Ep-24 薬学
ユカリの食事シーンは無いです。
物語の重要シーンでもないので...
ユカリはウェポンマスターの能力を軽々しく使ってるように見えますが、
結構考えて使っています。ぶっちゃけ今のステータスが常人より上なので、殴るだけで魔物倒せます。
「うおおおおおおおおおおおお!」
今は薬学の時間だ。俺は必死に薬研を使って薬草を潰していた。
〈調薬〉スキルは全く関係なく、薬学は作る”過程”を重視するので、
ズルは出来ない。別にやれば出来ないわけではないが。
「はあ、はぁ...これ後何回やれば良いんだ?」
俺の正面ではクレルがのびている。
俺より力はあるので薬草のすりつぶし具合はほどほどだが、調合するには後5分は潰さないとダメだろう。仕方ないので、応援してやることにした。
俺の得にもなるしな。
「ビルドウェポン、精霊の杖Ⅲ」
俺はゲーム時代の強化が残る精霊の杖を呼び出して、武器スキルを行使する。
精霊よ、力を貸してくれ...80%はクレルに、俺は20%くらいで。
「風の精霊よ、力を。ヘイスト!そして、水の精霊よ、彼を癒せ!アクアヒール!最後に、炎の精霊よ、彼の魂を燃やせ!ソウルバーニング!」
「うおおおおおお!急に力が沸いてきたぞ!?」
そして、クレルは燃える男とでもいう風に超高速で、尚且つ力強く薬研を使い始めた。
このままではクレルが薬学の成績で俺より上になってしまう。
これは俺も負けていられないな。
「行くぞおおお!てやあああああああ!」
俺も思いっきり力を込めて薬草をすりつぶした。
そして...
ベキィ!
薬研の土台ごと机が割れた。おい、石の机だぞ!?
おい精霊ども、クレルに80%って言ったよな?
俺が机を壊した瞬間に逃げ始めた精霊を捕まえて問い詰めると、
『ちゃんと言う通りに力込めたよ!』
『あんな加護で机ごと割るなんて!』
『この怪力女!』
と一斉に叫んだ。
なんだとこの野郎!と思ったが、ステータスが一般人に比べると数百倍の俺なので、本気を出せばこうなってしまうのはやはり当たり前の話である。
しかし、教室の奴らは無反応だな...
いや、無反応ではないのかもしれないが、もう見慣れたのだろう。
ああ、いつものパターンか。といった感じですぐに作業に戻った感じである。
「ごめん、クレル...」
「お、俺の薬草が...」
そして、もう一つの悲劇、俺が机を割ったせいでクレルの薬草は床に散らばってしまっていた。アレックスはすでに終わらせて別の机で作業をしていたし、ユイナとシュナは俺が精霊術を使った時点で何かを察し、事前に薬草を避難させていたので助かったようだ。
「ユカリ...ちょっとあなたに嫉妬したわ。そのくらい腕力があれば、私の槍ももっと強くなるのに。」
「精霊と言い争い...あなた、トンデモですわね。普通はお願いを聞いてもらうのに...」
2人はクレルのことはどうでもいいようだ。
泣き崩れるクレルの方を見ることもせず、俺の腕と精霊が消えていったあたりを凝視している。ステ振りはまだ解放されていないので、俺の筋力はまだ普通のはずだ。...多分。
ステータスポイントを振るシステムはレベル100の1次限界突破の時に開放されるので、そこからプレイヤーは凄まじい力を手に入れることとなる。このペースじゃ、俺は当分先だが。
「クレル、ちょっと耳貸して?」
「ああ、なんだ...?」
仕方ないので、俺はかわいそうなクレルに施しをしてやることにした。
少しばかり...と言うには過分すぎるくらいズルいが、このまま放置も後味が悪いしね。
「ビルドウェポン、大薬師の杖Ⅳ!」
ゲーム時代、もっぱらポーション作成に使っていた杖だ。
ポーション作成は面倒臭いが、買うより安いのでお得なのだ。
本来は〈錬金術師〉か〈薬使い〉の領分なのだが、ウェポンマスターはこういう他職のいいところを使えるところが良いんだよな。
「素材加工!」
俺が呟くと、俺の手に魔法陣が宿り、予備の薬草に向かって光が飛ぶ。
そして、クレルと俺の薬草は綺麗につぶれた状態へと至った。
「おお...ありがたいけど、これ最初から使ったほうが良くないか?」
「ズルばっかは良くないでしょ」
「それ凄い今さらだぞ」
酷いなー...出来る限り自分の実力で物事を進めたいのは誰しも同じじゃないのかな?
スキルや魔法にばっかり頼っていると、それがなくなった時に困ることになる。
いつかは元の世界に帰るんだから、その時にスキルや魔法に頼りっぱなしじゃどうしようもないしね。
「はー...これ先生に言ったほうがいいかな?」
「ユカリさんは武器を消したり出したりできるから、証拠も何も残らないので...やるだけ無駄ですわ」
その通り。俺の能力は完全にして無敵。
前世でこの能力を使える奴がいたら、人を殺しても証拠が残らなかっただろうな...
だからこそ、慎重に使うべき力なんだけどね。
ま、〈調薬〉でなく〈素材加工〉ならば別にいいだろ。
調合の時には杖は使わないから、実力勝負だからな。
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