Ep-53 防具を買おう(前編)
主人公は今までなんか服だけで戦ってました。
これはさすがに人外すぎるので防具を着せます
翌日。俺は外出の支度をしていた。
今日の用事はたった一つ。装備を買うことだ。
盾や武器ならともかく、防具に関してはウェポンマスターの能力では呼び出すことができない。それによって、昨日俺は寮に帰った後に服についた傷や破れ、血のシミからベルに乱闘でピンチに陥ったのを看破された。
「チェストプレートとショルダーガード、後は下半身用の2重スカートでも買うか...」
別に普通のズボンでもいいのだが、昔なんかの小説で読んだキャラが革のスカートの中に重い鋼のスカートを装着して急所をを守るとか言うのがあった気がする。
コートの中に刃を仕込む奴もいた気がする。付けても使い方わからないしどうせ使わないし...スカートの中に刃を仕込むのはやめておこう。
「じゃあ、ベルお留守番よろしく~」
「はいはい、行ってらっしゃいな。夕ご飯までに帰ってくるのよ~」
「はーい!」
ベルに一声掛けて、俺は街へと繰り出した...
寮から外出するには手続きがいるので、いつも通りポータルアローだ。
テレポートの方が早いがこっちのほうがMP消費もクールダウンも短くていいね。
ん?無断外出は校則違反?...し、知らんし!
◇◆◇
街へと転移した俺が向かうのは、鍛冶屋『メルティングアダマン』だ。
ゲーム時代も多くのプレイヤーの訪れる名店だった。
鍛冶屋は武器を強化...強化ツリーに沿った形で強化するシステム、伝説級へと至った装備をさらに上の段階へと超越させる強化、素材を元に強力な武器や防具を作成する鍛冶・鋳造システムがあった。この店は表示できる強化ツリーの数が最も多く、超越強化もでき、鍛冶・鋳造システムの完成度や成功率が全鍛冶屋の中で一番高かったりと最高の鍛冶屋なのだ。
勿論、とってもお高くつくけどな!
もっとも、俺のお財布なら大丈夫だ。この鍛冶屋はどんなに高くとも10億オルクくらいだからな...
「ふーむ、この間より視線を感じる」
王都で一番デカい裏組織で暴れたせいで、前より視線を感じるようになってしまった。
だが、そんなことを一々気にしていたら日が暮れてしまう。
俺は足を速めて鍛冶屋へと近づく。
鍛冶屋に近づくにつれ、ゲーム時代もよく聞いたカーン、カーンというハンマーを溶けた金属に打ち付ける音が大きく聞こえるようになっていく。
俺は普通にドアを開けて鍛冶屋内に入る。
鍛冶屋内は受付と机、飾り物の剣と盾、騎士鎧が飾ってある。さらに奥にはドアのない入口があり、そこから熱気が漂ってくる。
「すいませーん、誰かいませんか~?」
俺が誰かを呼ぶために叫ぶと、奥から「ちょっと待っててくれ」と声が聞こえてきた。
仕方ないので数分待つことにした。
数分後、奥から見慣れたおっさんが出てくる。
彼の名はアイゼン。この鍛冶屋の店主だな。
「すまんすまん、今頼まれた剣を打っててな...用件は?」
「防具のオーダーメイドを」
「あ?お嬢ちゃん冒険者か。わざわざうちを指名してくるってこたぁ...金持ちの道楽冒険者じゃねえな。確かにそんな装備じゃすぐ死にそうだ」
「いえ、実力はあるので...チェストプレートとショルダーガードをお願いします」
「ほう?そこらの冒険者が言う”実力”とはまた違った重みを感じるじゃねえか...だが、嬢ちゃんに鎧は似合わねえよ。せっかく綺麗なんだからちょっとは見た目を気にしろ」
やだこの鍛冶屋サラッと殺し文句...もといセクハラ発言を...
だが俺は中身が男なんでな!
ちょっと恥ずかしいくらいだな。
「じゃあ、他にどんな武器がある?」
「ふーむ...最近聞かないが...ドレスアーマーとかどうだ?」
「ドレスアーマー?」
ゲームでは聞かなかった分類の防具だ。
ひょっとすると強いかもしれない
「そうだ、予算を聞いていなかったな...上限はどれくらいだ?」
「上限は...10億オルクを越えなければ...」
「極端だな!まあいい。ドレスアーマーはどんなにガチガチに防御付与をしても1千万オルクは越えないな。出せるか?」
「勿論。出せなきゃこの鍛冶屋にはこない」
「よっしゃ、じゃあまずドレスアーマーの説明から行くぞ...」
ドレスアーマーとは、レザーメイルに近いこの世界オリジナルの装備らしく、
襲われることの多い貴族令嬢がオーダーメイドで作らせたものが原型となり広まった...ということらしい。使われている布や綿、生地などに魔力を付与し、それに応じた効果を発動させ身を守るらしい。これだけでは魔物の攻撃などから身を守るのは難しいが、生地の間に伸縮性のある薄くしたミスリルを挟んだり、より高級な素材を使って付与できる魔力の多さや種類を増やすといった金持ちしかできない拡張機能もあるようだ。
最近は防御魔道具や護身用魔道具などの存在であまり見かけなくなったが、
俺なら問題なく使えるだろ...とアイゼンは熱弁した。
もっとも、俺も知らない情報だったのでうんざりしたりはしなかった。
「嬢ちゃんならいくらでも出せるんだよな...?」
「まあ、10億オルクまでなら余裕だよ」
「本当かどうかは知らないが...これから言う素材を集められれば最強のドレスアーマーを作ってやれるぞ。」
「本当?」
「ああ。集められたらな。」
そう言ってアイゼンは受付から分厚い本を出してきた。
それを開き、手慣れた感じであるページを開く。
そこには、見慣れたモンスターの絵が描かれていた。
「黒鋼蜥蜴の体毛...火山地帯なら必ずいるモンスターだな。もっとも、その火山地帯最強である...という事も外せないが。」
そして、アイゼンはさらにページをめくる。
そこには普通の綿花っぽい物が描かれている。
これも見慣れてるな。
「そして...千年草、まあ古代綿の事だな。...こいつはロア地方で稀に多年草に混じって生育する質のいい綿花だ」
アイゼンはしばらく考えて、言った。
「千年草の綿はこの王都にもある店でちっと高いが売ってるな」
「もう購入済みだね」
「そうか、なら丁度いい」
アイゼンはページを戻した。
どうやらさっきは見過ごしたページらしい。
「最後に、魔毒蛾っていう脅威度...脅威度はわかるな?」
「え?なんだっけそれ...」
脅威度ってなんだ?
少なくともゲーム時代は一切聞かなかった要素だ。
「お前さん、実力はあるのに脅威度を知らんとはな...死ぬぞ。まあいい、脅威度はギルドが発行してるモンスターの脅威レベルを度合いで表してる。魔毒蛾はB...つまり一般兵士が30人くらいいれば対処できる魔物だ。そいつの幼生は繭を作って成長していくんだが、その繭をバラして糸にしたものが必要だ。...集めてくるか?」
「いや、持ってるよ」
言われた素材をすべてインベントリからバラバラ落とす。
そりゃ、元レベル800プレイヤーなら必要数確保するのは当たり前だからね...
クランマスターもやってたし、後輩の育成用にも結構持ってたからな...
「おおう...もう詮索はしねえぜ。ちょっと待ってな...夕方くらいには作れる。...まずは魔導機織り機を出してこねえと...何年使って無ぇんだろうなアレ...」
そう言って奥に消えていくアイゼンを見た俺は、夕方までどうやって時間をつぶそうかと店を出た。...ゲーム時代素材からどうやって服とか作るんだろうな?と思ってたけど、そういう機材を持ってるんだな。
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