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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都学院編

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Ep-S3 ダンジョンバトル!(前編)

ユカリは後々ダークロードバットと会うまでこの話を知りません。

俺の名は....俺の...名は...そうだな、仮にレアとしておこう。

俺はアグニム火山ダンジョンのコアの化身であり、守護者だ。

誕生してから300年経ったが、それまで差し迫った危機は殆ど訪れなかった。

強いて言えば勇者っぽい凄まじい力を持った奴が突然現れて、ここがダンジョンかどうかを執拗に調べていた時だった。あの銀髪の男は元気だろうか...?

...話が逸れたな。今、俺のダンジョンは、いや、俺は死の危険を感じていた。

何故なら...


ドドオォォン!


俺の視線の先のダンジョンを映した画面から、轟音が鳴り響く。

それと共に画面を横切るように千切れた火竜の尻尾が吹き飛んでいく。

何だこれは...何なんだこれは...

俺は今まで危険を感じず、少し調子に乗っていたのかもしれない。

だが、恨まれるようなことをした覚えも無いし、何一つ外に干渉はしていないはず。

なにより...”ユカリ謹製魔改造ダンジョン”などというダンジョンを、今まで俺は一度も聞いたことが無かった。


◇◆◇


あれは数時間前の出来事だった。

突如、ダンジョンの管理メニューに[侵攻]という内容が表示されたのだ。

どうやらこのダンジョンを他のダンジョンが攻撃するらしい。

馬鹿な考えだ。...と俺は思った。

何故なら、相手のダンジョンの名前を知らなかったからだ。

俺はたまに人の姿を利用して外界に降り、他のダンジョンの名前や魔物の出現傾向などを探っている。人間にやられることは無いが同じダンジョンにやられて死ぬことはあると、本能に刻まれていたからである。


「無名の雑魚ダンジョンが俺様の相手か...捻り潰して、逆に侵攻してやる」


そう、ここでダンジョンの魔物を全滅させると、相手のダンジョンは手薄になるのだ。

サラマンダーを一匹差し向けてやれば奴等はブレスの一発で灰と化すだろう...

そんな甘い考えで勝負に挑んだのだが...


「な、ブレスが効かない...!?何だこいつらは!」


サラマンダーと火竜(フレイムドラゴン)が頑張ってブレスを吐くが、先頭にいたゴーレムには全く効果が無かった。慌てて種族を見ると、そいつらはうちのダンジョンのカタログにあるようなゴーレムではなかった。


◇ガーディアンゴーレム Lv.350


つ、強すぎる....

俺はそれを見た瞬間、へなへなと頽れた。

火山ダンジョンの最高レベルは110。

元より勝てる相手ではなかったのか...


「い、いや。まだだ...!ゴーレムのレベルがいかに高くとも、ゴーレムの攻撃ではサラマンダーと火竜の俊敏さを上回れない。出ろ!」


俺は溶岩の中からフレイムファイターを呼び出し戦わせる。

フレイムファイターは文字通り炎の塊のような姿をした戦士だ。

そいつらが焔の剣や槍を駆使してゴーレムをドロドロに溶かすのだ。

いかにレベルが高くとも、素材の耐久性までは上げられないだろう!


「ゴオオオオオオ!」


フレイムファイターが飛びかかり、ゴーレムの肌?を切り裂いた。

やった!やはり元になっている鉱物の”融ける温度”までは変えられないか!

これは突破点と成り得ると信じた俺は、フレイムファイターどもをどんどんぶつけた。

そしてゴーレムは次第に溶解していき、動きが鈍くなってきた。


「行け!やれ!」


気づけば俺は拳を振り、戦うフレイムファイターを応援していた。

フレイムファイターは振り払われたり、殴られたりと次第に数を減らしていくが、着実にゴーレムを無害化することに成功していた...はずだった。

俺がぬか喜びに浸っているとき、


「ゴオオオオオオ!」


ゴーレムが咆哮を上げ、その体が虹色に光り輝いた。


「今度は一体なんだ!」


虹色に輝いた身体は流動し、融けて固まった身体を元に戻していった。

そして、再び先ほどのような勢いで纏めてフレイムファイターを吹き飛ばしてしまった。

だが、フレイムファイターはまだ沢山いる。そいつらを投入すればいい。

今のような大技はそう何度も使えないはずだ。

そう信じてフレイムファイターを投入したが...


バシュバシュバシュ!


突如、ダンジョンの入り口からおびただしい数の氷の塊が飛んで来た。

それらはフレイムファイターを消滅させ、サラマンダーと火竜に致命傷を負わせた。

地面に着弾した氷はバキバキと音を立てて地面に氷を張った。

恐ろしい威力だ...この高い気温のなか、熱されてまともに触れれば人間では致命傷を負うほどの床を一瞬で凍らせてしまうとは...


「一体、何だって言うんだ!」


俺が入り口方面に視点を向けると...

そこには、


「あら...?マスターが心してかかれ、と言ったわりに苦戦してないわね」

「・・・・・・・」


妖艶な、しかし角と羽を持った美女が3人と、不気味な造形の悪魔を象った石像が3体浮いていた。

氷を放ったのは石像のようだ。

種族を確認すると...


◇アダマンタイトガーゴイル Lv.550


◇サキュバスロード Lv.280


ダメだ、勝てない...!

俺は敗北を悟った。

アダマンタイトってなんだよ!知ってはいるがカタログにも現れたことのない伝説の鉱物だ...それに、サキュバスロードだと...?

完全に未知の階級を持った悪魔だ...

俺はすべての面において敗北したことを悟った。

だが、ここで大人しく降伏してはダンジョンコアの名折れ。

俺はダンジョンの総戦力を入り口へと結集させた。

そうだ。如何に凄まじい力を持っていようとも所詮はゴーレムが2体に、ガーゴイルが3体、脆弱な人型のサキュバスロードが3人!大勢で罹れば如何様にもできるはず。

そんなことを考えながら、俺は上部...

火口から虎の子である魔物を飛び立たせる。


「...今戦力がここに集中してると考えれば、本拠地は手薄だ。多分、そこまで大きなダンジョンではないはず。我がボルケーノドレイクならばダンジョンごと消し飛ばせるはずだ」


淡い希望を託し、火口から巨大な影が飛び立っていくのを俺は見つめた。

頼んだぞ...


◇◆◇


”ユカリ謹製魔改造ダンジョン”奥地にて、ダークロードバットは目を開いた。

それを目ざとく見つけた護衛のキラーバットが問う。


「マスター、何か?」

「...来る。強大な存在が」


それを聞いた瞬間、ダークロードバットであるマスターにして群れの長と同じく翼を畳み、目を閉じていた他の部下たちも目を開く。そして命令を待った。


「強大な、とは如何ほど...でしょうか?」


恐れ多くも...といった風に先ほど発言したキラーバットの1人が尋ねる。


「...ここにいる全員が出る価値もない雑魚。ただ、ダンジョンの魔物だとちょっと苦戦するかもしれない」

「では、ダンジョンの魔物を退避させます」

「それと」

「はっ、何でしょう」

「私が出る。護衛に悪魔系を付けて」

「了解しました。我々も蝙蝠に戻り各所に展開します」

「わかった。手出し無用」

「...危ない時にはお助けします」


そう言った会話の後、その場は騒がしくなる。

かつてユカリとダークロードバットが話した時よりも拡大化したダンジョン。

そこの魔物を分割して命令することで奥に待機させる。

さらに、命令に従ってダークロードバット直々に育成した悪魔、戦乙女(ヴァルキリー)の三姉妹を呼び出す。


「何か用ですか?」

「ふあぁ...怠いわ。マスター、早く終わる用件ですか?」

「......................おかし、食べたい」


3人のとても主人に向けるものとは思えない振る舞いを見て、キラーバットたちが眉を顰める。先ほどダークロードバットに話しかけたキラーバット...主人よりエーゼの名を戴いた男がダークロードバットに問いかける。


「マスター、本当にこの3姉妹を出すのですか?」

「心配ならエーゼ、お前も付いて来て」

「...了解です、マスター」


一通りの会話を終えたダークロードバット達は、出口へと向かったのであった。


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