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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都学院編

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Ep-69 学院(裏)大決戦(後編)

ベルの強化回は後々書きます。

タツミの単話はもう当分ありません。

多分あと数話くらいで学院編終わりです。

学院は王都にあるにしては広い。

それを思わせるのが大庭園である。

その中央に、大噴水が存在する。学院長が設置したらしい水の魔石が水を噴き上げているのだ。


「.......おかしいわね、誰もいないわ?」


そこへ、声が響く。

噴水の周囲は植え込みの壁となっており、円状に囲まれている。

ただし、4つの入り口が存在し、その中の一つから歩いてきたのが...

タツミ。タツミ・フウカであった。


「あら?あなたは確か...」


そして、同じタイミングでタツミの反対側の入り口からやって来たのは、

ベルであった。


「あなたも呼ばれてきたの?」

「ええ。ユカリに」


2人はこの場にユカリがいないことを不審に思う。

ユカリは約束に遅れたり、しらばっくれる様な人間ではないと知っているからだ。


「じゃあ、これはもしかして....」

「罠?」


2人がそう呟いた時、地面が爆ぜた。

大噴水の魔石に手が加えられており、地面下の半活性状態の魔石に伝導して誘爆を起こした。そう説明すればよいだろうか。

しかし、2人は冷静に対処した。

タツミは仮面を身に着け、ステータスを上昇させて風魔法を上手く制御することによって地面へと着地した。

ベルは大海魔術により水を生み出し、その上を滑るようにして華麗に着地を成した。


「ほう、これを避けますか」


そして、2人の前に大きな影が現れる。


「誰だ!」

「誰ッ!?」


砂煙が晴れ、視界が正常へと戻る。

そして2人は見た。


「ようこそ、大庭園へ。そしてあなた達はユカリ嬢捕縛の為....ここで死んでもらいますぞ」


視界を埋め尽くす巨大な影、

魔導巨兵(ゴーレム)を。


◇◆◇


魔導巨兵の顔の部分から声が響く。


「『出資者』に頂いた魔導巨兵、有難く使わせていただきますぞ...ほら!」


そう言うと同時に、魔導巨兵が動き、その拳で地面を打ち据えた。

轟音と共にタイルが裂け、地面に大穴が開く。


「隙だらけだ!—————鎌鼬(かまいたち)!」


タツミがスキルで斬りつけるが、ダメージは入らない。


「雷帝よ、雷鎚をここに————スーパーボルト!」


ベルも詠唱し、バァン!という音と共に魔導巨兵に雷が走る。

しかし、それでも何の損傷すら与えることは出来なかった。


「ふはははは!今度は爆筒ですぞ!」


魔導巨兵から声が響くと、背負った箱が動いて方へと移動する。

そして、箱の蓋が空き数十もの灰色の棒が放たれる。

それらは全て2人に直撃——————する前に全て避けられ、地面で大爆発を起こす。


「朧十字!」

「サンダースピア!」


淡い光を纏ったタツミが魔導巨兵の腕へと斬りかかり、

背後からベルが雷の槍を放ち、背中へと突き刺す。


「今度こそ....!」

「やったか?」


しかし、腕には傷一つつかず、背中に刺さったかのように思われた槍も、刺さらずに抜け落ちた。


「ふはははっ!効きませんよ!」


魔導巨兵は左腕を変形させ、ガトリング砲のような形にする。

そのまま円筒を回転させ、高速で魔法弾を連射する。


「絶・風壁」

「ストーンウォール!」


それらをタツミは風の壁で、ベルは岩の壁で防ごうとする。

しかし、それらは最初の一撃で脆くも粉砕されてしまう。


「「きゃあああああああああっ!?」」


2人の顔に浮かぶのは”なぜ?”という疑問。

絶・風壁はユカリの中級魔法を、ストーンウォールは上級魔法を難なく弾けるはずなのに...

難なく砕かれたということは、あの魔弾は少なくとも上級とされる魔法よりも上の威力であると分からされたのだ。


「ベル!散開するぞ!」

「了解」


2人は何とか着地すると、そのまま左右に分かれ走り出した。


「くっくっくっ....別々になれば注意をそらせる。実にいい。実にいい浅知恵ですなあ!下賤な者らしい発想ですぞ!」


そう声が響いたと思えば、巨兵の両腕が再び変形する。

左腕はマシンガンのような形状に、右腕は魔力の刃のようなものへと。

そして、魔導機関銃は走るベルを狙い、魔力の刃はタツミへと向けられる。


「実に汚らわしい...貴様らのような下民どもが、この美しき学院にいることがなあっ!」


ドドドドドド!

ズガアアアアア!


魔導機関砲が火を噴き、魔力の刃が地面を割った。


「やられてたまるか!」

「負けないわ!」


ベルは自分に初級風魔法エアブーストをかけ、弾着よりも速いスピードで走り抜ける。

タツミは地面を裂きやってくる衝撃波を間一髪躱し、素早く肉薄する。


「それが通じるのは、いつだって同じレベルの中でですぞ!私のような力ある貴族には敵わない!死ね!」


魔導機関砲が方向を変え、ベルの進路を塞ぐように放たれる。

そして、魔力の刃が巨大な斬撃を作り出してタツミへと放たれる。


「ううううっ、これコスト掛かるんだけどなあ…空間転移!」

「何のこれしき!でやぁっ!」


ベルは空間転移を使ってどこかへ消え、

タツミは魔力の斬撃を刀の柄で受け止めた。キィィンと澄んだ音が鳴り響く。


「ふん、逃げましたか。どうやらベルとやらは剣士のあなたよりよっぽど臆病なようですなあ」

「それはどうかな?」


タツミが素早く魔導巨兵から遠ざかる。

それを見て、魔導巨兵からの声が焦りを帯びる。


「まさか、最初から逃げるために!」


それを聞いて、タツミは仮面の下で笑った。

直後、天から眩く光る炎弾が降り、魔導巨兵に直撃して半球状の爆炎を発生させる。

遅れてズガアアアアンと爆音が響き、タツミを爆風が襲う。


「さっすがベル!」

「私のニュークリアフレイム、効いたかしら...」


直後、空からベルが降りてくる。

ベルは咄嗟に空間魔法で上空に転移し、そこから爆炎魔術である〈ニュークリアフレイム〉を放ったのだ。落下の勢いを風魔法で軽減し、地上へと降り立つ。

地上は植え込みや木々、花々はすべて薙ぎ倒され焼け焦げ、既に庭園の体を成していない。

2人は巻き起こる蒸発の煙が晴れるのをじっと見つめ...


ピチュン!


煙の向こうから放たれた魔弾を慌てて回避した。

途端、巨大な威圧感が発生する、煙の向こうで巨大な何かが動くのを感じた。

そして....


「やれやれ、間一髪のところでしたな。まさか魔力障壁を突破されるとは...」


煙の中から無傷の魔導巨兵が姿を現した。

いや、完全に無傷ではない。ところどころ黒焦げになり、装甲が砕けている部分もある。

だが、戦闘の継続には問題ないレベルであった。


「そん......な....!」

「爆炎魔術が効かないなんて....!」


魔導巨兵が右腕を構える。すると腕が音を立てて変形し、大きな砲身となった。


「3秒猶予を差し上げましょう。逃げるなりなんなり...ご自由に。ただし、出来ればですが」


魔導巨兵の背から爆筒が飛び出して上空で破裂し、魔法陣を描く。

そして魔法陣は巨大な結界を作り出した。


「これは....?」

「まずい、完全遮断結界だ!古代に失われたはずなのに......」

「3」


慌ててる間にも、カウントダウンは始まってしまう。

それを聞いたベルが、空間魔術...空間魔法では駄目と悟り上位の魔術で逃げ出そうとしたが、何故かそれは発動せず何も変わらなかった。


「発動阻害型ではない...ということはやはり座標の特定ができず失敗か」

「つまり?」

「何物もこの空間からは逃しませんぞ!2!」


そして、何もできないままカウントダウンは進む。


「1!何か言い残すことは?」

「.....どうやら、本気を出すしかないようだってことね」

「ははははは、本気?面白いですなあ、やってみて頂けると嬉しいですなあ」


挑発に乗らず、2人はその場にて直立した。

そして、武器を降ろした。


「0!死ねぇ!」

「はあああああぁぁぁっ!」

「だあああああぁぁぁっ!」


キイイイイイイイイイイィ!という充填音の後、砲口から巨大な魔弾が放たれる。

直後、ベルとタツミから凄まじい勢いで魔力の圧が放たれた。


「出でよ!魔杖ダンダリアン!」


ベルは右腕に魔法陣を浮かべ、そこに手を突っ込み一気に引き出した。

凄まじい魔圧と圧力、そして余剰の魔力が噴き出す。

しかしそれすら余剰の魔力なのである。

ベルが取り出した杖の先には魔導書がくっ付いており、魔導書に嵌められた深紅の石から攻撃的なまでの威圧が放たれている。


『我が名は魔王ダンタリアン…ベルよ、我を呼び出すほどの事態が発生したのかね?それとも我とお喋りしたいのかね?』

「黙って力を貸しなさい!このクソジジイ!」

『うむむ…我は一応古代の魔王なのだが…』


ベルが古代語で詠唱すると、魔杖の先に黒い光が宿る。

ベルはそのまま杖を振り上げ、飛んで来た魔弾へとぶつけた。


バキィィィィン!


『ぬおおおおおお!痛い!ベル!もっと我を大事に』

「だあああああっ!」


そのままベルは魔杖で魔弾を弾き飛ばした。


「ほう、弾きましたか。ですがこちらも再び打つだけですぞ!」


再び魔弾が放たれようとする。

しかし、魔杖が黒い光を放ちブゥゥゥンと同じく黒い魔法陣を浮かび上がらせる。


黒王召雷(ダークサンダー)


杖の先から黒い雷が放たれ、魔導巨兵の右腕に直撃してドガアアアアアアンと言う轟音と共に腕を破壊する。

同時に放たれなかったエネルギーが爆発し、魔導巨兵はバランスを大きく崩す。


「な、貴様!?バカな、こんなハズは…!」

「こっちばかり見てて、良いのかな?」


魔導巨兵の主はベルばかりを見ていて、周囲の警戒を忘れていた。

爆煙に紛れ、一つの人影が近づいていたのにも気づかなかった。


「終わりだ」

「バカめ、まだ左腕があるわ!」


最接近し、両手に刀を構えたタツミが跳ぶ。

それに向けて魔導巨兵は左腕…剣と化した左腕を振るう。

しかし、タツミは既に発動の態勢に入っていた。


「巽流双龍術………神無月!」


タツミが構えていた刀が魔力とは違う別の力を帯びる。

タツミは充分と判断し刀を解き放つ。軽く振った双刀から破壊の力が放たれ、

無音にて魔導巨兵を十字に切り裂いた。


「バカな、バカなああああああああ!」


魔導巨兵は十字に入った割れ目から崩壊し、内包した魔力を排出できず大爆発を起こした。その余波は遠く離れた街や教室棟にまで及び、ガラスを吹き飛ばし建物を振動させるほどであったと言う。

勝ったのだ。タツミと、ベルは。


◇◆◇


その後、時間は経ち…

夕刻が近づいた頃。


「しばらくあんたの出番は無いわ」

『ぬぬぬ、お払い箱というわけか…まあ、久々の魔法行使、中々に楽しかったぞ…』


ベルは出した時と同じく魔法陣に魔杖ダンタリアンを仕舞い、

仮面をずらして紅く染まりつつある空を見つめているタツミに話しかけた。


「ねえ、あなたのあの力、いったい何なの?」

「あれは…極意には遠く及ばない私の力技」

「力技…?魔力すら使わず魔法障壁を張った相手を十字に両断する技が力技なはずは…」

「巽流の極意は気による奥義や剣技の強化。あれは私が咄嗟に思い付いたただの純粋なエネルギーを斬撃に変換してぶつける力技。あんなのは私の父上には遠く及ばない…」

「えっと…」


気関連の話にはついて行けないベルは沈黙するのであった。

その時、物音がした。

2人が振り返ると、魔導巨兵の残骸から誰かが出てくる所であった。

よく見れば、それは学院の支援貴族の筆頭であるオルドであった。

2人が近づくと、オルドは両手を挙げ、言った。


「降伏する…!頼むから殺さないでくれ…」


殺そうとしておいて何を虫のいいと2人は思ったが、こいつを殺すと面倒臭いことになると気付き、ユカリに突き出すため拘束するのであった。

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