長に同調させて、無理やり馴染ませたものだ。

結晶から湧き出るようにはしているけれど、神聖水に比べて効果は悪い。


「このままなら、もしかすると魔物でも聖技が使えるようになるかも?」

「悪夢のようですね」


魔聖水を媒介にして、神聖陣を行使できれば使えるようになるはずだ。


「そういえば、私が神になったことはダンジョンの魔物も知らないんだったね」

「ええ」


無駄な反感を買いたくないからだ。

ダンジョンマスターが聖女なくらいは許せると思うけど、神になったなんて言ったら....

きっと恐れられるだろう。

恐れるあまり、従うしかなくなる。

それは歪だから駄目だ。


「ただ、オーディンの部下たちには公開しようと思うんだ」

「何故ですか?」

「”信仰”だよ」


神たちが使う絶大な力。

神の格を司り、神の力そのものになる信仰。

つまるところ、敬愛も忠誠も信仰だろうから。


「彼等から信仰力を得られるのなら、慎重に情報を公開していく。」

「ユカリ様を信仰しないなど有り得ません」

「だから、それが一番嫌なの!」


信仰を強要するとか、それもう邪神の類じゃん。

.....いや、魔物を統べる時点で、何も知らない側からしたら邪神みたいなものか。


「前々から言っていますが、ユカリ様は魂の本質から流れ出る力が凄まじいのです。魔物の中には、その力を進化の際に垣間見て、ユカリ様を信奉する魔物も多いのです」

「魂の力....ねぇ」


膨大なスキルのどれかから、魔物たちにパワーが流れ出ているようだ。

実益があって、神秘的な力を目の当たりにすればそうなるのも当然なのかな?


「よし、第六層に行くよ」

「はい」


彼らに会うため、私は第六層へと向かうのだった。







「グランドマスター様、万歳!」

「我らにご加護を!!」


そして、一時間後。

私は彼等と話していた。

ホブゴブリンとハイオークは、私に感謝を述べ、信仰は当然のものだと語った。

でも私はそれを受け入れる気にはならなかったので、加護を与えて等価交換とした。


「ちょっと負担はあるけど...でも、みんなの想いが伝わってくるような気がする」


神に向けられる想い。

きっとこれが、太陽神が以前に言っていた「想念」なのだろう。


『継承者、お分かりですか?』

「うん」

『人の想いを汲み上げ、それらを選別し叶える。それが、神という存在なのです』

「じゃあ、それはいつも聞こえるの?」

『いいえ。祠をどこかに設置すれば、想いはそこに集い霧散します。しかし、祠を建てないうちは、受け取った信仰に想念が付いてくると思います』


祠ねぇ...

アビスに建てるように言ってもいいけど。

とりあえず私は、第十層へと戻る。

頭の中で声が響いて、耐えられそうにないからだ。


「〈万物創築(デミウルゲイン)〉」


急いで記憶にある祠を作り、地面に突き刺す。

そして、中に水神と海神の力を込めた水晶を置いた。


「水神を継ぎ、海神の宝冠を頂くこの我が命じる。理よ屈服し、我に集う想いの一部を今一度変流させ、この祠へと移せ」


これで、想いだけが振り分けられてこの祠に戻ってくる。

後でゆっくり見れるはずだ。


『では、私が仕上げをいたします』

「お願い」

『水神であった者として、継承者の名を借り命ず。理よ屈服し、ここを新たな水神の祠として在らしめよ』


すると、祠が薄く青い光に包まれた。

それだけではなく、私が展開しているあらゆる魔術的感知能力が、この祠に対して作用しなくなる。


「これは...?」

『この場所を水神、海神の聖地へと変えました。勿論、水神の神殿にも聖域は残っていますが、この祠の周囲だけは別格です』


なんでも、力の本体がここに移動したらしい。

本体は破壊できるようなものではないため、危険などはないのだが、水神が私を気遣ってくれたようだ。


「すごく清浄な力を感じる、ここに死体を投げ込んだら生き返りそうなくらい」

『我々でも死者の蘇生は出来ません、しかし...傷ついた魂魄を癒す効果であれば、この聖地には微弱ながらあります』

「今度からここで寝泊まりしようかな...」


私は思案する。

正直、四氣相剋は魂への負担もすごい。

ここで寝泊まりすれば、その負担で負った魂の傷も少しは癒えるだろうか?

まあ、ともかく。


「上手く行ったから、今後は私がここのみんなを守れる」

『水とは常に変じるものです、気になり、水になり、氷となります。直ぐに表情を変える海そのものを司るあなたであれば、魔物の神になったとしてもそれは異端ではありません、新しい可能性なのですよ、継承者』


水神はそう言い切る。

でも、私もそう思う。

神が人間の味方をするばかりではなく、少しは人間の敵に味方してもいいと思う。

勿論、この場合は人間の味方の魔物に、だけれど。

私は魔物たちの神になる。

そうあっていいと思うから、私はそうするだけだ。


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