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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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Ep-639 月下の追撃戦

何とか洋上に出た私たちだったけれど、海賊側も当然逃がしてくれる気はないようだ。


「流石に船丸ごと弁償はちょっと、ね....」

「ん? 何か言ったか?」

「何も」


本当はキールを抱えてこの海域を離脱したいのだが、魔導機械まで積んでるとなると賠償額を聞くのが怖い。

なので、このまま持って帰るのが正解だと思う。


「左右から来てるぜ!」

「わかりました」


キールの言葉通り、船の両舷に小さな灯りが見える。

多分だけど、オールで漕ぐタイプの船だ。

帆船なんかよりずっとスピードが出る。


「溺死しても恨まないでね」


私はスリープショットを維持したまま、魔眼で特定した船を漕いでいるであろう人間に矢を放つ。

直前に発動したブルズアイによって、速度による誤差や風によるブレを全て無視して矢が当たる。

当然備えなんかしていない漕ぎ手は、矢によって眠り船の速度が落ちる。


「まだまだ来るぞ!」


双眼鏡で遠くを見ていたキールが叫ぶ。

海賊の入り江から、無数の小さな灯りがこっちに向かってきている。


「...速度を上げます」

「上げるつったって、風ばっかりはどうしようも...」

「クリエイトウェポン、スタッフ・オブ・ウィンドミル! スキルセットチェンジ、セットメイジ!」

「その杖...あんた魔法使いだったのかっ!?」

「テイルウィンド!」


船の背後から強風が吹き荒れ、船を前に押し出す。

風で髪が逆立ちながらも、、キールは私を見ていた。

私はそれに頷いて、次なる魔術を発動する。


「タイダルウェイブ!」


荒波が巻き起こり、船の背後にいた小舟をまとめて薙ぎ払う。

あれくらいじゃ死なないとは思うけど、死んでないといいな...


「お客さん、派手にやるな」

「ええ、急いでください!」


叫んだ私の背後で、轟音が轟いた。

慌てて振り返ると、港を吹き飛ばしながら一隻の船が向かってきていた。


「あれは...」

「多分魔導機械だ、無茶しやがるぜ...!」


キールによればそうらしい。

あんな加速の仕方、間違いなく連発したら船がもたない。

とにかく、追いつかれるわけにはいかない。


「アクアピラー!」


高速海賊船の進路上に水柱が立ち、その進路を妨げる。

いくら高速船とは言っても流石にそれを越えることはできないらしく、迂回するために若干速度が落ちた。


「間違いねぇ、あの速度...旗は見えないが、黒鮫ロゲールの船だ! しっかり掴まってな、捕まったらタダじゃ済まねえ!」


どうやら、相当まずいらしかった。

私たちはより速度を上げ、月下の逃避行を開始するのであった。







ユカリ達の船は速度を上げ、高速海賊船から対角線状になるように移動する。

いくら推進力に改造を施していようとも、対角線への移動は難しいと考えたからだ。

しかし、高速海賊船の方も考えが無いわけではない。

ユカリ達より少しズレた方向に転身し、左舷に設けられた砲台をユカリ達の船に向ける。

空気を震わせ、砲火が夜闇を少しだけ照らす。

ユカリ達の船の手前に水柱が立ち、ユカリ達に水飛沫が降り注ぐ。


「うわっ!?」

「砲手はあんまり優秀じゃないみたいだね...」

「あんた、意外と落ち着いてるんだな...尊敬するぜ」


夜間で、灯火だけで正しく船の位置を判断するのは難しい。

夜目が利くらしいキールと、ユカリであればそう難しい事ではないが...しかし、海賊側にはその技術を持つ者はいない。

しかし、それでもその内の一発が船に直撃する。


「うおおっ!?」

「損害報告!」

「エーと...右舷船尾に被弾、火災はねえぞ!」

「結界を張ります。大体でいいので射線から退避してください」

「...ああ!」


ユカリが即座に、船全体を覆う結界を構築する。

続けて飛んできた砲弾は結界に衝突し、海に落ちた。


「次が来るぞ! 揺れに備えろ!」

「ええ!」


船はゆっくりと航路を修正する。

ユカリが再度テイルウィンドを発動し、その速度を引き上げた。

ほぼ同時に、爆音と共に高速海賊船が加速する。

ユカリ達の船をかすめるようにして走ってきた船は、ユカリ達の船の右斜め前で止まる。


「おっと、まずいなこりゃ.....」

「アクアウォール!」


ユカリによって海賊船が水壁に包まれる。

水壁によって砲撃は妨げられ、前進も後退も難しい状態になった海賊船は、その場で立ち往生する。


「なんで殺さないんだ!?」

「被害を与えるのはいいけど、殺したらもう終わらないんです!」

「ケッ、そんな事言ってたらこっちが殺されるぜ!」


キールの言い分は尤もであるが、ユカリには殆ど響かない。

そんなこんなで、ユカリ達の船は安全圏まで離脱することに成功する。


「何とか振り切ったか....?」

「いえ、まだですね」

「マジか!」


ロゲールの船から五隻の小型船が出撃し、各自手漕ぎでユカリ達の船に確実に迫って来る。

推進力はそんなに強いものではないが、このまま行けば直ぐに追いつかれてしまう。


「もっと飛ばします、操縦を!」

「.........よしきた!」


ユカリの風の強度が引き上げられ、マストが軋む音が響く。

船の滑る速度がさらに上がり、手漕ぎでは追いつけないほどに加速していく。


「お客さん、あの船が!」

「あっ!」


その時、背後で爆音が響く。

水しぶきをあげながら、高速海賊船が迫って来ていた。


「追いつかれるかな....」


迫ってくる船影を眼にしたユカリは、船を弁償する覚悟を決めた。

しかし、


「えっ?」

「ああ、船が耐えきれなかったか...」


ユカリ達の船へと到達する直前、海賊船は船底からバラバラになり海へと沈んでいった。

無茶な加速の連発に耐えきれなかったのだ。


「このまま振り切る!」

「お任せします!」


小型船の足が止まった隙に遊覧船はその海域を離脱したのであった。

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