Ep-22 タツミ
前設定が存在した事は確かですが、無かったことにします。
よって修正前のタツミの名前は忘れてもらいます。
世界史の時間は特にこれと言って何もなかった。
ただ、質問に全て答えただけだった。
正直言って知識系はセルフチートでなんとかなる。
俺はやりこみプレイヤーではなかったが、オークストーリーが素で難しすぎる。
初見殺しに難解な謎解き、細かいイベントトリガーに、レベル800ですら死ぬときは死ぬボス戦。セルフチートが出来上がるわけだ。
正直な話、俺以外の廃プレイヤーがこの世界に転生してきても同じ結果になっただろう。
ああ、どうして俺は女性に転生したんだ...
女性に転生してしまったせいで俺は今、不得意な技能系...裁縫をやっている。
俺は未来の英雄の女子3人に手伝ってもらっている。
...ん?1人多いって?
1人だけ多いその理由は...
「謎の新入生はとっても優秀だと聞いていたけど、まさか家事ができないとは、可愛い」
「あの...授業は参加しなくていいんですか?」
「ああ、いいのいいの!私は1年前のクレルみたいな研究生だから、授業は無いの!」
突然クラスに乱入してきた上級生...タツミ・フウカだ。
未来の英雄の一人で、刀を使うが...今の段階では風魔術と闇魔術しか使えない。
その理由は、まあ...後でわかるだろ。
今は裁縫に集中しなくては,,,痛てっ!
前世の家庭科でもっとしっかりとやっておくべきだったと後の祭りの後悔をする。
「ユイナ、シュナ...集中してる...のかあ...」
ユイナは多少心得があるらしく集中してやっているが、
シュナは無理矢理やろうとして生地をボロボロにしている。
残念ながら俺は孤立無援のようだな。
「先輩、お喋りするなら手伝ってくださいよ」
「ええ、お話につきあってくれるなら手伝うわよ」
そして、先輩は凄まじい速度で課題の刺繡を完成させていく。
そして、さっさと終わらせた刺繍を机に放り捨て、俺に向き直った。
「出来たわよ」
「はやっ!?」
「さあ、お喋りしましょう」
「わ、わかりましたよ...」
若干ズルいことをした気がして罪悪感が沸くが、
まずは目の前のこの人を無難に乗り越えなくては後は無い。
「それでね?私が聞きたいのは――—」
◇◆◇
し、死ぬかと思った...
ガールズトークの経験なんてないんだが。
散々どうでもいいことを聞かれた。もっとさ、どんな魔法が使えるとか、
聞くことが他にあるだろ。
教室に戻ると、同じくぐったりした男子組が先に戻っていた。
今は冬なので、汗はすぐ乾いたようだが、肉体的な疲れまではどうにもできないようだ。
「うぅ...やっぱ、俺は剣技とか向いてねえよ...」
「俺は別に不得意ではないな。だけどこんな拙い剣術、学ぶ必要あるのか?」
机に突っ伏してクレルが呟く。
アレックスは普通に構えているように見えるが、少し辛いらしい。
というのもこの学院はいわゆるエリート校なので、武術も通常とは違う厳しさらしい。
こいつらも苦労するんだな...
と思っていたら、クレルが突然禁句を言った。
「女子は良いよな...裁縫でよ」
「何だとこの野郎!」
「それは聞き捨てなりませんわ!」
クレルのセリフを聞いた瞬間シュナとユイナが憤怒の形相で立ち上がり、クレルに接近して持ち前の素早さでクレルを締めあげた。
「私たちが...どんなに苦労して刺繍を完成させたと思ってるの...?」
「知らねえよ!そんなの...剣術よりは楽だろ」
「何ですってええええええええ!」
「うわ!いだだだだだだだ!く、苦し...」
なんでクレルって高確率で地雷を踏むんだろう。
まあ、自業自得だな。
その点アレックスは女の子にも優しそうだな。気配りもでき...
「裁縫はそんなに難しいのか?クレルの言う通り剣術よりは簡単な気がするががががががが、やめろ、ユイナ!」
「黙りなさい!これは天罰ですわ!」
こいつもかぁ...
こんなんだからこいつらストーリーでもくっつかないんだよなあ。
さっさとくっつけばいいのに。
これだからかイラスト投稿サイトにはクレルとシュナ、アレックスとユイナのIFカップルイラストが投稿されることが多かった。
「まあまあ、何も喧嘩しなくても...」
「黙れ!貴様は先輩にすべてやってもらっただろう!」
「そうですわ!苦労してない方はお黙りになってくださいまし!」
仲介しようとしたら逆に怒られてしまった。
さらに、それを聞いたアレックスとクレルが叫びだした。
「お前!先輩にやらせるって...鬼か?」
「楽して済ませるのは感心しないな」
まずい、味方がいなくなった...!
孤軍奮闘の如く独りでお昼を迎えようとしている俺だったが、
思わぬ援軍がやって来た。
「ユ・カ・リちゃ~ん!お姉さんと一緒に食堂に行かな~い?」
俺は喜んでそれに飛びついた。
藁をも掴む気持ちというのはこういうことなんだろうな。
「はい!行きます!」
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