Ep-72 イケメン騎士登場
あのバカ騎士が来た翌日。
今日は俺は仕事は無いが、学院で寛ぐことにした。
レベルも100を越えると、王都周辺じゃ経験値効率が悪すぎるからな。
というわけで...
「テラスでパーティーでもするぞー!」
「悪い、俺はアラドと依頼だ」
「俺は発注してた防具が完成したから取りに行ってくる」
「兼デートですわ!」
「我はベルと買い物に行く!魔王等に負けていられるか!」
「私は特に用事ないけど...ユカリ、メリアを含めるとして3人でパーティーしても...楽しいかな?」
「.................................」
俺は沈黙した。
確かに今日は日曜日、皆予定が入っていた。
しょうがないので、俺も1人で城下町へ遊びに行くことにした。
◇◆◇
そして、昼時。
城下町を探索してウィンドーショッピングを楽しみ、珍しそうな武器や土産になりそうなものを購入した。他にも、呪物屋などという店があったので、そこで危険性の失われた呪王の首飾りと言う道具を購入した。....まんまチョーカーだなこれ...。
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そんなこんなで城下町探索を楽しんだ俺は、大胆な手段にて美味しい飯屋を探そうと決めた。
「エッジ、分隊を率いてこの辺の店の味を調査してくれ。一般的な基準で一番おいしいと感じる店をリストアップして渡してくれ」
「はあ....それはいいのですけれど、本体様。くだらないことに分身を使うのはどうなのですか?」
「じゃあ一軒一軒回るの...?腹が先に一杯になるよ」
「................各分隊、出撃!」
エッジもかなり人間臭くなったな。
「並列意思」は分身が並列で意思を持つことができるスキルだが、その精神は最初から成長済みというわけではないようだ。
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エッジも最初は機械的な口調だったが、最近までは事務的な口調、今はそれに多少の気怠さが混じる口調となっていた。偉い人の命令に従うのダリーわーでも従わなきゃいけないからやりまーす的な感じだな。
分身は5つの部隊に分かれ、一斉に店を調査する。
金ならある!じゃんじゃん食ってこい!.........いつかインベントリ内の素材も換金するか。
「あー、腹減ったな」
「姐御、あっしの昼飯でも食いますかい?」
俺が腹減ったなと口にした瞬間、俺が腰かけていたベンチの傍に生えていた樹、そこからイアンが降りてくる。
「イアン、仕事は?」
「勿論サボりでさあ」
「団長に言いつけるぞ」
「...わかりましたよぅ」
イアンはそう言うと消えた。
気配をこんなに簡単に消せるとは、イアンは結構すごい奴なのかもな...
そう考えていると、分身から情報が飛んで来る。
『この店はいいね、雰囲気が好きだよ。でもボクはあんまり美味しいとは感じないかな』
『少し濃いめですわね...でも、このスープかなりイケますわ』
『本体様、このステーキはとても食べやすく、それでいて値段も張りません』
『アタシはここの揚げ物が好きだな。何の肉かは聞かねえと分かんねえけど、ガッツリ行けて大満足だぜ』
分身の意思は、今まで俺が演じたキャラや前世で好きだったキャラに依存するようだ。
最初の奴は元々のウェポンマスター由来だろう。最後のは解放団のときの姐御キャラ由来だな。最近はもうバレてて、ハンスに「無理に言葉遣いを変えずとも、姐御は充分立派ですぞ」と言われてしまった。でも一部の団員からは好かれていて、「またやってください!」とよくせがまれる。こいつらの気持ちがマジで分からん...
それはともかく、2番目と4番目にするか...
4番目の店に先に行って、2番目の店で締めるか。
俺はその店へと歩き出した....
途中も、他の店に行った奴の報告が来る。
『なんで俺がスイーツなんか!でもうめぇ!止められない!』
『このお菓子...お土産とかにいいかも?』
ふむ、じゃあそこも行こうかな。
数時間後。俺は計五軒の店を回り、お腹一杯で歩いていた。
もう冬なので、店内は暖かかった。火照った身体を冷やすように、ベンチに座って休む。
メニューをチェックして時刻を確認すると、もう16:00ほどであった。
そろそろ帰ろうか...と思ったが、もう少し休んでいこうかな..............................
「————きてください、起きてください」
気が付くと、俺は物凄いイケメンで高身長、スマートだが引き締まった筋肉を持つ...って何言ってんだ。...とにかく男に揺すられていた。
「......だれ?」
「名を名乗るほどの者ではありません」
「どうして起こしたの?」
「もう5時ですよ。いくら休日とはいえ、貴女のような美しい人が寝ていれば、襲われてしまいますよ。...悪い狼に、ね」
イケメン男はその容姿にばっちしな仕草で俺にそう言った。
ちょっと気障な感じがまたその容姿を際立たせてるな。
惚れちゃいそうだ...
「さあ、帰ったほうがいいのでは?何なら、家までお送りしましょう。」
「あ、いえ...大丈夫です」
「そうですか、では無事に帰れることを祈ります」
美男子はそう言って物凄く洗練された礼をした。
やっぱりこいつ只者じゃないな!と思って、俺は足早に歩きだした。
しばらくして振り返ったが、もう男の姿は無かった。
◇◆◇
月曜日、放課後に先日の騎士の代わりが来るというので、俺たちは緊張の授業を過ごした。
昼飯も喉を通らないほどであった。
先日の騎士よりさらに横柄なのが来るのか、それとももっとお役所対応なのが来るのか...
一応今日は王城まで行くわけではなく、事前説明だけらしいが、それでも先日のエルモスのような騎士や、初期エッジのような奴も嫌である。
「ユカリ、どんな奴が来ても俺が守ってやるからな」
「そうだ!碌な騎士を寄越せない王なんて見限っていいからな」
おい...お前ら一応貴族だろ。
王への忠誠心が無さすぎる...この国大丈夫かな......
そんなこんなで授業が全て終わり、放課後になった。
既に騎士は到着しているようで、応接室にて話すようだ。
だが......
「「あっ!」」
「ユカリ、知ってるのか?」
「知ってるも何も...」
「この間の美しき人は貴女だったのですね...冒険者ユカリ・フォール....その美貌に似合う美しい名前です。」
そう、昨日会った謎の男こそ、案内をしてくれる騎士だったのだ。
道理で一般人らしからぬ仕草だと思ったよ!
でも、中身はどうかな?
同じことを思ったのかアレックスが叫ぶ。
「本性を現せ!お前のような奴が王宮騎士にいるという話は聞かない!」
「ああ、説明が足りませんでしたか...私は正確には騎士ではありません。」
「やっぱり、ユカリを篭絡しようと...」
「いえ、私は王族です」
なんだと?
「へ?」
「私は王位継承権がある立派な王族ですが、王...父上たっての希望で騎士に任命され、ユカリ様の元へ向かわされました。」
「はあ?」
一体どういうことなんだ...
俺の身に一体如何ほどの価値があるというんだ...
フリーズする俺を無視して騎士の事前案内は続き、そして終わった。
王城へ行くのは数日後、土曜日らしい。
次回から王都王宮編が始まります。
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