Ep-26 狂いだす歯車と竜帝
竜帝は身長190cmくらいの美丈夫です。
人化はほとんど使いませんが、人化したことは伝説に残っています。
「で、私がそれを正直に信じるとでも?」
「正直に言えって言うから言っただけなんだけどな...」
俺は寮で、ベルに睨まれていた。
帰ってきた俺に、ベルが
「あ、帰ってきたのね。授業はどうだった?正直に話して」
と聞いてきたので、正直に誇張も無しで答えたら、何故か怒られてしまった。
どうも、俺がベルに嘘をついていると思われているようだ。
俺がベルに嘘をついて何になるって言うんだろうか…
「だから本当のことだって…」
「ユカリ、いくらなんでもこんなバレバレの嘘通用しないわよ。もしかして揶揄ってるの?」
「ごめん…普通に過ごしたよ。」
「やっぱりね!誇張しても自分が恥ずかしいだけよ。次から改めなさい」
やっぱり信じてもらえなかった。
でもしょうがない。前世で形は違えど同じことを言う奴がいたら俺はそいつを誇大妄想狂野郎だと思うからな。
「とりあえず、ご飯かな」
「私が作るわ」
「え?」
ここ、食堂あったよな...?
と思ったが、ベルはそれを察して言った。
「ああ、ここの食堂夜は割高よ。その代わり超美味しいんだけどね。」
「あー...お金ならあるけど?」
「やめておきなさい。食堂なんかでお金を使っていてはすぐに財布が空になるわ。」
あのー...俺の貯金嘗めないでもらえますか?
優に京も該も超えた額を所有していたはずだ。正直億の買い物をしすぎて貯金を把握していなかったレベルだったからな。しかし、俺は逃げ出そうとした瞬間に
「とにかく!わたしが料理を作るからあなたはここで待ってなさい!」
「はーい...」
というわけで俺は彼女ができる前に親以外の手料理を食べることになった。
ベルのプロフはよく知らないのだが...料理が下手ってことはないだろう...多分。
◇◆◇
ベルの料理は、別に不味くなかった。
というか普通に美味かった。
そして俺は、そのあと風呂に入って残りの時間を予習に充てたりメニュー画面でミニゲームをしたりして過ごした。
そして、夜。
俺は普通に就寝しようとしたが、何かが窓を叩いたので、外に出た。
「ああ、そうか…空転・跳躍」
俺は空転術で屋根まで飛び上がり、竜帝と対面した。
そう、日払いで雇った竜帝様である。
竜王は俺を視認すると自らの身体を闇に包み、角の生えた男の姿へと変わり俺の下へと降りて来た。屋根の瓦に罅が入る。どんだけ重いんだよ...
「人間、お前のちぇっくりすととやらに記載してあった事柄の内、2つ異常があったぞ」
「!!」
この世界はオークストーリーオンラインそっくりだ。
その中で、俺はとりあえず覚えているオークストーリー世界各地の特徴や出来事、事件を40個近くにまとめ上げ、チェックリストに記載して竜帝に渡して調査させた。
しかし、そのうち2つに異常があったか...
「どこに異常が?」
「トーホウのエドナと、アーカイムのアルドだな」
「具体的には何があった?」
「エドナではお前の言っていた将軍が謀反によって降ろされて、新将軍として女が君臨していたぞ。そして、アルドの方では...大規模な魔法災害によってエルフの森と森都エピアが壊滅した」
「なんだって!?」
ストーリーの大筋が大きく変わってしまう出来事が起こっていた。
それだけではなく、大規模な魔法災害?そんなイベントはゲームの時は無かった。
だとすると現実化の影響か、この世界に悪意を持つ者の仕業か...
「人間、仕事は終わった。そろそろ我は、悠久の眠りに...」
「いや、ちょっと待て。とりあえず追加任務だ」
俺はささっと帰ろうとする竜帝の肩をがしっと掴んで制止した。
逃がさんぞ。ちょっと協力しろ。
「いいか...明日な」
「....了解した。屈辱的だが、龍神の王冠を持つ者には逆らえない。」
何故俺が竜帝を薄給でこき使えるかというと、クエストアイテムだった〈龍神の王冠〉を俺が持っているからだ。普通の人間が竜帝にこんなこと頼んだらブレスで即殺されるよ。
「まあ、今日は寝るか...」
俺は空へと消える竜帝に手を振り、
自分の部屋へと戻った。
ユカリはこの深夜、自分と竜帝の姿など誰も見ていないと思っていた。
しかし、ユカリの姿を見ている者がいた。
「あぁ...やはり...」
その人物は、ニヤリと顔を歪ませて、静かに笑った。
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