Ep-683 お買い物
さて。
ガチのマジのパーティーに参加することになったので、私はリュート達を率いて街へと繰り出した。
「お買い物だね」
「俺たちも、だな....」
私は色々買うものがあるけど、リュートたちは最後の用事.....つまり洋服の注文だけである。
馬車は街の中央部へと入っていく。
「最初はどこへ行くんだ?」
「んー? アクセサリー店だね」
なんだかんだ言って、結構重要なアクセサリー。
色々貰ってはいるけれど、今回のパーティーのテーマは統一性。
ゴテゴテ着飾るより、一つの色で綺麗に統一する方針だ。
「アクセサリーというと、指輪とか、ピアスとかか?」
「まあ、そんな感じだね」
私はいまいち思いつかない自分のテーマを相談する。
「ねえ、何の色で統一しようかな?」
「そうだな......ユカリは黒髪だからな、白が映えるんじゃないか?」
「うーん....それは思ったんだけど、結婚式みたいになりそうで嫌なんだよね」
「じゃあ、黒とかでいいんじゃね?」
ジェラルディンが何の気なしに言ってくるが、それは最大の無礼だ。
「ジェラルディン、黒は喪服だよ?」
「あっ! 悪りぃ!」
黒で統一するのも、白で統一するのも問題がある。
だけど、明るい色と私は相性が悪かった。
「四氣相克状態なら、明るい色で統一できるんだけどね....」
髪も瞳も真っ白になるから、青とか緑とかでも良くなる。
『おい、ユカリ。四氣相克状態だと、普通の服は耐えられないんだぜ?』
「えっ、そうなの?」
馬車の天井に神聖陣が開き、そこから太陽神が顔を出して言った。
じゃあ、服が弾け飛ばないのは何でだろう....?
「じゃあ、何で.....?」
『察しが悪いな、俺たち神がお前の服や装飾品にも加護を分けてるんだ、だから殆ど壊れないんだぜ』
「成程ね....」
『今は継承者自身が神ですから、溢れる力に服が耐えられるようにするくらいは簡単に出来る筈ですよ、継承者』
水神まで出てくる。
「それなら髪も守ってほしかったんだけどな.....」
『悪いな、肉体やそれに類するものに加護をかけると、思わぬ異常が出るんだ』
「成程ね....」
そうこうしているうちに、馬車が止まる。
「お、着いたね」
「........バーランド宝石店...紹介はあるのか?」
「ばっちり」
バーランド宝石店は、バーランド商会の傘下だ。
バーランド商会のスポンサーはロイヤルブレーン家なので、本人に無理やり押し付けられたアスキーの手形があれば入れる。
「あ、そうだ、ユカリ」
「何?」
「...紫とか、どうだろう?」
リュートは絞り出すように言った。
けど、それってとってもいいアイデアだ。
紫なら、黒と同化するけど同じ色ではない。
「いらっしゃいませ、紹介状はお持ちですか?」
「こういうものは持っているけれど、代わりになるかな?」
私はアスキーのロイヤルブレーン家の手形を見せる。
それを見た店員は目を丸くした。
どこから援助を受けているか、ちゃんと末端が把握しているのだ。
「大変失礼致しました、王妃様でいらっしゃいますね?」
「ええ」
「奥へどうぞ」
流石に宝石を取り扱うだけあって、セキュリティは堅い。
地下に降りていくと、宝石が展示のように並べられたスペースが存在していた。
「どんなアクセサリーをお探しですか? ここは比較的多い種類の宝石を置いてますから、王妃様の御慧眼に沿える品があると思います!」
「じゃあ、アメジストとかはあるかな? ピアス、髪飾り、指輪、ネックレスで揃えたいんだけれど」
「お任せください! その条件でお探しいたします!」
奥へと消えていく店員を、私は静かに見守るのであった。
その後。
私はアメジスト製のイヤリング、髪飾り、指輪、ネックレスを受け取った。
お金を払おうとしたのだが、
「ロイヤルブレーン家に請求させていただきます、王妃様の私財を使わせるわけにはいきません――――私たちにもプライドがございます!」
と言われた。
アスキー、下にどういう教育してるんだろう?
「まあ、次だよね、次」
私は御者台のコルに、街の奥まった場所にある建物までの移動を命ずる。
「次はどこ行くんだー?」
「香水店かな。匂いを扱う店だから、街の外れにあるんだよ」
おまけに風下。
前世だとこういう店は街の中心部にある事が多いけど、ここは繁華街じゃないからね.....
「ユカリって、香水とかつけてるの見たことないよな」
「ああ」
「失礼な」
私は呟くが、実際そうなのだ。
私の「匂い」は、石鹸の香りのみであって、基本的にそれ以外の匂いはしない。
昔から、香水を振りかける文化というものを知らないので仕方ないのだが。
「まあ、必要性を感じないからね。お風呂だって入るし、体臭があるわけでもないから」
「確かにな.......トーホウの血か、これも」
あまり描写してこなかったけれど、カーラマイア王国の人々は結構体臭が強い方だ。
元となったのがヨーロッパ系の人種だからなのかは分からないけど、お風呂に入る、入らないに関わらず特有のにおいというものは持ち合わせている。
「さ、着いたよ」
「おお....中々いい雰囲気だな!」
ジェラルディンが言った通り、街の端にあるという印象を覆すほどに、店は立派だった。
店先に並べられた瓶の中には、透明な液体が入っている。
蓋は固く閉じられているが、その気になれば開けて匂いを嗅ぐ事も出来るのだろう。
「おや、いらっしゃい。黒髪.....王妃様ですね?」
「うーん、まあ間違ってはいないけど、黒髪だけで....?」
「今年の流行から聞きたいのだが、いいか?」
私を無視して、リュートが前に出る。
店主は何だこいつ、という顔をしたが、同じく仕立てのいい格好をしたリュートを貴族と認めたのか、にこやかに対応する。
「はい、今年の男性の....特に、お客様のようなお若い方であれば、爽やかな香りが好まれていますね――――こちらなど、如何ですか?」
「......俺は構わないが、ジェラルド?」
「.....ああ、構わない」
いつになくジェラルディンが真面目だ。
二人が決めあぐねている間に、私も店主に尋ねる。
「今の流行は、派手なものより花弁の下に隠された芳しい香り――――つまりは、控えめなものが主流ですね、こちら等です。エメルドローズを使用したもので....」
私はそれを嗅ぐ。
確かに、最初は大したことのない香りのように感じるものの、一度意識した瞬間鮮烈なものとなる。
「幾ら? 買うよ」
「20万オルクですね」
「分かった」
白金貨で払えるので、私は快くそれを受け取った。
リュート達も、しばし悩んだ末にお勧めされたそれを購入していた。
さあ、後は服だけだ――――
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