Ep-58 ダンジョン経営(前編)
epが付いてて本編扱いですが完全にストーリーと関係のない番外編です。
著者の頭がおかしくなってできた話とでも思ってください
突然だが、今日はダンジョンへ行こうと思う。
勿論1人でだ。他の皆はテスト勉強で忙しいからな...
この世界では多分一度もダンジョンに行っておらず、俺はダンジョンに興味を持っていた。
奥底に行けば行くほど敵が強くなり、最奥部にはダンジョンコアがある。
ダンジョンコアに触れれば[マナ]というアイテムをゲット出来て、マナを多く集めれば集める程自分の能力を強化できる[ルーン]というシステムが存在している。
ダンジョンコアはゲーム時代は破壊できず、攻撃しても特に何かが起こる描写は無かった。
だから、この世界ではどうなるのかを検証してみようとも思う。
「人の多いダンジョンだと迷惑を掛けるかもしれないから...」
王都には5つの大ダンジョンが存在するが、もし核となるダンジョンコアの破壊がダンジョンの崩落と仮定した場合、人の多いダンジョンが崩落すれば大量の死者が出、探索者稼業を生業とする者たちは路頭に迷ってしまう。それだけでなく今までは簡単に手に入った物資の供給が滞り、暴動に発展、果ては争いに...となってしまいそうなので、王都周辺に30以上ある小ダンジョンを攻略することにした。
◇◆◇
俺がポータルアローで転移した先は、鬱蒼とした森の中。
ここに、「薄暗い洞窟」という名前のダンジョンがある。
外見は完全にただの洞窟だが、ちゃんと地下3階まであってモンスターも出現するし、ダンジョンコアもある。今日はここのコアをぶっ壊して検証をしようと思う。
軽く調べた感じでは人の入った気配はないから、誰にも迷惑はかけないはずだ。
洞窟に入った瞬間、天井からぼたぼたぼたっとスライムが3体落ちてくる。
こいつらはダンジョンスライム。討伐適正レベルは10。雑魚だな...
ぴゅーっ!
スライムは俺のほうを向いて一瞬身体をへこませた後、謎の体液をこっちに向かって発射してきた。しかし、それらは俺に当たっても大したダメージは無い。
同人誌みたいに服だけ溶けたりすることもなく(ドレスアーマーじゃなかったら溶けてたかもしれない)、俺は集中砲火を浴びながらスライムに歩み寄り、ズバッと切り捨てる。
〈レベルが20以上離れているため経験値を獲得できません〉
〈レベルが20以上離れているため経験値を獲得できません〉
〈レベルが20以上離れているため経験値を獲得できません〉
うーむ、無益な殺生をしてしまった...
何にもなりえない死か...
そう思いつつ、前進していくと、階段が見えた。
もう地下2階か...と思っていると、上から先ほどより1段階大きいスライムが落ちて来た。
こいつも見たことあるな。ビッグダンジョンスライム、討伐適正レベルは15。
ぐいーっ、ばしゃーっ!
「...びしょ濡れになるために来たわけじゃないんだけどなあ」
ビッグダンジョンスライムは先ほどと同じく体液による攻撃を行ってきたが、
その威力は絶大でまるで消防車のホースから出る水の直撃を食らったようであった。
しかし、全く痛くないしダメージは無いし、ただ濡れるだけなのだ。
エアーダッシュで近づいてまたもやザシュっと斬りつけ、戦闘は終了した。
〈レベルが20以上離れているため経験値を獲得できません〉
...もはや何も言うまい。
無視して進めば良かったかなあ。
地下2階は、蝙蝠や虫が跋扈するエリアで、仲間を連れてきていたら大騒ぎしたであろう場所だった。俺も正直虫は得意じゃないんだよな。
宝箱を開けたらドバっと虫が溢れ出て来た時は泣きそうになった。
だが、それらの攻撃で俺はダメージを負うことは無い。
けれども宝箱ショックでまとめてエリア中をフレイムウィンドで焼き払ってしまった。
レベル獲得制限のアナウンスが頭に響く。
あ、地下2階のボスは大ムカデだったよ。討伐適正レベルは20。ここに本来挑むべきレベル帯の人には強敵だよね。
地下3階にたどり着くと、そこは狭い部屋だった。
部屋の奥には厳めしい扉が設置されており、ボス部屋があると感じさせてくれる。
今までの流れ的に多分出てくる敵は討伐適正レベル30の雑魚だな。
「バースト・クラフトウェポン、竜滅槍」
速攻で倒してしまおう、うん。
ここのボスは確かでっかい蜘蛛だったはず。
俺は覚悟を決めながら扉を潜った。
その先は広い部屋が広がっていて、俺が部屋の中心まで進み出ると扉が閉まった。
さーて、天井から降ってくるのかな?
そう思って待っていたのだが..........
「出て、こないだと?」
そう、30秒経っても何も出てこなかったのである。
おい、早く出てこいや!と思っていると、
「あ、あの~...」
上から蜘蛛とは似ても似つかぬシルエットが降りてきた。
ぱたぱたと大きな翼をはためかせてゆっくりと降りてくるのは...
「蝙蝠?」
「あ、はい!蝙蝠型魔物のキラーバットです!命だけは助けてください!」
あれ...?
このダンジョンには人型の魔物は出なかったし、命乞いってなんだよ。
結局ダンジョンコア壊されたらお前死ぬけどな...?
「誰だ?」
「えっと、あの...ダンジョンコアの化身です」
「は?」
「ですから...ダンジョンコアの化身ですよ...その、ご存じ、無いのですか?」
ダンジョンコアの化身って何だよ...
ゲーム時代は無かった要素だ。
「何それ?」
「...説明しなければならないようなので、させていただきます...」
ダンジョンコアはゲーム時代には謎バリアで守られていてダメージを与えられなかったが、この世界では普通に破壊可能らしい。コアを壊されればダンジョンは当然崩壊するので、無防備なダンジョンコアはダンジョンを管理する自らの化身を生み出すらしい。そして自らの化身を強化しつつダンジョンを改変していくそうだ。
この辺りはダンジョンのモンスターのリポップ、アイテムや宝箱の復活などを現実化に当てはめた結果なんだろうなあ...
「ふーん、じゃあコアを壊すか」
「あー、待って!待ってくださいってば!」
「どうしたの?」
「どうか命だけは!マナもダンジョンの所有権も何でもあげちゃいますから!...なんなら私の身体でも!」
「え!?」
「私の身体でダンジョンが生き残れるなら!」
「いや、いらない」
俺が驚いたのはダンジョンの所有権だ。
ゲーム時代ダンジョンを持つことは絶対にできなかった。
それくれたら見逃してあげてもいいよ?
「ん」
「ん?...ダンジョンの所有権が欲しいんですね?...わかりましたよう。渡さなきゃ殺されちゃうし...ダンジョン権限、譲渡!」
「!...ありがとな」
右手をサッと出し、威圧を込めながら睨むとキラーバットはあっさりと所有権をくれた。
すると、勝手にメニューが開いた。
そして5秒くらい後、メニューの項目に[ダンジョン]という項目が追加される。
さらに、ステータスウィンドウが勝手に開き、下にスクロールする。
するとそこには、〈ダンジョン管理者:Lv1〉というスキルが追加されていた。
自分に〈鑑定〉をかけてスキルの解説を見る。
◇ダンジョン管理者-Lv1
・見習い魔王-Lv1
・ダンジョンコネクト-Lv1
(ダンジョンの管理に必要なスキル。見習い魔王は自分のダンジョンで発生した魔物を従えさせられる。ダンジョンコネクトはダンジョンと常に情報を交換し、メニューの[ダンジョン]からダンジョンの状態や入手マナ、ルーンを確認できる。)
ふーむ、これは新しい力と言ってもいいのかな?
俺はダンジョンメニューからヘルプを開き、詳細を確認する。
その様子を見たキラーバットはへなへなと崩れ落ち、
「命だけは助かった...何もかもを失ったけど」
と呟いたのだった。
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