Ep-39 ただの王の仮面
錬金術師ハーマンと魔法技師ピョコは当分出てきません。
一応名前だけ出しただけです
「はい、これ」
「ひっ!?ユカリちゃん...流石にこれは...」
戦いから数日後、俺はタツミにあるものを手渡した。
それは真っ二つになった呪王の仮面を修復した、いわば...
ただの王の仮面である。
当然、元はこの仮面に支配されてやりたくもないことを無理やりやらされた側は
再びこれを被れなど言われた日には相手の精神を疑うことだろう。
だが、問題はない。
「私が錬金術で弄ったから問題ナシ!ささ、付けてみて」
「なんなのよ錬金術って!...もう突っ込むだけ無駄なのかな...」
俺が〈錬金術師〉のスキルで壊れた仮面を修復し、内部ステータスを弄って魔改造した。
これによって呪王の遺志は完全に消滅し、ただの使用者の力を引き出してパワーアップさせる仮面と化した。
ゲームの本来の流れとしては、壊れた仮面を魔法技師ピョコと錬金術師ハーマンが修復して、騎士となったタツミに手渡すという流れなのだが、俺は好奇心が抑えられなくて、ついやってしまった。”できることの制限”が無くなったこの世界で錬金術師の職業スキルを使ってマジックアイテムを改造すると何が起こるのか。
「被っても自我を失ったりはしないし、生命力を消費したりはしないよ!」
「生命力を消費って何!?」
あれ?気づいてなかったのかな。
呪王の仮面は潜在能力を引き出せるけど、その代わりに生命力を消費するんだよな。
だから戦い続ければいつかは人間の方は死んでしまうだろうな。
だからこそタツミや俺みたいなある程度頑丈な人間にしか寄生しないんだろうけどな。
「そんなわけだから、付けてみてよ」
「しょうがない...わかったわ」
タツミが仮面を身に着ける。
すると黒い髪がスッと翡翠色に変わり、身に着けている刀の傍らにもう一つの黒い刀が出現する。
「あ、凄い...体が軽い」
「ね?安全でしょ」
あの時のような威圧感はないが、タツミからオーラが噴き出る。
そして同時に感じる魔力も増大した。
「試し斬りしたいな...」
「じゃあ、行こうか」
俺はポータルアローで空間に穴をあけ、タツミとともに近くの狩場へと向かった。
◇◆◇
「鎌鼬ッ!」
タツミが叫びながら刀を振ると、数m先にいた魔物が真っ二つになって絶命した。
せっかくなので俺も対抗する。
「真空斬り!」
うーん、やっぱ強いわこれ。
視界に映る魔物がすべて横に切断されて絶命する。
「ユカリちゃん...私が強さを実感しているときにどうしてそういうことするのかな?」
「でも先輩、一流の剣士は相手の技を見て盗むといいますよ?今の先輩なら、技を盗むくらい簡単だと思いますよ」
「....そうだね、いや、そうね。」
たまに先輩、素が出るな。
どうして普段使いしないんだろうか...?
それについて尋ねてみようかな?と思ったが地雷を踏みそうなのでやめておこう。
「タツミ先輩、奥に行きませんか?」
「何かあるの?」
「ここ、トレントとかドライアドとか出ますよね?」
「うん。それがどうしたの...まさか」
「エルダートレント、戦ってみたくありませんか?」
「..........」
俺は無言で何も言わなくなった先輩を担いで森の奥まで歩き出した。
道中当然魔物が襲ってくるが、片手で十分だ。
3回ほどレベルが上がって、ほくほく気分で森の奥までたどり着く。
エルダートレントに近づくと、土の中から大きなものが現れて襲い掛かってくる。
ガーディアンと呼ばれる木の根っこなどで構成されたゴーレムだ。
これも刀を片手で一閃して2,3回斬りつけて倒す。
「さ、先輩。心置きなく戦って大丈夫ですよ」
「...ふ」
「ふ?」
「ふざけるなぁっ!」
せっかく森の奥まで連れてきたのに、何故かキレられた。
運んでやったんだからエルダートレントと黙って戦えよ!
と思ったが、一応黙って言葉を待つ。
「呆れ果てた隙を狙って担いでいく阿呆がいるものか!それに、魔物も守護者らしきゴーレムも瞬殺してしまうし!私にここまで劣等感を植えつけて何が目的だぁ!」
「えぇ...」
どうやらこの仮面、強力だが性格を変えてしまうようだ。
ネガティブな方向に思考が行ってしまうのと、闘争本能が増幅されてしまうのかな?
俺は思い切って仮面に手を伸ばし、顔から仮面を剝がした。
「痛っ!何するのユカリちゃん」
「あ、先輩元に戻りましたね」
「本当だ...やっぱりあの仮面はまだまだ危ないのね...」
もう一回、仮面を付けてみる。
「私で遊ぶな!」
「は、はい!」
やっぱこの仮面、破壊したほうが身のためなのかな...
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