Ep-62 悪夢の中で(前編)
忙しくて書いたので前半ちょっとおかしいですが許してください。
数日後。
俺は学院のテラスでジュースを飲んでいた。
眼下に広がる校庭では...
「私が会長を続投した場合、生徒の規律を正し、更なる風紀の乱れの拡大を阻止します。例としては———」
「俺が会長になったら、貴様らを最強へと押し上げてやろう。教育委員会に声をかけ今までよりも効率的なカリキュラムを組ませ、毎日たったの4時間学習を続けるだけで...そうだな、この国の王宮魔術師、王宮騎士くらいの剣と魔法の腕前にしてやるぞ!」
「わ、私は———」
「僕は...もう言うことはありません...」
選挙活動をする立候補者たちがいた。
それでだ、何故リンドヴルムが居るかと言えば...
俺が生徒会長に立候補したと言ったとき、
「何!?学院に少しでも干渉できる役職だと?我も立候補しよう!」
と言い、その日のうちに立候補の申請を済ませてしまったのだ。
今は目の前で大演説をしている。
メリアもリンドに負けじと自らの公約を掲げ、例を挙げようとするのだが、
リンドの声がデカすぎてどうやっても声は届かない。
ここに俺が出て行ったらどうなるんだろうなあ...?
俺はジュースの残骸をインベントリに放り込み、校庭へと飛び降りた。
◇◆◇
校庭に俺は着地する。
ここがトラックなら凄い砂埃が立って服も汚れただろうが、
生憎芝生だ。
リンド対メリアの激しい舌戦を呆然と見つめていた生徒たちの一部がこちらへと振り向く。
「私が会長になった暁には...生徒の自由を大きく認め、風紀の乱れを多少容認する。勿論、私に告白したい者が居れば無許可で告白しに来てもいい環境を作る」
私、可愛い?的な条件だが、今までの生徒たちの反応からして行けると思うんだが...
どうなんだ?
何も考えてなかったので、口を衝いて出た言葉だったんだが...
「ユカリさん、風紀を乱すような発言は慎んでくださいね。皆さん、安心してください。こういう人を排除するために生徒会はあるのですから。ぜひぜひ私に投票を———」
「うおおおおお!ユカリさん、付き合ってください!」
「馬鹿野郎、俺が先に告白するんだ!」
「むさい男どもにユカリは渡さん!勝負だ!」
「ああっ!お姉様!抜け駆けは駄目ですよぉ!」
あたりが静まり返り、失敗したか...と思う中メリアが喋るのをじっと聞いていた俺だったが...現実に戻ってきたらしい上級生の男子が俺に告白してきた。
生徒会長の座に着いたらね、と宥めようとした瞬間、何十人もの集まっていた生徒が次々と俺に殺到してきた。
女生徒もいる!?百合はやめてくれ...
それだけではなく、どさくさに紛れて俺に抱き着こうとする輩も居るようだ。
何十人もの人間がこちらに...タックルしてくるのか。
ステータス的には何の変化もないが、絶対痛いし精神的ダメージも凄い。
俺は逃げようとしたが、よくよく考えると後ろはただの壁だった。
よく考えずテラスから飛び降りた結果がこれか...
俺が最後に見たのは殺到してくる抱き着き魔を押しのけて進むクレルだった。
「むぎゅ」
俺は殺到する抱き着き魔達に飲み込まれた。
「...はっ!?」
...と思ったのだが、どうやら夢オチらしい。
いくら何でも学院の生徒があんな変態どもなわけないよな。
にしても...なんでこんな夢を見たんだろうか...
俺は自分が何故そんな夢を見たのか気にしながら、再び眠りへと就いた。
しかし、今度は何故か意識がハッキリとしていた。
それだけでは無く、全身に冷気を感じた。
「なんだ…?」
おかしいと思って目を開けると、既にそこは寝室では無かった。
不思議な話だが、現に目の前に広がっているのが現実ならば信じざるを得ないだろう。
「何だって、こんなところにいるんだ…?」
俺は巨大な空洞の中に立っていた。
空気はひんやりとしていて、夢とは思えない。
というか、これって夢なのか?
どう考えても寝てる間にどこかに飛ばされたとしか考えられないな。
そういうことで現在位置を確認しようとメニューを開いてみたのだが…
《?????????》というふうに伏せ字となっていた。
「伏せ字になってるってことはここは元のゲームのシステム外、ということになるんだが…」
周囲を見た所、別に出口も無いし目覚めるのを待つしか無いのかな?
と思ったので、ここで出来ることを試してみることにした。
「テレポート!ポータルアロー!」
転移系ならここから出られるのでは?
と思い試してみたが、テレポートは不発でクールタイムに入り、ポータルアローは矢だけが壁に突き刺さった。
次は、スキルについて。
「クラフトウェポン!ブロードソード!…お、普通に使えるな」
夢の中?なのでスキルが使えるか心配ではあったのだがどうやら問題ないらしい。
空転術やエアー系のスキルも問題なく使えた。
しかし、スキルを試している最中に問題が起こったのである。
「空転・雷動!空転・跳躍!空転・影月…っとまだ使えないんだった…?あれ?」
まだ使えないはずの空転・影月が発動したのである。
空転術はレベルアップとともに解放されていくスキルであり、中でも影月はレベル600を越えなければ絶対に覚えられないはず。
まさか、この空間では知ってるスキルなら何でも使えるのか…!?
それに気付いた俺は、思いつく限りのスキルを発動してみた。
動物に変身できるスキルや他者に変身できるスキル、大きな代償を支払って発動するスキルなど。
特に最後の奴はスキルを意識して制御すると代償を抑えられるということにも気が付いた。
そんな感じで楽しんでいると、突如何かの気配を感じた。
「…なんだ!?」
俺が叫んだ途端、
ゴゴゴゴゴ…と、大きなものが動くような音とともに奥にあった岩が上にずれて道が出来る。
そこから、2人の人影が現れた。
「おやおや、どうやら何とか出ようと頑張っていたようですよ?」
「自身に有利な場所で戦うのは、何とも決闘者らしく無い姿勢だが…一度負けた以上手段は選ばない。」
今度はしっかりと顔が見えた。
この間、闇夜に紛れて俺を襲ってきた剣士、アラドだ。
隣にいる恰幅のいい男は知らないが、まあ100%敵だろう。
「何が目的?」
夢とはいえ他人が相手なので、いつもの口調に切り替え尋ねる。
すると恰幅のいい男の方が答える。
「失礼しましたな。私の名前はオルド…せめてこれから死ぬ貴女に最大限の敬意を払って接させていただいております」
「そういうことだ。では、参る」
オルドが挨拶を済ませると同時に、ほぼノータイムでアラドが突っ込んで来た。
クリエイトウェポンで創り出した剣で受け止める。
ガァン!
アラドの筋肉が膨張し、剣も妖しい光に包まれる。しかしそれでも、俺の構えた剣は動かない。
「…くっ!?」
「…オォ!」
俺は思い切り力を込めて、地面を蹴る。
そして剣ごとアラドを弾き飛ばす。
「おい!オルド…」
「…何ですかな?」
「前情報と違うのだが」
「何を言っているのですかな?すべて事前情報の通りですが」
「何を言っている!夢の中ではスキルが使えないと言ったのはお前だろうが!」
「ええ。ですから、想像力で補え…私はそう言いましたが」
そう言うとオルドは右手を翳す。
そこから水が噴き出し、鳥の形になる。次の瞬間鳥は凍りつき、ジュッと音を立てて霧散した。
「こういう風に…ですな」
霧散した後、霧はどんどん大きくなり…
再び凍結し巨大な氷の鳥となった。
「想像力で補う…か」
アラドそう呟くと、その体が薄く朧げになる。
そして、次の瞬間10人に分裂した。
「「「「これはいい」」」」
俺の眼前に、巨大な氷の鳥と、10人に分かれたアラドが映る。
…夢の中での戦いが始まった。
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