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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都学院編

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side-S2 王宮暗部の憂鬱

今後の辻褄合わせで忙しい中書いてるのでちょっと雑です。

意味不明なところがあったら感想で教えてください。

(11/2)ジルベールを王子、別に王様を追加しました。

どうも、クリフだ。

今日は王宮に来ている。

同じ組織の...名前は知らない2人も一緒だ。

どうも、話を聞くところによれば...


「俺はユカリって奴の冒険者実績について調べさせられてたんだ。ギルドの上役共は全員俺に頭が上がらねえからな」

「僕は学院に潜入してユカリという生徒の成績記録や日常の様子を調査しました」


と、俺と同じ調査対象のようだった。

しかし、暗部の精鋭を3人も使って王宮は何がしたいんだろうか...

確かにAランク、Sランク級の冒険者の確保は帝国から国を守るためには急務だが、

俺が調査したこの女にそこまでの価値があるとは到底思えない。

しかし、俺はその疑問を呑み込む。

王の命令に疑問を抱くのはいつだって反逆者だけだ。


◇◆◇


俺たちは王宮騎士の先導に従って王宮を歩く。

流石は王国の王宮で、立派なものである。

しかし、他の2人は楽しむ余裕などないようだ。

ま、こういう畏まったところは俺も苦手なんだがね。


「クリフ殿、もうすぐ謁見の間で御座います」

「...何故俺に?」

「他の2人方よりは余裕がありそうでしたので」

「なるほど」


王宮騎士が突然俺に喋りかけてくる。

お堅い役人風の男かと思っていたのだが、案外話せるもんだな。

同じ国に仕える者同士だからか?

俺様はこの中じゃ一番余裕があるそうだ。

少しいい気分になりつつ、階段を1つ上がり、しばらく進むと大きな扉の前にたどり着いた。


「しばらくお待ちいただきたい。ここの扉は魔法機械で、内側からしか開けられぬのです」

「わかった。...一応聞いておくが、壊されるようなことは無いのだろうな?」

「聞けばこの扉は重アダマンタイト合金製だそうです。壊れることはそうそうありません」


ふむ、アダマンタイトと言えば伝説の金属じゃないか。

確かにこの謁見の間より先は王と王の家系のものが住む区画。

そこを守るこの扉に財を投じるのは当たり前かもしれないな、と俺は感じた。




しばらく待つと、扉がギギギ...と轟音を立てて開く。

その音は王宮中に響くほど大きかった。

そして、扉が完全に開いた先には広大な空間があった。

王宮暗部の本拠地にもここまで広い部屋は無い。

教会ならこれくらい大きな部屋くらいあるだろうが...

そこには階段..といっても3段位しかないが、階段がありその上に座り心地のよさそうな椅子がある。...あまり座るものには頓着しない質だが、ああいう椅子には一度座ってみたいもんだな。そう思いつつ、俺たちは部屋の中心、階段の真下あたりへと歩いていく。

階段から少し離れたあたりで俺たちは制止された。

ここなら誰かが乱心しても王子が殺されるようなことも無いしな。

その前に騎士に止められる。


「ここでお待ちください。もう直ぐ殿下が来られるはずです」


騎士は俺たちにそう言い、俺たちの傍に控えた。

もう直ぐというのは全く信用できなかったが、以外にも王は約束通り直ぐに来た。

3刻砂ほどだろうか?それに何だか目を輝かせているような...


「お前たち、よくぞここへ来られた!さあ、容姿端麗にして文武両道であるまさに才色兼備であるという冒険者ユカリの話を訊かせてくれ!」


あ...

俺の心は呆れに包まれた。

公務の時間を割いてまで、しかも暗殺の危険さえあるというのに暗部と謁見を開き、

訊くことが好みの女のことかよ...

別にユカリ嬢の話を聞いても結婚できるわけじゃないんだから落ち着けよ...


「失礼ながら殿下、行事には順序というものがありましてですね...」

「ジルお兄様~!ユカリさんのお話を訊かせてくれる人とはこの人たちですか?」

「テルゼ様!人様の前で走ってはいけません!」


さらに、謁見の間に王家の女性とは思えないはしたない走り方で乱入してきたのは第...第...えーと第何王女だっけな...のテルゼ様だ。

お転婆な性格で知られていたがまさかここまでとは...

俺は呆れつつ、冷静を装って発言する。


「恐れながら...報告を始めさせていただいても?」

「良い。それよりもユカリの話をする時は私に敬語を使う必要はない!友人のように語ろうぞ!」

「陛下。我々は殿下と談笑するためにここにいるのではありません。陛下がお求めのユカリという人物について正確に報告するために来ているのです」


王子に向かってそんな言葉を言ったのは、俺の隣にいた冒険者ギルドで調査をしていた男だった。王子は少々無礼ともとれる発言を無視し、言った。


「では、お前の調べて来た冒険者ギルドでのユカリについて話すがよい」

「大した情報はありませんでしたが、2つ重要な情報があります。」

「ほうほう」

「1つは、ユカリは個人での冒険者ランクを所有していません」


それは俺も驚いた。

ユカリに戦闘力がはっきりとあるならば、単身でC,Bランクくらいまで獲得していてもおかしくないはずだ。しかしユカリは何故か冒険者登録をせず、最近になって仲間と共に冒険者登録をしてクランを結成している。


「2つ目は何であるか?1つ目に勝る情報など考えつかないが...」

「ユカリは冒険者登録をしてから、複数の希少な素材を持ち込んでいます。空鯨の尾びれ、古代樹の枝、海竜の鱗、オリハルコンの塊などです。」

「何!?それはまことか?」

「はい。確かに冒険者ギルドの売却目録に入っています。ギルドマスターが「貴重な素材ばかり持ち込んでくるせいでギルドの金庫は大ピンチじゃ。オークションで儲けを出すしかないのう...」と嘆いていました。」

「それはそれは...可哀想なことだ。ユカリが触れたというだけで充分に素材として価値がある!私のポケットマネーで買い取ろうぞ!」

「流石はお兄様!私もお小遣いで海竜の鱗を買いますわ!」


王族の2人はそう宣言した。

王宮騎士とはいえ他人がいる前でそういう事を王族が言っても良いのだろうか...

しかし、そんな疑問を口にすれば俺はこの場で縛り首だろうな。

王は気軽に接してくれと言っているのだからもしかすると許されるかもな...

とか考えていると、王のそばで控えていた騎士が、


「...ジルベール殿下、民の目の前で御座いますよ」

「おっと、すまない」

「ごめんなさい、オスカー...」


と言った。

騎士の名前はオスカーと言うのか。

これ、俺達は消されるんじゃないか?

そんな心配を残しつつユカリ嬢の学院での様子について調査をしていた男の番だ。


「それで、ユカリの成績や交友関係はどうなのだ!?」

「あの...恐れながら、殿下に御質問があります」

「なんだ?何でも聞くがよい」

「ユカリ...様はあなたの一体何ですか?陛下とユカリ様はまだお会いしていないのでしょう?」


それは俺も気になってた。

ただ強いだけならここまで執着する理由もない。

幼少期に会ったとかそういう話も聞かない。

じゃあ何でここまで拘るんだ...?


「簡単だ!ユカリの似顔絵を見て確信したからだ!彼女こそ私の愛人に相応し...グペッ!」

「ジル兄様、私のお喋り相手に相応しいと...」

「待ってよ!ユカリちゃんは私のものなのー!」


王子が情熱的に叫び、

それにテルゼ様が反論しながら頭を叩き、

後ろの扉から新手...おそらく一番下の...十七王女?のハンナ様だな。

が現れて叫んだ。

王族からここまで慕われるとは、ユカリ・フォールの人望や恐るべし...だな。

いや、会ってもいないのに人望もクソもねーか。

話を聞いてやはり理解できなかったようで、無理矢理自分を納得させたであろうあいつは、咳払いをして報告を始めた。

...こいつ、ダメな所ってあるのか?

数学以外は全部満点か90点台とはな。花嫁修業である家庭科などは不得意のようだがそれすらもきちんとこなしている。

あながち、テルゼ様のお喋り相手にはピッタリかもな。テルゼ様は秀才で、国の司法試験に合格している。それ故中々話し相手が見つからず、今にも王家から飛び出しそうな勢いである。平民ならテルゼ様と釣り合う方は少数だがいるからな。

そんなこんなで、報告は終わり俺の番になった。


「最後はお前か、クリフ」

「ッ!?殿下、何故俺のような影の名前を!」

「決まっておろう。お前が最初に持ってきた似顔絵、とても上手であったぞ?」


あれ?

あれって俺が描いたんだっけ?

まあいいや。


「さて、殿下はもうご存じでしょうが、ユカリ殿は貴族です」

「ほう?初めて聞いたな」

「...報告書はお読みになりましたか?」

「読んだが、別にそのようなことは書かれていなかったぞ。」


おかしいなぁ...?

似顔絵もユカリについての身辺の情報も陛下に伝わってない?

まさか、上司てめぇ俺の報告書を改竄しやがったのか?

有り得る...あの守銭奴なら有り得る...重要な情報だけを後で自分名義で出したとしても全く怪しくない!...でも似顔絵はさすがに因果関係が分からん。


「...まあいいでしょう。ユカリ殿はエルドルム地方フォールランド領の領主フォール家の生まれです」

「フォール家というと、ソウジロウ・アキヅキ殿が婿の?」

「...?はい、そうですが...」

「そうかそうか!我が父はトーホウ地方へ遠征したとき、若きソウジロウ殿に命を救ってもらったのだ...まさかそんな大恩人の娘がユカリだとは...」

「殿下、それは真ですか!?直ちに褒章の準備をしなければ...」

「駄目だ。我が父はソウジロウから事を大きくするなと言われている。」


まさかそんな辺境に王の大恩人がいたとは...

その件を表沙汰にすれば殿下はユカリ殿と婚姻できるだろうが、それはソウジロウ様との約束を破ることになるだろう。それがユカリ本人にとって幸か不幸か...それは俺には分からない。


「だが、報告書にそれを書かなかったのは何故だ?」

「確かに書いたはずですが、何者かに改竄されたようです。似顔絵も私が描いたものではありませんので...」

「ふむ、そこは要調査であるな。我が騎士たちに調べさせよう」

「はっ!直ちに調査を開始します」


王子が呟くと、部屋の端に目立たないように控えていた他とは違う金色の鎧をまとった騎士が後ろの扉へと消えていった。


「さて、御足労感謝する。本当はユカリの話を聞かせてくれた礼に勲章でもあげたいのだが、それも叶わぬ。なのでせめて昼食でも食べて行ってくれ」


全ての報告が終わった後、

俺たちに王子は昼飯を奢ってくれた。

前に連れて行ってもらった高級店とは隔絶した美味さだったとだけ言っておこう。


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