Ep-682 波乱の予感?
スケジュール維持のため、本日の更新は終了です。
ご了承ください。
それから数日後。
そろそろエルドルムに渡ろうかと考えていた私の元に、お父さんがやってきた。
「お父さん、何の用?」
「用がないと来てはいけないか? ...まあいい、今日は、お前にあまりよくない話を持ってきた」
「?」
疑問符を浮かべる私に、お父さんは言った。
「数日前に、下級貴族が集まるパーティーの話をしただろう?」
「あー...あれの事?」
「それに中流貴族の一人が参加することになってな、その貴族のたっての願いで、俺と...ユカリを参加させて欲しいとの事だ」
断ってもいいけど...
お父さんがわざとそういう言い方をするって事は、断れない事情があるっぽい?
「古くからいる下級貴族たちは元々は他領の貴族だったから、それは問題ないとして...お前の参加を請願してきた貴族とは、ビフォア子爵家なのだよ」
「!」
イグアス・ビフォア。
その名前が、古い記憶の中から鮮烈に浮かび上がってきた。
それはとても幼い頃の記憶...
「イグアスお兄ちゃんが...」
「そうだ、無碍にはできない」
幼い頃、よくアリウム(今で言うフォーリオルム)に訪れた私と遊んでくれた貴族だ。
現在はフォーランド南部の都市に居を移しているらしくて、会う事はなかったが...
「(そういえば、結婚の約束とか...したかも...)」
幼い頃の約束。
私にとってはそれだけのことだけど、彼にとってはそうではないのかもしれなかった。
所謂、BSSというやつだ。
「行く」
「いいのか?」
「ケジメは付けないと」
ここはビシッと決めてやらなきゃいけない。
私はジルのことが大好きだから、お兄ちゃんはもし私にまだ気があるなら、モテモテなんだろうし新しい娘を探しなさいって。
そうじゃないと、いずれ下級貴族を率いて勝てるわけもないのに反乱とか起こしかねない。
もちろん、そんな浅慮な人ではないとは思うから、最悪の場合というわけだが。
「だったら、準備をしなさい」
「そうだね...頑張る」
「エカテリーナがこういうことには詳しいはずだから、話を聞いてみなさい」
「ありがとう、お父さん」
「ああ」
お父さんは頷いた。
同時に、少しの心配も混じった目線を向けてくる。
「大丈夫。だって、王宮でパーティーに何度も出たから」
「そういう事か。なら安心だな」
王宮で通用する礼儀作法なら大丈夫だと信じてくれたようだ。
「お父さん、そんなに心配?」
「当たり前だろう。俺だって、完璧な礼儀作法を身につけられたわけではないからな」
今でもトーホウの礼儀に引っ張られることがあるらしい。
そういえば、お父さんのトーホウの話をまだ聞いてなかったな...
「お父さん、トーホウの話してよ」
「どこまで話した?」
「忍者の里の所! それが終わった後、何があったの?」
私はその先に興味がある。
いよいよ秋月領に...という所だったはず。
「ああ、話してやろう。俺たちは峠を越える所だったんだが、そこで不思議な世界に迷い込んでな...」
お父さんの話に、私は耳を傾けた。
話を聞き終わった頃には、お昼になっていた。
私は食堂で昼食を摂り、すぐにお母さんの元へ向かう。
お母さんは手慰みに編み物をしている最中で、扉を開けて入ってきた私を見て手を止めた。
「お母さん」
「何かしら、ユカリ?」
私はパーティーに参加する旨をお母さんに伝える。
するとお母さんは、席から立ち上がった。
「それなら、まずはお洋服から選ばないとダメね。お化粧やおめかしはそのあと考えればいいわ」
お母さんはそう言うと、傍に置いてあったポーチから一枚の紙を取り出した。
それには、「ペリエール洋服店 紹介状」と書いてあった。
「元々はエルドルムにあった店なのだけど、フォールオースに移転してきたのよ。店主はコーディネーターだから、貴女の服装をある程度見繕ってくれるはずよ」
「ありがとう、お母さん」
「..........いいのよ、生きてくれているだけで、私には」
お母さんはそう言った。
私はそれに頷き、退室しようとして――――
「待ちなさい、ユカリ」
「......何?」
「髪を切ったのね?」
「うん、燃えちゃって......」
次の瞬間。
お母さんは私を抱きしめた。
「無理は駄目よ。ユカリが強いのは、風の噂で聞いたけれど.......貴女を失いたくないと思っている人は、私たちだけではないのよ?」
「......うん」
私は頷く。
恐らく、この先守る事の出来ない約束だと知りつつ。
「それから」
「?」
「不貞は駄目よ? いくら幼馴染と言っても、イグアスはもう立派な大人なんだから、一緒になろうと想わないでね?」
「あ、それは大丈夫! 私も振るつもりで参加するから」
「あらあら、流石ユカリね。王宮で強かさを学んだのね」
お母さんは口に手を当てて笑った。
心配をかけてごめん。
でも、幻獣と戦争相手を黙らせない限り、私は無茶するしかない。
「パーティーが開かれるらしいな」
廊下に出た私は、リュートに話しかけられた。
ジェラルディンも一緒だ。
「盗み聞きとは感心しないなぁ」
「俺も参加させてほしい」
「俺も!」
別にいいけど.......
位が高すぎるんじゃあ....?
「パワーバランスが崩れない?」
「王妃が参加してるのに、今更だろ」
「賭け事で無双しないでよ?」
「当たり前だ、俺だって負けることはある」
「ジェラルディン、チェスター子爵家の格式に傷は付けないよね?」
「勿論だぜ!」
今回のパーティーは割と遊びではない。
ジェラルディンのいつもの態度で来られると、私にまで迷惑が掛かる。
「それならいいんだけど」
「やったぜ!!」
ジェラルディンが大喜びしている。
ちょろい奴。
私は踵を返し、自分の寝室へと戻るのであった。
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