Ep-65 挑戦者と圧倒的強者
仲間の強さを前面に押し出す回をいくつか挟んでいきます。
それと、これで敵の内部とのつながりが少しできました。
主人公より主人公をしているチートキャラリンド、強そうな振る舞いをしていきます。
俺の名前はリンドヴルム。
世間では『竜帝』で知られているな。
話に聞けば凄まじい巨躯で大地を砕きながら進み、空を飛ぶときは風の揺らぎだけで街をも破壊する、攻撃はすさまじく、一撃でオリハルコンの鎧を着た人間を殴り砕き、ブレスで数千万の軍勢を一瞬にして灰燼へと変えるなどと言われているようだ。
もっとも、実際はそこまで恐ろしいわけではない。
『竜帝』になったのも、かつて願った願いを叶えるためであるし、
巨躯も、翼も、鱗も、爪も...吐息も、何一つ弱者を理由なく虐げるものではないと理解している。現に俺は今、最近育て始めた真白花という綺麗な花に水をやりにいく所である。
「.......」
しかし、何やら見られているな。
普段俺に向けられる、好奇、観察、畏敬、崇拝。それらのどれとも違う視線。
そう、敵意と微量の殺意だ。
足を速め、花壇のある角を曲がろうとした時...
「ほう」
「....ッ!?」
突如、角から槍が突き出された。槍は俺の硬い竜鱗に弾かれ、止まる。
ただ、少し服が傷ついてしまった...ベルの買ってくれた服なのだが...
「何奴だ!姿を見せよ」
「......噂通りの化け物だな。だが、必ずここで死んでもらうぜ!」
槍を突き出してきたのは、軽薄そうな長身の男だった。
少々乱れてはいるが制服を着ているな。学院の生徒であるのは間違いなさそうだ。
学院の生徒が槍を持ち、一体俺に何の用事だ?
「待たれよ。我に何用か?見たところ、学院の生徒のようだが」
「お前に知る必要はない!」
長身の男が叫ぶと、周囲に散開していたらしい男の仲間がスタスタッと次々に降りて来た。
そして、一斉に俺の方へと駆けてくる。
ふむ...拙いな。多少被るとはいえ各自別々の武器を身に着けているが、その扱いは雑だ。むしろ、その扱い方では自身の負担を増やすだけであろうに...
「良かろう!我は死にゆく者には寛容だ。強者は弱者の挑戦を受ける義務がある!」
俺はそう叫ぶと、魔力を込めて指を弾く。
ドドォン!
パチンという音をかき消すように、音の爆発が巻き起こる。
俺を中心に逆向きの魔力の渦が発生し、奴らはいとも容易く吹っ飛ぶ。
それだけではなく、周囲のガラスが全て粉々に砕け散った。
….後で謝らねば。ユカリに怒られては流石の俺も反抗できぬ。
「どうした?まだ戦いは始まったばかりだぞ?」
「う、うるせえ...お前こそ、勝った気でいるんじゃねええええ!」
ほう、向かってくるのか....この竜帝リンドヴルムに。
俺は少し戯けてみることにした。
「そうだ、我はこの左手だけで戦ってやろう。貴様らでも少しくらいは楽しめるだろう?」
「ふざけやがってえええええ!」
俺はリーダー格の男が繰り出してきた槍を小指で受け止める。
そして、折れぬよう上手く調整し捻り上げる。
「うっ!うわぁぁぁああ!?」
「ぜ、ゼイン!ちくしょおおおお!」
倒れていた仲間らしい奴等の内の一人が剣を拾いこちらへと走ってくる。
なんと、見上げた精神だ。俺の配下共を思い出す。
「ほほお~っ?では十分近づくがよい!存分に相手してやろう!」
「ほざけ!」
俺は先ほどの宣言に従い、近づいてきた男が振るった拙い剣を弾き飛ばす。
男の顔が驚愕に染められるが、驚きはこれからだ。
「エアバースト」
俺は風魔法の中級のエアバーストを放つ。
それは本来弱い風の弾を放つ魔法だが、俺が”全力で”行使した場合、話は違う。
チュドオオン!
俺の左手から風の砲弾が射出され、男の身体を捉える。
「ぎゅぼゃあぁぁぁ!」
何だ締りの無い...
だが、面白いので俺は奴等にもう少しだけ付き合ってやることにした。
◇◆◇
それから、何時間が経過しただろうか...
奴等は未だ諦めず、ぐんぐんと成長しながら俺に相対している。
勿論、俺は諦めず放ってくる全ての攻撃を、左腕だけで対処している。
その場の思い付きとはいえ、それすら守れぬようでは竜帝は務まらぬからな...
「これでどうだっ!」
「遅い」
俺は襲ってきた男...イーマと言ったか。の振り上げて来た斧を難なく左腕で受け止め、
斧ごと跳ね上げた。
さらに、俺の左腕が使えないことを見越して初級魔法ファイアボールを放ってきた魔術師...レーナだったか?のファイアボールを左腕で風を巻き起こし、術者ごと吹き飛ばす。
「どうした?もうお終いか?」
「それはどうかな!」
ん?
俺が目を向けると、その先に小柄な少年の姿が見えている。
既に間合いに入られており、その手に持つ小刀は俺の右腕を狙っている。
成程、これは確かに右腕を使わざるを得なくなるだろうな...
「だが、させぬ!どおおおおッ!」
俺は左腕に魔力をありったけ注ぎ込み、
そのまま思い切り地面に拳を突き立てた。
ゴゴゴゴゴ!ズドォォン!
地面が罅割れ、崩壊する。
少年は足を取られ、バランスを取ろうと伸ばした手を...俺が掴む。
「え?」
「終わりだ」
俺はそのままユカリから教えてもらった技、『ハンマー投げ』の要領でそいつを投げ飛ばす。
「あああああぁあぁぁ!」
そいつが飛んでいった先を眺めていると、リーダー格の男....ゼインが弱弱しく俺に語りかけて来た。
「こ...降伏する!従うから!許してくれっ!兄貴....」
「ふむ、いいだろう。強者は弱者の降伏を受け入れる義務がある」
どうやら、降参のようだな。
それだけ伝えたゼインはそのまま気絶してしまった。
俺は全員に回復魔術を掛け、その場を後にした。
◇◆◇
「り、リンド兄貴!新しい子分を紹介しやす!」
「要らぬ。我の配下はすでにここに」
「....リンド、私を数えてないよね?」
「むっ!ユカリ...当然だとも」
舎弟が出来た。
俺というものがこうしてホイホイ仲間を作ってしまうとは。
まあ、何かの役には立つだろう...
こいつらは明確に俺を狙ってきた。
ならば、今ユカリが対立している相手を考えればよい。
俺はユカリに近づき、耳打ちするために歩き出した。
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