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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都王宮編 前編

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Ep-71 王宮からの使者

新編開始です。

ちょっと複雑な事になっていくので、更新が不定期化するかもしれません。

「ねえ、これはどうなっているの?」

「俺が知るか」


俺は疑問の声を口にした。

ここは学院の執務室...元は使われていない大倉庫だったが、アルマ学院長に頼んで俺等生徒会長組が使えるようにしたのだ....のだが....

現在俺の目の前には大量の書類が積みあがっていた。


「放置されていた虐めの報告、修繕箇所の報告、各個契約内容の確認.........メリアの後始末じゃん!!!」

「だから、俺は知らないって」


そんなふざけたことを言いながら、部屋の端でナイフを器用にくるくる回しているのは、

生徒会長補佐クレル・アーサーだ。

自分でやると言い出しておきながら一切補佐してくれない。


「クレルもやってよ!女子に任せっきりだとモテないよ?」

「俺には.......ユカリがいるからいいんだよ」


こいつ.....上手い返しを!

だが俺にも反撃のカードはある!


「でもクレルにはシュナがいるよね?」

「ギクッ!」


しかし、すっかりこの言葉遣いにも慣れたなあ。

転生したころはまさか18年生きて女の子になるとは思ってなかったからな...

男心が分かるからこそ男の弱みを見抜くのが得意になってしまった....


「んふふ、いいのかな~」

「うっ」

「手伝わないとシュナに...」

「わー!分かったから!何をやったらいい?」

「そうだなあ....」


俺がクレルに割り当てる仕事を考えていると、ドアが開いて学院長が入ってきた。

傍に浮くフーはティーセットの乗ったプレートを咥えている。


「悪いわね、貴重な休日を使わせちゃって」

「それはいいんですけれど、学院長はこの現状を?」

「勿論、知らなかったわ。報告係がその陣営の人からしか選出できない規則に問題があったと判断して、今は...」


入り口からメリアが入ってくる。

その首には首輪がつけられている。

学院長が言うには「監視の首輪」と言うらしく、変なことをしたり首輪を外そうとすると学院長の傍の精霊に連絡が行くそうだ。

メリアの両親が怒りそうだと思ったが、

サウリア家はメリアが一度学院不祥事の発覚で王城へ連れていかれた時、

知らぬ存ぜぬを通して勘当したらしい。

つまり今はただのメリアってことだな。

何と愛のない親子である。

ただ、俺がメリアを牢屋にぶち込むのは待ってくれと言ったり、

意識のあったオルドからメリアが死ぬ前に俺が飛び込んでくれ、俺の命令してないけどでアスキーが傷を治して死から救ってくれたと聞いて、態度を改めた。


「家に命令される形で行っていた支配は、気が付くとあの『出資者』の為の支配となっていました。........家にも見放され、『出資者』も死んだ今、争う理由はありませんから」


確かに、部下は貴族様のような性格の我儘ばっかだったが、

メリアはそこまで感情を表に出してはいなかった。

もしかしたらこれも嘘なのかもしれないが、少なくとも信用には足るだろう...

と俺は思い、彼女を『メイド』に任命した。

メリアの元部下からは非難轟々だったが、三十年程メリアと一緒に牢屋行っとく?

と脅したら全員黙った。

学院は国家の要、それの転覆は反逆罪と同義なのだ。

良くて牢屋に三、五十年、悪くて死罪だな。

サウリア家は無理矢理メリアを抹消したが、それをネタに散々他の家に貶されて没落寸前らしい。

そんなわけでほぼ全てが丸く収まり(本人の意思は出来る限り尊重した)、悪者4人組は

アスキーは理事長を続投、ただし本人がやる気があるそうなので形だけではない実際の理事長のポストへ。オルドは普通に投獄。本人が望んだらしい...まあ、自分が当主の家も没落、大人しく牢屋に入ったほうがマシかもな...アラドはセブンスに所属しランクアップに貢献してくれるそうだ。


◇◆◇


粗方書類の山を片づけ終わり(時空剣クロノスソードという剣の能力で時間を遅めてやった)、メリアが淹れてくれたお茶で一杯やっていると、扉を丁寧にノックしてからアレックスが入ってきた。ユイナも一緒か。


「よう」

「お仕事は終わりましたか?」

「うん、何とかね...」


アレックスが目配せするとユイナが手に提げていたカバンからクッキーを取り出す。

ベルが焼いた美味しいけど形が歪な奴じゃないので、多分普通に購入したお菓子だろう。

ただしこの世界でも漏れなく白い砂糖は高いので、こいつも結構なお値段なんだろうな...


「そういやよユカリ」

「ん?どうしたのアレックス」

「多分今日あたり来るぜ」


何の話だろうか...?と思っていると、クレルが反応した。


「そうそう、アスランド家にも話は来てるぜ。何か凄いことやってユカリが王城に呼び出されるって」

「へ?」

「この国は強い冒険者の囲い込みが凄いからな...ユカリなら絶対に王様の眼に止まるとは思ってたぞ」

「でも、そういうのってアルトリア帝国でも無いの?」

「あの国はそもそも強え奴とかは大抵貴族だからな、言われなくとも有事には動いてくれる。基本的に力への憧憬が強い国だから、例え一般人に強い奴が現れても、最強たる帝王への忠誠心は変わらないからな...」


へえ...じゃあ俺は王様に呼ばれるわけか。

恋愛ものだったら王子様に告白とかされるわけだが...

例えイケメンでも男に愛を囁かれるのは個人的に寒気がするな。

中身は男って結構不便なんだよな...


「じゃあ、謁見ってやつ?」

「そうだな」

「身なりとか整えたほうがいいのかな」

「そうだな~。その服はちょっと活動的だからもっと女性らしい服装で行かなきゃいけないし、その無造作ヘアー気に入ってるんだろうけど貧しい奴と思われたくないならセットして行ったほうがいいぜ。化粧は別に要らねえけど人前に出るのに化粧しない女性はどうなんだって法衣貴族共に嫌味を言われるぜ」


身なりについてクレルはかなり詳しいようだ。

何故詳しいかと言えばシュナを一度王族主催の宴に連れて行ったときに木っ端貴族達に散々シュナを貶されたからだそうだ。

はぁ~....面倒臭え~..........................


「断れないの?」

「普通は断ってもいいんだが、噂によるとユカリを呼び出す書状は王、王子、姫、その他兄弟面々のサインが連なってるとか...断ったらお前多分死ぬぞ?」

「ヤメテオキマス...」


何でどいつもこいつも俺に興味持つんだよ!

関わらないでくれーッ!

俺が内心悶絶していると、ノックがなされメリアが入ってくる。


「どうした?」

「はい、正門前でユカリ・フォールを出せと喚いてる方が...」

「来たな」

「失礼が無えようにな」




全く感情のこもっていない見送りを受けて正門前まで来た俺だったのだが...


「貴様がユカリ・アキヅキ・フォールだな?王がお呼びだ、さっさと来い」


鎧に身を包んだエラソーな奴がふんぞり返って立っていた。

そして物凄い横柄な口調で喋った。


「あの、あなたは誰でしょうか?」

「よくぞ聞いてくれた、我こそは王宮騎士団第六部隊隊長、エルモスだ!貴様のような汚い冒険者風情に名を語るのは虫唾が走るが、まあ良いだろう。さあ、さっさと付いてくるがいい。」

「いや、まだ仕事が」

「何だと?逆らうのか?この俺に?下賤な冒険者の女風情が...!」


こいつ、『冒険者』と『女』という言葉を重視しすぎて俺が貴族だって忘れてねえか...?

お前よりよっぽど偉いんだが...


「ですが、私はアキヅキ家の...」

「黙れ!地方の泥臭い糞雑魚田舎貴族家の令嬢が何を偉そうに!さっさと付いてこい!逆らえば奴隷落ちだぞ!」

「はーい...」


何となく逆らえず、王城まで連行される羽目となったのだが...


「待て!」


突如アレックスとクレルが飛び出し、進路を妨害した。


「何だ貴様ら!」

「俺はアレックス・エストニアだ!」

「俺はクレル・アーサー・アスランドだ!」

「クレル!アレックス!どうしたの?」

「どうしたも何もねえ!こんな奴についていく必要はねえよ」

「そうだ。言わせておけばそこそこ王の評価の高いアキヅキ家を泥臭い糞雑魚田舎貴族家呼ばわりだと!?ユカリ、こいつぶっ飛ばしてもいいよな!?」


アレックスとクレルがあんなに怒るのも珍しいな...

と思ったが、滅多に怒らない俺もこの騎士の態度の悪さに怒りがふつふつとこみ上げてきてはいた。


「おやおや、アスランドの芋息子とエストニアの無才長男ではありませんか、わざわざこんな田舎の女をかばうとはまさか...泥臭いだけではなく尻軽の淫らでもあ———ぶぎゃああああああああああっ!」


俺はぶち切れて騎士をぶっ飛ばしてしまった。

ステータスで強化された一撃なので、ぶっ飛ばすと言っても放物線を描いて王城の方向へぶっ飛んでいく程であった。

何が泥臭いだけでなく淫らだこの野郎!俺は純潔だっ!

ついでにクレルとアレックスを馬鹿にしたな!その罪重いぞ!


「ゆ、ユカリ....」

「こ、怖え...怒らせたらヤバいな...」


傍ではアレックスとクレルが怯えて震えていた。

俺は彼らを安心させようと、出来る限りの笑顔で言った。


「大丈夫、もう二度と王城には行かないよ」

「ひぃぃぃぃ!」

「怖ええぇぇぇ!」


アレックスとクレルは余計に怯えてしまったようだ。

何でかなあ...

ふと見ると、手に持っていたペンが根元から砕けていた。

多分外に出るときに持ち出した、学院の自動でインクが補充されるペンか...

簡単に折れるものじゃあないのに折れたって事は相当キレてたんだな...


◇◆◇


その後、騎士エルモスを監視していた兵士の報告によってエルモスは断罪された。

新しい騎士が派遣されることとなり、王はため息をついた。


「また失礼があってはかなわん。あいつを行かせろ」

「しかし父上、彼を行かせると色々と言われるのでは?」

「ぼ...俺の評判と、下等翼竜と飛竜の群れを単体で倒せる冒険者の確保、どっちが大事だ?」


とのことで、騎士ではないが騎士に短期任命された男が学院へと向かうのであった。


次回から王都王宮編が始まります。

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