Ep-31 共同作業
ベルとリンドは本来のゲーム部分では何も関係ありませんが、とある理由によりベストカップルになり得ます。
俺たちは、ポータルアローというスキルで魔道飛行船で通ったルートの真下に位置する平原へと転移してきた。
「ほお…やっぱ凄いなこれ」
「ほら、さっさと行くよ」
驚いて呆けるクレル。
だが、まだ午前とはいえ、日が暮れるのは早いものだ。
すぐに作業に取り掛からなければあっという間に夜になってしまう。
その場合、日曜日も潰れて大損だ。
「下等翼竜の死骸、大きいですわね…」
「これ完全に燃やしたらダメなの?ユイナなら出来ないこともないと思うけど」
「うわっ、ダメダメ。絶対やっちゃダメだよ」
全部燃やしたりしたら現場の作業員に被害が及ぶかもしれないし、
素材が全部燃えてしまって恨みを買うかもしれない。
既に殆ど焦げ焦げだが。
ここは地道にナイフとかで切り取るしかないかなあ…
◇◆◇
「それで、あんたらが依頼を受けてきたのかい?」
「はい。お手伝いで問題無いですよね?」
「お手伝い…か。外部は全て焦げ焦げだし、今はもう腐敗が始まっちまってる。素材さえ無事であればいいから作業をやってくれ。」
「わかりました」
俺は現場担当者と話していた。
他のメンバーは既に作業を開始しているが、一応俺が担当者と話をして指示を仰ぐことにしたのだ。
「あ、優先してやってほしいところとかありますか?」
「嬢ちゃん気が利くね…そうだな、腹の臓物が腐り始めてるから竜鱗を貫けるなら腹からやってくれ」
ということで、俺は腹からやっていくことにした。
他のメンバーはというと、
クレル&シュナは尻尾、
アレックス&ユイナは手足、
リンド&ベルは頭である。
1番簡単な翼はとっくに解体済みなので、他の部位もすぐに解体されるだろう。
ふたつに分かたれた下等翼竜は焼け焦げてはいるが、その内臓はなぜか無事だ。
ならば、内臓は何か耐性を持っていると考えるのが自然である。
「ビルドウェポン、学者の魔導書」
俺は古びたノートのような魔導書を呼び出す。背表紙に虫眼鏡のようなものがついたカッコいい本だ。
「チェック」
そう称えると虫眼鏡の部分が光り、その光が地面に当たった。
◇地面
データなし
この光を対象に当てれば、その物が持っている特性や特徴などを見ることができる。魔法使いは結構使うかもしれない武器だ。
「チェック」
再度、今度は光を下等翼竜の内臓に当てながら唱える。
◇下等翼竜の内臓 風属性
魔法耐性+3
炎耐性+10
あちゃー…
炎耐性が10もあるんじゃあ全身が燃えても内臓は残るわな。
これ俺たちが来なかったら腐らせた方が有意義だね。
「じゃあ凍らせて砕くか…いや、凍らせて回収するべきかな?」
インベントリ内では時間は進まない。
この設定はこの世界でも生きているようで、インベントリ内の食料アイテムは無事だ。俺1人であれば餓死する事はまずないだろう。
「デリートウェポン。ビルドウェポン、アイスクレイモア」
アイスクレイモアを内臓に軽く触れさせて、アイスクレイモアの武器スキルであるフリーズスラッシュを最小威力で放つ。すると、パキパキと音を立てて内側から腐りかけていた内臓が凍りつく。この状態なら収納できるはずだ。
「インベントリオープン」
インベントリの空き領域に〈腐りかけた下等翼竜の内臓〉を収納し、また別の内臓を凍らせて収納しを繰り返していると、気がつけば腹の中は何も無くなっていた。
翼竜の内臓はインベントリ内では全て共通の名前のようで、見分けが付かないがなんとかなるだろう…多分。王都で防腐処理をして防具に加工するかな…
俺の方は全て片付いたので、仲間の方も回って見たのだが…
「あーちくしょう、ナイフじゃ切れねえよ…」
「こっちこそ槍じゃ鱗剥がすの大変なのよ!」
クレルとシュナは譲歩というものが出来ないようで、お互いナイフと槍でなんとか作業をしている。それでも流石は優等生というわけで、ナイフや槍で上手く鱗を剥がし皮を切りとっている。
「あ、ユカリさん、終わったのですか?」
「こっちはもう終わったよ。これくらいなら楽勝さ」
アレックスとユイナは苦戦しているかな?と予想していたが、こいつらは協力して作業すると滅茶苦茶効率良くなるイベントがあった気がするな。普通に仲良いんだろうな。クレルとシュナも見習った方がいいぞ…
「ああもう!そこは違う!竜の脳味噌は高く売れるんだから優しく!」
「む?そうなのか…我らの脳味噌が高く売れるとはな…なんとも」
「つべこべ喋ってないでやる!」
ベル&リンドのチームはなんとまあ…
リンドがベルの尻に敷かれていた。どうも会話の主導権を握られているようで、
黙々と作業をしている。
そうした風に、皆それぞれ合う相棒を見つけ、協力して作業することでより友情を深めた。そしてCPも高額で売れるアイテムもゲットしてウハウハというわけである。
「これ、回収した臓物は持ち帰ってもいいの?」
「おお!?もう終わったのかい嬢ちゃんたち…ちょいと待ちな。一応調査があるんでな」
現場の責任者さんは、俺の終わったという発言を聞き、一瞬驚いた風に飛びのいたが、すぐに真面目な顔になり部下を呼びつけて調査をさせていた。
数分経つと部下の兵士が戻って来て問題のない旨を報告し、晴れて俺たちは依頼終了となったのだった。
「今日は大変で、疲れたけど…楽しかったな!」
「ただゴブリンを倒すだけではここまで会話を交わすことも無かったでしょうね…」
「我は満足だ!しかし、まさか我が逆らえぬ女がいようとはな。いつの時代も女は怖いものだ…」
そして、俺らは言葉を交わし合いながら、帰りの道へと急いだのであった…
その後、ギルドで依頼達成報告をして報酬を貰い、そのお金の一部を使って王都のカフェでお茶をした。
素晴らしく楽しい土曜日だった。前世も含めて、こんなことは全然無かったから俺にとっても楽しいものとなった。
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