Ep-67 精霊使いと勇者の卵
最近忙しくて更新できてませんでした…!
アレックスはユカリに最初会った時ほぼスキルが封印状態だったという設定を追加しました!
ある晴れた日の昼下がり—————
失礼、曇っていましたわ。
私、ユイナ・エレルはテラスにて、相談会を行っていました。
相談会と言っても、精霊術の素質がありそうな生徒を見つけ、テラスに誘う事ですが...
「ユイナ先輩、俺には何の素質があるのですか?」
「うーん...多分、剣と戦の精霊を視ることができて、自身に宿らせることも出来るはず...」
「でも、視えませんよ?」
「精霊を意識し、剣の修練を行えば、いずれは視えるようになるはず....ですわ」
「精霊を...意識する...?」
「そこにないと思うから視えないのですわ。そこに確かにあると信じれば必ず視えるはずですわ」
剣の精霊、戦の精霊は、剣の精霊ならば剣の道を歩むものに、戦の精霊ならば更なる戦いと成長を望む戦士にそれぞれ祝福を与えますわ。
けれど、この人は精霊に好かれるだけではなく、視ることも出来るようですわね...
あらゆる精霊に愛されながら、精霊を視ることができないアレックスとは違って、かなり才能が有りますわね。
『このお兄さん、とっても努力家なんだよ!僕の剣の祝福を完璧に使いこなしてる』
『俺の課す戦の試練をも見事に乗り越えた』
私の前に立つ生徒...バルトの周囲に浮かぶ精霊が私に話しかけてくる。
どうやら、結構な時間を共にしてきたようですわね。
少しだけ手助けをする気になってきましたわね...
「剣と戦の精霊よ、我が声に応えその姿を万人の前へと顕せ」
『はーい』
『御意』
精霊に呼びかけ、その姿を実体化させる。
これなら彼にも視えるはず。
「うわっ!?」
『やっと会えたねー』
『ようやく俺を見てくれる』
バルトは突然現れた精霊に驚き、こちらを見てきた。
私はそれにしっかりと応える。
「これは...?」
「精霊をあなたにも視えるように実体化させましたわ。これで少しは精霊を視る訓練になればよいのですけれども...」
「あっ、ありがとうございます!」
「うふふ、よろしいですわ」
やはり、人と精霊の出会いは素晴らしいものですわ...
私が初めて精霊の力に目覚め、彼らを意識したときのことを思い出しますわ。
そんなことを考えながら、しばらく私が恍惚に浸り、椅子に座っていると...
ズズゥン...
そんな音が微かに階下より響いてきた。
誰かが運んでいる荷物を落としてしまったのかしら...
それとも、例の竜帝、リンドヴルムがまた決闘でもしているのでしょうか....
『....ーん!』
あら?
聞き覚えのある声が聞こえてきたような.....
『た....へーん!』
私は慌てて声の発せられた方向を見る。
するとそこには、
『大変だよー!』
こちらへ向かって飛ぶ精霊の姿があった。
確かあの子は...アレックスのおつきの精霊でしたわね。
自分の名前と役割を忘れてしまった精霊で、何かを思い出すために自らと最も波長の合う人間と...アレックスと共にいる精霊だったかしら?
けれど、何故ここに?
「どうしたのですか?あなたはアレックスの傍に居るべきだと思うのですが?」
「違うんだよー!アレックスが魔物に襲われてるんだよ!えーっと...そうだ!大蛇と....地竜と.....後...なんだっけなあ....」
それを聞いて、私は走り出した。
いくらアレックスと言えども3体の魔物に囲まれれば負傷は避けられないはず。
「あ、待って!アレックスはユイナには来てほしくないって....」
後ろでアレックスの精霊が叫んだが、
もはや私の耳には届いていなかった。
◇◆◇
私が辿り着いた時、アレックスは3体の魔物を相手にしていた。
その身体は無傷で、反対に魔物の方は傷だらけであった。
「全く、神聖な学び舎に魔物を放り込むとは...メリア陣営は相当、余裕がないと見えるね」
「アレックス!」
「下がってろ、ユイナ。俺が全て片付ける。」
私が心配して来たというのに、全く冷たい男ですわ...
まあ、それも私を心配しての言動なのですけれども。
アレックスはそう言うが早いか素早く地面を蹴り魔物の方へ駆けだした。
大蛇が身を捻りながら素早い動きでアレックスの腕に噛み付こうとするが、
アレックスはそれを容易に避けた。
「せやっ!」
アレックスはそのまま返し刀に蛇の首を斬りつける。
しかし、刃は首を断つことなく皮に食い込む。
それで大蛇の優先順位を下げたのか、アレックスは地竜ではないほうの魔物...
グリフォンへと飛び掛かっていく。
「ギィィィィ!」
グリフォンは自分の方へと向かってくるアレックスに翼を広げ、風の刃を生み出して攻撃する。
「はあっ!」
アレックスが素早く剣を振るうと、ギィン、ギィンと音を立てて風の刃と剣が激しく衝突し、風の刃の方が負けて霧散する。
「せぇいッ!」
「ギギギィィィ!」
アレックスはやはり単純な剣技でグリフォンに一撃を入れようとするが、硬い体毛に弾かれて傷を与える結果にすら至らない。
この戦い、少しアレックスが不利ですわね...
何故かは知りませんが、アレックスは確かスキルを自己獲得出来ないんでしたわね。
スキルがあれば、あの程度の体毛簡単に貫いて致命傷を与えられるのでしょうが...
「水の精霊よ、彼に活力を!火の精霊よ、彼の剣に祝福を与えたまえ!」
「ユイナ、下がってろと言ったはずだ!」
「そのまま戦っても、ジリ貧ですわ!あなたはスキルが使えないのでしょう?」
どうやって魔物に傷をつけたのかはわかりませんが、
恐らくアレックスが付けた傷ではないのでしょう。
大方、魔物を弱らせて捕獲するために付けた傷なのでしょう...
「確かに、俺にはスキルというアドバンテージが無かった...」
「でしょう?ですから私が貴方をお守り———」
「だが、今は違う!星屑斬!」
アレックスが叫びながら剣を振ると、斬撃も空気の動きも、魔力の動きすらも感じさせず、グリフォンの脇腹に裂傷が走る。
「い、今のは.....?」
「俺もわからない。だが、この間ユカリと共に依頼をこなした時、力の成長を感じたんだ。次の日、スキルを確認してみたら...確かに俺はスキルを獲得していた。」
「そんな...ことが...」
私も私の実家の権力で集められるだけの資料を集めました。そもそもアレックスの実家も....相当な権力をお持ちですので、これには意味がなかったのですけれども...
そして、精霊にも、精霊王にまでお会いしてこの現象の直し方について聞きましたが、
アレックスがスキルを獲得できたことはただの一度もありませんでしたわ...
技と経験の精霊さんに見てもらった限りでは、アレックスは確かにスキルを持っているのですけれども、何らかの理由で意識できなくされているとのことでしたわ...
「フレイムソード!」
アレックスが叫ぶと、構えた剣に炎が纏わりつく。
あれは確か、〈魔法剣〉のスキルだったかしら....?
それを使って、アレックスは容易にグリフォンを両断する。
「ギィィィィイイイ......」
「まあまあ...強かったぜ」
どさりと音を立てて両断されたグリフォンを見て、アレックスはそう呟いた。
その時、私は気づいた。アレックスは、この機に乗じたのかは分からないが、
このそこそこ強力な魔物3体で自分の力を試していたのだと。
「シャァアアアア!」
「星屑斬」
後方から息を潜めて接近してきていた大蛇を、アレックスは難なく斬り捨てる。
大蛇の首が宙を舞い、地面にボトンと落下する。
「凄い...」
「凄いだろ?」
私としたことが、つい呆けた顔でそれを見つめてしまっていた。
アレックス、あなたは何て格好良いのでしょうか....
しばらくの間アレックスに見とれていた私でしたが、
すっかり忘れていた1つのことを思い出しましたわ!
「アレックス、地竜は何処へ?」
「地竜?....そういえばいないな」
私が地竜のいた場所を振り返ると、そこには穴があった。
周囲には床のタイルが散乱している。
ここは1階。そこに穴があるということは.....
「アレックス!地下にいますわ!」
「な―—————」
アレックスが地面に顔を向けた瞬間、轟音と共に竜が地面より飛び出し、
その大きな口でアレックスを食らおうとした。
それを愛剣でなんとか受け止めるアレックス。
ガガガガガガ!と凄まじい音が響き渡る。
「くっ!そぉぉぉぉ....」
「グラアアアア!」
数秒の拮抗の後、アレックスは弾かれたように飛び上がり、地面に着地する。
そして、私の方へ向かってきた。
何故?と私は疑問に思いましたが、その疑問はすぐに解消された。
「グラアアアアアアン!」
地竜の口から、高速で岩の塊が射出される。
それはまっすぐ私の下へと飛び...
「だぁぁぁ!」
その直前でアレックスが全て弾き飛ばした。
岩弾が弾かれたのを確認した瞬間、地竜は再び地面へと潜った。
「地面ごと斬り飛ばす!」
アレックスは先程放っていた星屑斬りとやらを連発し、地竜を追い詰める。
しかし、地竜は追い詰められそうになると素早く肉薄し、アレックスに剣撃を撃たせない。
「くそぉ!」
「グラアアアアア!」
何度目かも分からない衝突の後、アレックスが後退する。
そして、私に視線を合わせてくる。
それで私はアレックスが何を考えているかを察した。
「光の精霊よ!我が声に従いたまえ!」
私は光の精霊を操作して、地竜の前で瞬かせる。
当然地竜は光の精霊を追い始める。
アレックスは何か作戦があるようで、私の精霊を囮に使って地竜を倒す作戦のようだ。
光の精霊は部屋の端まで飛んでいき、それを地竜が追いかけていく。
アレックスは剣を構え、言った。
「ちょっとクサイ台詞かもしれないが、言おう。ユイナ…これが俺の真の力だ!」
地竜は部屋の端で光の精霊と戦っている。
それを見据え、アレックスは剣を振った。
「流星斬」
ギュバァァァァ!と聞いた事のない音が響いた。
私が地竜の方を見ると…
横に斬線が走り、まるで瞼を開くかのように空間が裂け、大爆発した。
光の精霊も巻き込んで…
「ふぅ〜、やっぱり疲れるな」
「アレックス」
「何だい?」
「私の光の精霊、巻き込んで居ましたわ」
「あ…」
光の精霊は真っ二つにされた挙句爆発に巻き込まれて消滅した。
精霊は普通に死ぬので、アレックスは私の大切な仲間を殺したことになりますわ。
絶許ですわよ…!
「あー、その…えっと…」
「今回は私に食堂のスイーツを奢る事で済ませてあげますわ」
「………分かったよ」
こうして、私はアレックスにスイーツを奢らせることに成功したのだった…
後日、魔物の襲撃は焦ったメリア陣営の策であると判明し、メリア陣営は更に不利へと近づいたのであった…
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