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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都決戦編

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Ep-636 海賊との交戦

「貴族様よ、何で海賊の海域なんかに?」

「...」

「あ、俺はキールって呼んでくれ」

「キール、海賊の海域は何か特徴があるのですか?」


キールの質問には答えない。

まさか海賊と交渉したいからなどとは言えないからね。


「あ、ああ...特にはねぇが、海賊海域には沈んだ船の残骸がよく浮いてんだ、もう数時間もすれば見えてくるはずだぜ」

「そう。船の弁償はいたしますから、御安心ください」

「え?」


キールの舵を取る手が固まった。

遊覧船の進路が左に向いたままになる。


「まさか、あんた...」

「ええ、海賊と交戦します」

「......そりゃあんたなら勝てるだろうけどよ...」


キールの視線が私の右手に伸びる。

トーホウ人とも付き合いのある彼には、この武器が使う人間によって左右される強さを持ち、私が持てば間違いなく十全に扱えることを知っている。


「奴らを完全に滅ぼしちまうつもりか?」

「そうなると困るのですか?」

「あいつらは、土着の海賊だ。だからこそ、積荷を全部奪ったりはしないし、略奪さえすれば殺しもしない。あいつらが全員いなくなると、漁師崩れが新たな海賊になっちまう、そいつらはもしかすると今の海賊より優しくはないかもしれねぇ」

「うーん、確かにそうですね...」


そもそも、殺したり害するつもりはそんなにない。

この海域にいる理由を知りたいだけだ。


「海賊の流儀とかあるの?」

「あるにはあるけどよ...別嬪さんを前に冷静さを失っちまうぞ、あいつらは」


それが誰のことを指すかはまぁ指摘しないとして、交渉の難しさは確かにあるのかもしれない。

味方には海の魔物も少ないしね。


「なっ!?」


それから数十分後。

船体に寄りかかり、王宮料理をもうちょっと学んでみようかと思っていた私は、キールの声で現実に引き戻された。

そちらを見ると、水平線ギリギリに何かの影が見えた。


「船ですか?」

「ちょっと待ってろ、今確認する!」


キールは舵の横のタックルボックスから望遠鏡を出して、船を見る。

そしてすぐに叫んだ。


「まだ海賊の水域じゃねえぞ!? セステア警備隊の巡回ルートだってのに!」


私も目を凝らして直接船を見てみる。

マストの上で、黒い旗が揺れていた。


「どうしますか?」

「あんたが弁償してくれんだろ、もっと速度を上げるさ」


物分かりがよくて助かる。

帆を張り、船はどんどん増速していく。


「撃ってきやしたぜ!」

「速度そのまま!」

「速度そのまま、よーそろー!」


私が無詠唱で結界を展開して、船へのダメージを防ぐ。

水柱がいくつか船の周囲で巻き起こった。


「私が飛び移りますから、キールはそのまま離脱、あるいはその気があるのなら、船の横っ腹に突っ込んでください」

「よし来た!」


キールはそう言ったが、難しいだろう。

向こうも、大砲が当たらない距離だと悟り、こちらに舵を取って接近している。

多分、艦首から移乗攻撃を仕掛ける気だ。

両船の距離は縮まり、鼻先まで近づいたところで...


「キース、距離を取りなさい!」

「ど、どうなされるんで?」

「一人で行きます!」


私は艦首から跳躍し、直接海賊船に乗り移った。


「の、乗り移って来やがったぞ!」

「女一人だ、やっちまえ!」


甲板にいたのは、いかにもな感じの船員たちだった。

とりあえず、叩きのめそうか。


「げふっ!?」


一番近くに居た賊を蹴り飛ばす。

賊は呆気ないほどの軽さで、船の壁にぶつかって動かなくなる。

それを見て、呆然としていた海賊たちは一斉に武器を抜いた。


「もう遅いけどね」


幸いなことに、船の上といっても大船の上なので、足場はたくさんある。

速度を出しても問題ない。


「まず一人」


普通に近づいて、その手の短剣を叩き折る。

思ったよりも脆い。個人が独学で頑張って作ったっぽい出来だね。

略奪品じゃないのかな?


「二人」


もう一人はカトラスを抜き、左腰に投げナイフを装備していた。

カトラスを弾き飛ばし、踏みつけて破壊する。


「なっ!?」

「ゲルンのカトラスが!」


武器を壊されたのがよっぽど衝撃だったらしく、海賊たちがどよめく。

私は投げナイフを鞘ごと引きちぎり、海に放り捨てた。


「くそっ、くたばれ!!」


一人が鞘からナイフを抜き放ち、投げてくる。

投げナイフはクレル以来だなあ…

でも、速度も精度も彼には及ばない。

私はそれを避け、投げた賊に向かって全力ダッシュ、右ストレートで脇腹を殴る。

普段聞かないような音を立てて男は吹っ飛び、最初の賊と同じように壁にぶつかって気絶。


「何なんだこの女ァ!」

「様をつけなよ海賊野郎!」


一歩踏み込んで跳躍、キャビンの入り口の上に立っていた海賊をアッパーカットで突き上げた。

イイ感じに加速が乗って、力を抑えても気絶させられるくらいのパンチになった。


「これでもくらいやがれ!」

「えっ!?」


そんな声が聞こえたので振り向くと、大砲がこっちを向いていた。

移動式だったのを無理矢理こっちに向けたようだ。

直後、発砲音と共に砲弾が飛んでくる。

ギリギリ私に当たらないけど、船壊しちゃうとあとが面倒だな…

一応、蹴って海に弾いておく。


「砲弾は流石に重いだろうに…」


とりあえず、直撃するとそこそこ面倒臭いので、砲手を砲台ごと破壊する。

やり方は簡単、近づいて砲台の車を壊し、砲手の禿げた頭を掴んで船の床に叩きつける。


「がががが…」

「最後、だね」


指揮官っぽいのはもう特定済みなので、残るは一人。

比較的若いように見えるけれど、あんまり鍛えてないみたいで親分の一番近くにいるようだ。


「ひ、ひぃ!」

「せいっ!」


駆け寄って、まずは顔の直前まで拳を振るう。

それで気絶しなかったので、普通に股間を蹴り上げて悶絶させて無力化。

賊は声にならない声をあげて蹲った。


「ふぅ〜…」

「なっ、何なんだ…なんなんだお前は!」


指揮官は最後まで取っておくもの。

私は彼に向き直り、言った。


「ボスと交渉したい、取次ぎを頼む」

「………それ、普通は降伏する奴が言う台詞だぞ…?」


指揮官と踏んだ男は、しばらく呆然としたのち、この場にいる全員を即座に無力化した私を怒らせるべきでないと察したのか、言葉の意味を噛み締めてからそう返したのであった。

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