SEP-04 槍使いシュナの過去
最近の話と比べてかなり重い上に暗い話です。
微グロもあります。
(22/06/08)アーサー家の長女クレアの言及を削除。
俺がアラドとかいう謎人物に襲撃を受けてから3日後...
俺はシュナと話していた。
「よくよく考えたら、クレルはな~んかあんたの事知ってるらしいし、アレックスも一度会った仲なのはわかるけど...私はあなたと何の接点も無いわ!」
「あっ、気づいちゃったか...」
そう、最初から超仲良くしようムーヴで近づいて一緒にクランまで立ててしまったが、
俺はシュナとユイナとは接点もなく、まだそこまで深い関係ではないのだ。
クレルは俺に何かを見出したらしく執着しているし、アレックスは俺の”強さ”を知る仲だ。
だが...俺はシュナもユイナの事も何も知らない。
「だから、私の過去を話してあんたとより深い関係になりたいと思うの」
「え」
え、そういうこと?
まさかの私の過去は安くないのってパターンか。
じゃあ聞いてやろうか...
「私ね、両親を魔族に殺されてるの」
はいアウトォォォ!
ゲームのストーリーではそんなの無かったぞ!
まあ両親は登場してなかったけれどもさ。
「...ごめんね、突然でなんて返していいか分からなかったでしょ?」
いや、あまりに突然の重くて暗すぎる話に戸惑っていただけです。
最近の明るい雰囲気にいきなりヘヴィでダークな話題が入ってきたな...
「優しい人たちだったの。でもね———」
俺は、シュナの話に集中することにした。
ゲームなら飛ばしているだろうが...現実の人間一人に聞いてほしいと想いを伝えられれば、断るという選択肢は最初からないと言っていいだろう。
◇◆◇
シュナはアスランド領の小さな村で生まれた。
無論例に漏れず貧しい暮らしだったが、その生活は幸せなものだったという。
...魔族が村を襲うまでは。
その日、シュナは父から教わった槍術(シュナの父は相当な使い手だったらしく、シュナの母曰くその村の出身ではなかったらしい)を使って狩りに出ていた。
しかし、仕掛けた罠を順番にチェックしていた時、村の方向から耳をつんざく悲鳴が聞こえた。
「...何が起こったのかしら。またセリナお姉さんが虫にでも襲われたのかな...」
シュナは自分の予想を口にしながら次のポイントへと向かおうとしたシュナだったが、
すぐに異変に気づいた。村の方から黒煙が上がっていたのだ。
煮炊きの煙であるはずがない。まだお昼時でも無いのに、村のあちこちから黒煙が上がっていたのだ。シュナは急いで村へと走ったが...
そこで見たのは、自分の母親が無残に殺され他の村人のように地面に転がされている光景と...
「グハハハハハ!キース!早く殺ってしまえ」
「了解です、ガルズライン様」
「...させんぞ!せめて残りの村人だけは...殺させぬ!我が槍にかけて!」
満身創痍で、如何に生活が苦しくとも売らなかった槍を持ち、同じく槍を持った魔族に相対する自分の父を。その後、何度も父と魔族は無言で槍を交し合った。
しかし、徐々に父は圧倒されていく。
魔族と人間では力の差がありすぎるのだ。
そして、シュナが村についてから数分ののち...
シュナの父は無念にも斃れた。
姿を見せれば殺されると言うのに、シュナは斃れた父に走り寄った。
それを見て、父は苦しみに満ちた顔をにやり、と歪ませて笑った。
「...俺はもう長くない。頼んだぞ。———持っていけ」
「お、お父さん!」
「俺が守れなかった村人達は...自慢の娘が守るもんだろ?」
「...わかった!」
シュナは、父が時折話していた話を思い出したそうだ。
かつて、シュナの父はそれなりに知られた槍使いだったそうだ。
しかし、シュナの父は自分の家族や仲間を守れなかったらしい。心も槍も折れた彼は、槍だけをなんとか修理し、各地を流浪していたそうだ。
そして、紆余曲折あって農家に腰を落ち着け、数年たって生まれた娘、シュナに幼少期から体の動かし方や槍の使い方を教え込んだらしい。そして、確信した。
我が娘なら、自分を越えられる。と...
そして、恐れた。だが、同時に戦士である自分の魂の中に喜びを感じた。
二度目の敗北。戦士にとっては致命的なそれだったが、シュナの父は悲観的にはならなかった。自分の槍を持った娘が負けるとは到底思えなかったからである。
父の予想通り、槍を持ったシュナは強かった。
力で圧倒的に勝るはずのキースを圧倒し、完全に自分のペースで勝負を終わらせたのだ。
「...認めよう、人間...お前は強い」
「馬鹿な、キースが殺られただと!?」
「ガルズライン様、お逃げください!今お怪我をなされれば経歴に傷が!」
「おっと、すまない...お前ら、俺様の盾となれ!」
キースがシュナの槍に倒れ、
シュナがガルズラインに肉薄しようとするが、
ガルズラインは部下たちを盾にそそくさと村から逃げ去った。
その後、村からの音沙汰が無くなったと気づいたアスランド家が調査隊を出し、
シュナと村人は救われたのだった。
その時に、シュナは調査隊の中にいた若きアスランド家長男、オブシディアン・アーサー(クレルは三男。)がいたそうなのだが、
残った村人達が如何にシュナが圧倒的だったか、シュナの両親は死んでしまったと語った時、
「...一緒に来るか?」
と言ったのだそうだ。
そして、シュナはオブシディアンに付いていき...
オブシディアン下の中級貴族の家に引き取られたそうだ。
そして、仮の両親の愛を受け、シュナは少しずつ元気を取り戻していったようだ。
ただ、荒んだ性格までは治らなかったようで少々暴力的なのは治らなかったようだが。
さらに...
森でガルズラインへの復讐のために修行中に、同じく復讐に燃え盲目的に研究を続けるクレルと出会い意気投合したようだ。クレルが学院に行くという話を聞き、両親に言って学院へと進学したらしい。
それで話は終わった。
「どうだった?」
「...波乱万丈な人生だね、としか。」
「...ユカリらしいじゃない。」
感想を聞いてきたので、良くも悪くもない感想を述べる。
...だってしょうがないじゃん!重い話も暗い話もどう返せばいいかわからん!
しかし、そんな稚拙な感想を聞いたシュナはなぜか笑って、微笑んだ。
「そういえば、その槍って...」
「勿論、お父さんの槍だよ」
「ちょっと貸して」
俺はこの槍にしてやりたい事ができた。
というわけで武器強化メニューをオープン!
俺はこの槍に持てる限りの素材を費やしレベルアップと強化を行った。
ついでに耐久も修理しておく。
「...ほい」
「わ、なんか軽くなった?...ありがと」
その日はその話を聞いただけで終わった。
だけど、俺はまた強く実感した。
この世界はゲームの世界に似て非なる世界なのだと。
...ちなみにクレルの話も聞いたけど凄惨極まる話だった。
ああ、心が重い...
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