Ep-641 人疑応神
全員が解散した後、私は召喚陣を開き、召喚できる神々全員を呼んだ。
岩神、森神、最高神、太陽神、雷神、軍神。
聞きたい事は、古代語が読めるかどうか、あの装置は起動しても良いものなのか、霧とはなんなのか、水中で活動できる方法はあるか...などなど。
「早速で悪いんだけど...」
「古代語は俺が読める。太陽神、岩神、最高神も読める筈だ」
言語については軍神がサポートしてくれるらしい。
このメンツは、人間との交流も深かっただろうし、別に変な事でも無かったけど。
「ただし、海の民が使っていた言語が儂らの知る言葉と同じかどうかはわからん」
「体系は同じはずだがな、保証はできないぞ」
岩神と太陽神がそれぞれ口にする。
それに、太陽神が言うにはこういうのは月神の方が詳しいそうだ。
太陽は若さと活気の象徴であるのに対し、月は静謐さと理知の象徴、智慧を巡らすならば月神の方が適任なのだという。
「じゃあ、あの装置の安全性についてだけど...」
「それは現地に赴かんとわからんな...」
最初に岩神が口にした感想は、全員が同じのようだった。
彼らの知識にない装置なのか、それとも種類が多く特定はできないのか、それは私にはわからなかった。
「霧について聞いてもいい?」
「あれは、恐らく海神の権能じゃろう」
岩神がふと口にした言葉を、私は聞き逃さなかった。
あの海域のどこかに海神は必ず居るってことになる。
「海神は海全てを統べる存在じゃが、今は海から海神の気配は消えて久しく、水底に眠っていた隠匿された歴史や、封印されるべき悪夢が地上に出ては人間や他の種族を脅かしているんじゃよ」
「でも、このセスティアル海は違うよ、ボクのいる森のように、海神の力がしっかりと根付いている海域だ」
岩神が語るには、海神はなんらかの理由があって隠れているそうだ。
あの霧は、多分だけど神気が薄弱ながら含まれていて、それが魔力や看破しようと作用する力の妨げになっているようだ。
「海中では問題なく魔力は使えるじゃろうが、地上に出れば正しい方向を確かめる方法は魔力に頼らない方法だけじゃ」
「...成程」
やっぱり船を使うのが正解だったみたい。
「最後になるけど、私が海中で活動できる方法はあるかな?」
「儂等にはどうにもできんな...それ故に、提案したいことがあるんじゃ」
「?」
彼らにはどうにも出来ないなら、一体何を提案するというのだろう。
私が首を傾げている間に、岩神は続きを口にする。
「水神と契約を結ぶんじゃ」
「ええ...でも、水神は」
「儂らと契約した時を忘れたかのう? 真摯な態度で向き合うんじゃ」
水神と契約する。
それは何だか、セーラの遺志を裏切るようで憚られた。
でも、それしか方法がないなら仕方がない。
「...分かった、そうしよう」
失敗したなら、それまで。
もし成功したなら...他の神との契約も試みよう。
そんな決断を、私はしたのであった。
さて、神との質問が終わっても、まだやる事はある。
ダンタリアンに報告と質問をするのだ。
「遠距離通信は、いまだに面倒くさいからなぁ....」
まず、ベルたちがいる場所と私たちのいる場所は対角線上になっていて、距離がある。
それ故に、前に使っていた指輪の改良型では通信ができない。
だから、古代魔族が使っていた遠隔通信を使う。
「〈リフレクティング・ウォーター・クロスリンク〉」
菱形の魔法陣の中心に水鏡が現れ、しばらく波紋が立つ。
これは所謂コール、掛からなければ強制的に魔術が終了する。
『誰だ....ああ、ユカリか。どうした?』
「ダンタリアン、相談したいことがあるんだけど....今暇?」
『構わん、聞こう』
ダンタリアンは基本暇だ。
戦いの最中でもなければ、こうして相談に乗ってくれることもある。
私は聞きたいことをすべて言い切る。
ダンタリアンなら、大抵覚えてくれるから問題はない。
『ふん........我らの時代の遺物か』
「魔王の時代からのものではないみたいだけど、少なくとも機能自体は魔王の時代からだって、神たちは言ってた」
『恐らく、上位神の一柱が身を隠しているな。それも....確実に』
「うん、私もそう思った」
恐らく名残だけじゃない、本当にいる。
『古代文字の解読は、分からないことがあればまた通信をくれ。現地に赴きたいが、現代の魔族共の攻勢が強まっている故に、同時翻訳が限界だ』
「充分だよ」
『これくらいでしか役に立てぬ、申し訳が立たんな』
ダンタリアンは少し残念そうに俯く。
いや、俯いてるかどうかは気のせいかもしれない。
「まだ、申し訳なく思ってるの?」
『いいや、もはや過去は消えぬもの、我は礼儀を捨ててくれとの命にのみ従う。.....これはただの、個人的な感傷に過ぎない』
ダンタリアンに魔皇として覚醒したと言ったとき、ダンタリアンは私に向かって敬語を使ったけれど、私はそれを拒否した。
その約束は永続的に有効で、ダンタリアンだけは前のままの態度で接してくれる。
ゼパルやハルファスは頑として譲らない所を見ると、ダンタリアンはそこが特別だと思う。
「じゃあ、そろそろ切るね」
『またの再会を』
そろそろ魔力がなくなってきた。
魔王の魔力に繋げればもう少し維持できるけれど、自然回復しにくいリソースを通信に割くのは避けたい。
『それと』
「?」
『貴様の成長度合いに応じた新しい魔術を魔王書架に足しておいた、黄色い帯の茶色の本だ、感謝は要ら――――』
「あっ」
私側の魔力が枯渇して、通信が切断された。
30%以下になると自動で切断されるようにしてあるから、通信だけで魔力が尽きることはないんだけどね。
「〈魔王書架〉」
魔王書架にアクセスして、本棚を見る。
黄色い帯の茶色の本.....あった。
「午後は読書かな....」
テラスに出て読書でもしようかな。
本を書く魔法はあっても、本の内容を覚える魔法はないんだよね。
「ま、いいか。」
特に趣味とかもないし、午後の時間を使うにはちょうどいい。
私は室内着から外着に着替えて、テラスへと出るのであった。
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