Side-02 スキルを強化しよう
主人公がいつのまにか数字の付く強化スキルを使い始めたのでこの話を挟みます。
強化スキルは全てのスキルに当てはまるので、空転術も強化できます。
主人公が空転術を強化しない理由は、派生術の多さと移動距離の変化やクールタイムの変化が戦闘に影響を与えてしまうからです。
俺の名は相原恭介。
オークストーリーの1プレイヤーだ。
本日は...特にすることもない。レベル上げに勤しむか、幽玄の塔の攻略に挑むか。
俺が何をしようかと悩んでいると、誰かが部屋に入ってきた。
俺が今いるのはクランが持つことができるクランルームなので、入ってきたのはクランメンバーの誰かだろう。顔を上げると、そこにはヘルメスというフレンドがいた。
1年ほど前からの付き合いで、俺によくアドバイスを求めてくる可愛い後輩だ。
「あっ、ユカリさん」
「どうした?ヘル」
「実は、スキルの強化とかメッセージが出てきて...」
「あ~...分かった。教えてやる」
それだけで分かった。
このオークストーリーオンラインは大規模VRオンラインゲームであるのにも関わらず、
その自由度の高さから殆ど攻略情報が存在しておらず、公式サイトにも乗っていない情報があったりする。これはそのうちの一つで、スキル強化である。
職業スキルレベルアップは誰でも知ってる情報だが、スキルを限界までレベルアップさせるとできるスキル強化は新規には分かりづらいだろう。
「ここのスキル強化ってのは既存のスキルに更なる追加効果とかを付与して、効果もアップさせるんだ。その分代償もあるけどな...」
「えっ!?代償って...」
「心配すんな。そこまで怖いものじゃない。」
スキル強化の代償とは、まず強化のために必要な素材と、大量の財貨だ。
さらに、スキルを強化するとしばらくスキルがクールダウン状態に入ってしまうことだな。
これは戦闘中とかにやってしまうとスキルが使えなくなってボコられる要因となりうる。
最後に、スキル強化はⅠからⅩまで可能だが、強化するたびに効果が変わってしまうことだな。スキル硬直が長くなったり、MP消費が多くなったり。
「ヘル、お前は確か〈勇者〉だったよな?」
「はい!」
「何のスキルを強化するんだ?正直どれも強化しても物語を進めないとな....」
「えっと、ソウルディバイドっていうスキルなんですけど...」
「…………やっぱりお前って、天然なのか...?」
ソウルディバイドは〈勇者〉職業なら誰しも強化する超優秀スキルだ。
相手の魂を6つに分割する云々で6倍のダメージを与えられるスキルで、未強化時の攻撃力は低いものの強化を重ねれば大きなアドバンテージとなり得る強力なスキルだ。
ぜひぜひ強化を勧めたい。
「それなら最大まで強化していいぞ。素材と金は貸すから」
「いいんですか?」
「ああ。」
クランバトルというモードがオークストーリーには存在し、
その時は俺と上位クランメンバーが力を合わせてライバルクランと戦う。
その時に活躍できる下位メンバーがいれば楽をできる。
そんなことを考えて俺は〈勇者〉の強化費用に十分なオルクとアイテムを渡そうとして...
素材が足りないことに気が付いた。
「あれ?どうしたんですか?」
「すまん、ちょっと倉庫までアイテム取りに行ってくる!」
俺は困惑するヘルメスを置いてテレポートで狩場へと向かった。
◇◆◇
「ヘルフレアバースト!」
地獄の業火が広い平原を埋め尽くす。
そして、平原にいたモンスターは一匹残らず死滅した。
「バキュームコア!」
そしてモンスターの落としたアイテムを俺はバキュームコアという大規模魔術で一点に集める。そして、一気に回収する。
しかし、その中には俺の探すアイテムはなかった。
まずい。早めに戻らないとヘルを待たせてしまう。
俺は必死になって考えを巡らせた。
「そうだっ!天空城アストラルにここのモンスターの上位種が出るな」
というわけで俺はレベル600級ダンジョンである成層天城アストラルへと向かうのであった。
俺のレベルは800付近なので、天城アストラルは初心者のレベル帯からはマリアナ海溝から見るエベレスト山頂並みのダンジョンということになる。
「ケイオスフレア!ヘルフレアバースト!ニュークリアフレイムⅣ!」
そこの魔物を俺は勇者職の〈ヘイトムーブ〉というスキルを使いながら敵を一か所に集め、一撃では死なないので3発の炎魔法を放って全滅させた。
「テンペスト・バキュームコア!」
そうして再び散らばったアイテムをかき集めると、
そこには探していた素材アイテムがあった。
「よっし!じゃあ帰るか!」
俺はそう言って、出かける前にセットしておいた追憶の書(一度使った場所に戻れる。1回使うと15000オルク持ってかれる)というアイテムを使って帰還した。
「すまん、ちょっと倉庫から出すのに手間取った」
「ふふ、いいですよ。これくらい!」
戻ると、ヘルメスはクランルームの椅子でくつろいでいた。
俺が素材アイテムを渡したので、強化の手伝いをすることになった。
◇ソウルディバイド スキルLv:10《MAX》 強化レベル:0
スキル強化を実行しますか?
Ⅰ→Ⅹ -/+
はい いいえ
こんな画面が俺とヘルメスの前にパッと現れる。
ヘルメスは何の躊躇もなくはいを人差し指でグッと押した。
すると、ヘルメスから光が飛び出し、画面に吸い込まれる。それと同時に机の上に置いていた素材も光となって画面へと吸い込まれる。
そして、
◇スキル:ソウルディバイド強化成功!
ソウルディバイド→ソウルディバイドⅩ
と言う表示が出て成功を示した。
俺は何度も見ているのであまり何も感じなかったが、ヘルメスは違うらしい。
「やっ、やった!ありがとうございます!ユカリ先輩」
「これくらい何でもないよ、けど感謝の気持ちは受け取っておこう」
ヘルメスの喜びようはドン引きだが、
可愛い後輩を悲しませるわけにもいかない。俺はとりあえず感謝の気持ちだけは受け取っておくことにした。
ソウルディバイド=ソウルシューターと同効果です。
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