Ep-S4 ダンジョンバトル!(後編)
この先当分はここまで長いのは書かなさそうです。
後、ここまでレベルが高いキャラがたくさん出ていますが、
基本的にユカリと彼らは戦わない流れなのでこちらのレベルインフレは無視してください。
ダンジョンの入り口へと降り立った切り札、火山竜はまずブレスを吐いた。
周囲にある木々が邪魔だったので、燃やしただけである。
地面は高熱により融解し、マグマのようにドロドロに溶ける。
しかしそれは火山竜にとっては快適な環境であり、これからの戦いに備えての休憩のようなものであった。
「グオオ~グルルル~♪」
竜は歌いながら洞窟への道を焼き尽くし、洞窟の入り口へと首を突っ込んだ。
そして――――ブレスを吐いた。
◇◆◇
「謎の攻撃により一階層の魔物が全滅!ガーゴイル、ゴーレム系統は機能停止!」
「ああ、DPが!DPが無駄にぃ!ユカリ様に怒られる...」
部下の報告を聞いた途端、静謐な女王と言った雰囲気を装っていたダークロードバットは床に倒れ、泣き出した。
慌ててキラーバットたちが群がり慰める。
「マスター、我々に責任を押し付ければ良いのです」
「全員で謝れば何とかなります!」
それを聞いたダークロードバットは即座に復活し、
自分に怒られる未来は回避できると言い聞かせて立ち上がった。
「3姉妹はどこ?」
「もう既に2階層に配置されております」
「予備のガーディアンゴーレムを1基出して」
「了解しました」
ダークロードバットはガーディアンゴーレムと共に出撃する。
ガーディアンゴーレムは通常のゴーレムと違い浮遊して動くのだが、その肩にちょこんと乗るのがダークロードバットのひそかな楽しみであったりする。
ダークロードバットとガーディアンゴーレムが地下2階層へと昇ると、そこには既に蝙蝠へと戻ったキラーバットたちと3姉妹が待機していた。
「さあ!やるわよ」
「頑張ります」
「..................ドラゴン、美味しい?」
キラーバットたちも天井に張り付き襲い掛かる姿勢に入るが、ダークロードバットはそれを手で制止した。
「私が仕留める。3姉妹は足止めを」
「なっ、それは...あまりにも危険です」
「私が仕留めないと”グランドマスター”に力が渡らないの」
「なるほど...了解しました」
ダークロードバットはそう言うと、1階層からやってくる火山竜に備えた。
レア...つまり俺は今、人生最大の戦いに身を投じていた。
もっとも、俺自身が戦うのはダンジョン最奥部まで踏破されたらだけどな。
腐っても古代ダンジョンなので階層は全部で10階もある。
DPにも余裕はまだまだある。
俺自身が出る必要も...無いかもな。
何しろ俺があいつらの出元のダンジョンに送り付けた火山竜、あいつは俺のダンジョン産の魔物じゃないからな。
数か月前、俺が出会った人間とも、魔物とも皆目見当のつかない男に貰った強力な魔物だ。
アレなら確実に俺のダンジョンが攻略されるより先にコアごとダンジョンを焼き尽くしてくれる。
俺は戦況を再び確認すべくモニターを覗いた。
戦線はどんどん押され、今は地下3階まで降りてきていた。
地下3階はマグマの煮えたぎる湖で、小さな足場を渡りつつ襲ってくる火系の魔物と戦う難関エリア...難関...のはずなんだが...
『ま、マスター!あいつら空を!空を飛んでて!フレイムファイター達も攻撃してるんですけど...片っ端からガーゴイルとサキュバスたちに撃墜されてて...レッドスライムの溶岩液も効果が無いようです!マグマスライムは直接攻撃が主体なので攻撃が当たりません!』
通常のゴーレムとは違い浮遊して移動するガーディアンゴーレム、元より浮いているガーゴイル、同じく空を飛べるサキュバスには意味が無いのであった。
だが、大人しく突破させるわけにもいかない。
『ウゴアアアアアアアァァァァ!』
突如溶岩から巨大な影が飛び出す。
マグマスライムの完全上位種、ラーバスライムだ。それも俺が『餌』を与えて進化させたグランラーバスライムである。
こいつは〈分裂〉、〈増殖〉というスキルに、身体の全体が破壊されないと死なないという種族特性まである。これなら...
『あらお姉様、厄介な魔物が出てきましたわ』
『本当ね。まあ、この程度なら――ブリザード』
『そして、あたいがブッ砕く!』
ダメだった...全く足止めにならなかった。
グランラバースライムはたったの1秒で氷の塊と化し、乱暴そうな3人の中で一番小さいサキュバスの持つ戦鎚によって粉々にされた。
凍り付いた時すでに命尽きていたので、バラバラになっても復活したりすることはない。
仕方なく俺は自分のダンジョンを幹部のリザードマンに任せ、火山竜の方へと注目する。
火山竜は”ユカリ謹製魔改造ダンジョン”の地下2階へと辿り着いていたようだ。
まあ、奴の鱗を貫ける罠など存在しないし、地形はすべて破壊すれば終わりだ。モンスターはブレスを吐くだけで即死するしな。
火山竜は、悪魔系らしい3人の戦士と相対していた。
モニターを見る限りでは天井の鍾乳洞に蝙蝠系モンスターが複数潜んでるな。
そして、3体の悪魔のかなり後方には同じく人化したであろう蝙蝠系のモンスターがふんぞり返っている。
「潰せ」
『グラァ!』
こんな戦力しか残っていないのであれば、纏めて潰すまで。
俺がそう思い支持すると、火山竜は当たり前だと言わんばかりに短く鳴き、ブレスを放つ態勢に入る。これで終わりだな。
しかし。
『ガアアアアァ!?』
「我らの急降下攻撃、見くびってもらっては困るぞ!」
突如、天井からばさりと飛び降りた4体の蝙蝠が人化し、その手に持った槍で火山竜の首元――—鱗の継ぎ目を貫いたのだ。
予想外の攻撃にブレスは中断されてしまう。
さらに...
「ッ!火山竜、目を瞑れ!」
『グルァ!?』
モニターから何かが光るのを見た俺は火山竜にそう命令する。
火山竜は一瞬でその意味を理解し、目を硬い皮膚である瞼で覆う。
直後にそこへ矢が突き刺さる。勿論目には何のダメージも無い。
『やっぱり、指示してる奴が裏にいるっぽいですね』
天井から人化した蝙蝠が羽を羽ばたかせながら降りてくる。
その手にはクロスボウがあり、それで火山竜の目潰しを狙ったのだと理解できる。
それだけではなく...
『隙あり...です』
『グッ!』
『あはは、この鱗硬いわ...』
『倒したら何か貰えると嬉しいのですが...』
気づけば、火山竜の顎下のあたりにある鱗と鱗の隙間に剣を差し込まれていた。
それをやったのは、火山竜が目潰しを防ぐため目を瞑り、一瞬視界を失った
隙に音も立てずに動き、真下へと潜り込んだ3人の悪魔系のモンスター...
◇ワルキューレ《騎士》 Lv666
◇ワルキューレ《盗賊》 Lv663
◇ワルキューレ《重戦士》 Lv622
戦乙女であった。
だが、火山竜のレベルは1000。こいつらでは相手にもならない。
大したことはあるまい。
「振り払え」
『グラアァァ!』
火山竜は前足を激しく振り回し、戦乙女達を追い払おうとする。
だがそれは殆ど当たらない。...いや、当たらないのではなく避けられているのだ。
そしてその大ぶりな動作の隙を突き、戦乙女達は攻撃を次々と叩きこむ。
それが数分間続き、火山竜でもダメか...と思った時、
『グルルルル...ガァア!』
『おっと、これは厄介な...皆様、離れてくださいまし!』
攻撃が当たらないうえダメージがだんだんと蓄積していく状況にプライドを傷つけられたのか、火山竜が”切り札”を使う。
全身が発光し、鱗が赤から黒に変わり、鱗の間を溶岩が流れ出す。
これは火山竜の”切り札”、〈活発化〉だ。
火山が噴火するときのように、一時的に全身の魔力を活発化させ自身を強化するスキルで、
これがあれば奴等も手出しは出来ないだろう。安心してブレスが吐ける。
そう思っていたのだが...
『...3姉妹、下がって』
『...しかし!』
『まだ盗るもん盗ってないのに!』
『わ、私のおやつ代が...!』
奥で先ほどから動かずじっと戦闘を見つめていた明らかな上位種と分かる蝙蝠の魔物。
それが声を発した。
当然、3人の戦乙女は不平を述べるが、直ぐに黙る。
戦乙女を狙う天井の蝙蝠に気が付いたのだろう。
「火山竜!全力であの女を狙え!あれはヤバイ!」
先ほどから戦闘を見ていたが、あいつの周囲だけ空気が揺れていなかった。
あれだけの高熱で当然陽炎があちこちに発生していたのに。
さっきは気にも留めなかったがよく考えてみると相当ヤバいのは確かである。
『グラアアアアッ!』
火山竜が全力で、女に向けてブレスを吐く。
さあ、弾く?受け止める?それとも躱す...?どれをするんだ?
次の瞬間、微動だにしないそいつが何をするのか気になった。
まさか、最後まで動かないつもりか...?
『愚か』
『ガアアァァァァアアァ!?』
は?
ブレスが女に着弾する瞬間、女の姿がぶれた。
そして間髪入れず、火山竜が全身から溶岩を噴き出して地に伏す。死んだようだ。
何が起こった?
俺には全く分からなかった。
ダメだ、レベルが違う。
今までの奴らも充分にLvだけではないそもそものレベルの差があった。
だが、こいつは何だ?
俺は恐怖を感じつつも、火山竜に最後の命令を下す。
「自爆しろ」
『ガオオオ!』
ドガアァァァン!
火山竜は大爆発を引き起こし、辺りを溶岩と炎で覆いつくす。
そこに俺はテレポートしようとする。
今の自爆は配下を遠ざけるため。
仕方がないので、俺は単騎で奴と戦う。
火山竜はやられてしまったが、まだ俺がいる。
ダンジョンが踏破される前に、俺が敵のダンジョンの最奥部へとたどり着けば俺の勝利だ。
テレポートの光が俺を包み、次の瞬間俺は奴等のダンジョンへと飛んだ。
炎と、溶岩。
視界すべてを埋め尽くす光景はアグニム火山でもよく見る光景である。
ただ、俺の真正面に立つ女を除けばの話である。
「おや?化身自らのお出ましですか?」
「うるせー!俺はお前に勝たなきゃなんねーんだ!」
ダンジョンコアの化身は必ず何かの魔物となる。
奴が蝙蝠系なら俺は...
俺の全身が炎と化し、床、壁、天井全てを覆いつくし突き進む。
ここを突破すれば...
「...やはり、どこまでも愚かですね」
女が微笑み、ローブを捲った。そこから闇が溢れだし、俺と同じく全てを覆いつくし始めた。俺が隙間を抜けようとする前に、前後左右、全てが闇に呑まれてしまった。
「なっ...」
「おやすみなさい、炎の精霊さん」
「お前、俺の種族を――」
女が迫ってくるが、身体が動かない。
気づけば、俺は意識を失っていた。
そして、闇だけが俺を包む。
ダンジョンバトルは負け、僕のダンジョンは完全な支配下に置かれてしまった。
もっとも、悲しむべきことなど何もない。僕のダンジョンは支配下に置かれたが、
今まで通り運営していいということであった。グランラーバスライムやフレイムファイター達以外の魔物は無事であったし。
だが、僕はあの時の少女の力を見て改心し、乱暴な態度を止めたのだった...
もう二度と、彼女に逆らってはいけないと心に誓った。
そして、恐ろしいまでの力を持つダークロードバットのマスター、彼女が崇拝し、それに怒られるのを心底嫌う存在である”ユカリ”という人物を深く崇拝するのだった...
◇ダークロードバット《異常種(削除済み)》 Lv1350
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