Ep-51 フィアス
若干強引に終わらせた感はある...
フィアスとルドルフが凄く強いのはレギュラーメンバーではありませんが味方になるからです。
そして、技術や経験ではユカリが上回っていますが、ドッペルシャドーの処理能力が高いので両者とも同等の戦闘力を持ちます。
ユカリがルドルフと戦闘を開始した頃…
ドッペルシャドーによる影であるエッジはユカリに向かって突撃して来る敵を纏めて片付けていた。殺すなと言われたのでHPの数値が1桁残ればいいだろうという理由で絶妙に調整したスキルでである。
しかし、そんなエッジに近づく者がいた。
エッジはそれをただの敵と見なし、スキルをぶつけた。
しかし、それは簡単に弾かれてしまった。
その手に持つ斧で。
「お前さん、強いな…その技はどういうものなのかね?」
「申し訳ありませんが、答える権限を私は持っていません」
「チッ、つまんねえ奴だな…」
本体からの情報を参照するにこの男はフィアスというらしい。
だが、対象がどのような名前や姿であろうと排除対象であることには変わらないと判断したエッジは武器をクロスソードに切り替え、フィアスへと肉薄した。
「…エクスリーパー」
「おわっと!?お前さん、やるねえ」
しかしその攻撃はサッと避けられてしまう。
フィアスはちょっとヒヤッとしたような顔を一瞬浮かべ、すぐに余裕な表情に戻ってエッジを称賛した。その振る舞いが理解できず、エッジは一瞬混乱する。
「…実力の偽装ですか?」
「いやいや、これが全力さ。ルドルフとは違うんでね」
油断のできないこの男にエッジが普段とは違う姿勢で問いかけるが、フィアスは肩をすくめ、首を振ってアピールした。
たしかに、本体を追い詰めているルドルフという男は相当に強いようだ。
エッジはこの機会に情報収集をしようとフィアスに話しかけた。
「あのルドルフという男は何者ですか?」
「さあな…伝説の傭兵だったとかはよく聞くが…隙あり!」
「無駄です。あなたは情報源として生かされているだけですから」
「ハッ、こいつは手厳しい!」
会話の途中でフィアスはノロノロとした動きから突然俊敏な動きに切り替わり、斧をエッジに振る。しかしエッジはユカリよりもスキルの扱いに長けているので「見切り」、「武器使い」、「空間把握」という〈槍使い〉、〈武器使い〉、〈弓使い〉のスキルを常時展開している。それもスキルを強く意識しながらである。
そのためフィアスの攻撃はエッジに軽々と避けられてしまう。だがフィアスはそれを気にした様子も無く、反撃を受ける前にエッジの射程外に素早く逃げる。
「…何のつもりですか?」
「あ?何でもねーぜ?」
エッジは剣を消し、歯車とワイヤーで構成された無骨な弓を呼び出す。
それで近接戦に持ち込ませず終わらせようとしたが…
矢をつがえ撃とうとする前にフィアスが素早く斧を構え、防御姿勢をとる。
エッジはそれに疑問を覚えた。
「どうしたんだい?」
「何故?あなたはそれに見合う強さがあるようです。なのに何故勝負を付けないのですか」
「もう言っちまってもいいか」
エッジは疑問を素直に口にした。答えてもらえる確率は低かったが、意外にもフィアスは答えた。
「時間稼ぎさ」
「時間稼ぎ?」
その言葉で何かを察したエッジが本体の方を見ると、本体は敵を見失ったような顔で立ち往生していたが、「見切り」を発動していたエッジには後ろへルドルフが高速移動してくるのが見えていた。
『危険、後方に注意してください』
思わず念話を使ってエッジはユカリに呼びかけた。
しかしそれが功を奏したのかユカリは槍を高速回転させ、攻撃を防いだ。
エッジは影としての役割を果たせた事に若干の悦びを覚えつつ、フィアスに向き直る。
「どうやら、あなたの頑張りは無駄だったようですね」
「何…だったら俺がお前を爆速でぶちのめせば…何も問題ねぇッ!」
時間稼ぎが無駄だと分かった瞬間フィアスは今までの動きとは全く違った動きでエッジに迫る。
「無駄で…回避不能!?ッッッ!」
「どうだ?俺様全力の一撃は…無駄か」
「確かに…全力のようですね」
エッジはには何のダメージも入っていなかった。
何故ならエッジは回避不能と判断した瞬間にコンマ数秒の間に盾を呼び出して
斧の一撃を防いだのだ。
「なら…これでどうだ?」
「無駄です」
エッジはフィアスの常人なら見切れるはずのない速度の一撃をかわしつつ、インベントリからMPポーションを取り出して自分にかけた。本体とのペアリングは切れていないのでこれで本体の方も少しは助かるだろうと判断しての消耗品の使用だ。本体の情報によればこの世界に店売り高品質ポーションは存在せず、自分で作るしか無いという事なので、消耗品の使用はエッジは自分に厳しく制限している。
しかし、今は猛者2人に推されている状況。今なら消耗品の使用くらいは許してくれるだろうと思っての判断だ。
実際のところユカリは万を超える数のポーションを所有しているので、一本の使用くらいなら許容すると思われるのだが…エッジはまだ未熟な自律知能ゆえそれに気づかなかった。
そして、何度かの邂逅を経てエッジはこれ以上戦っても仕方ないと判断した。
「これ以上の戦闘は予測不能な不利益を生む可能性があるので…終了させていただきます」
「おっと、もう終いか…もっとも、終わるのはお前さんだがな!」
そう言ってフィアスはエッジに斬りかかろうとして…
エッジが素早く取り出したものを見た。
それはこの世界には似合わなさそうな無骨な銃。
もっとも、日本ではアンティークものだと言われるような古い拳銃だが…
それを、エッジは躊躇いなく発射した。
「スリープショット…最初からこれを使っていれば楽でしたね」
「お…前さん、そりゃ…ずるい、ぜ…」
フィアスは悔しそうに顔を歪めながら眠りに落ちた。
フィアスが倒れたのを見届けたエッジは、加勢するためにユカリの元へと走り出した。
面白いと感じたら、レビューや感想を書いていただけると嬉しいです。
もしよろしければ、ブックマークや評価もよろしくお願いします。




