SEP-01 クレルという男
今日中に続きかけないと判断したので
クレルの昔の話投下します。
書き始めたころに書いたものなので矛盾点があるかもしれませんがご了承ください。
SEPはスペシャルエピソードの略です
(22/5/18)クレルが長男になっていたので修正。
クレル・アーサーはカーラマイア王国の南端、アスランド領主家アーサー家に三男として産まれた。
彼はとても容姿に恵まれ、文武共に優れた才能を発揮した。
そして...調子に乗った。
優れた容姿と才能を活かして、地元の女を全員篭絡する計画を練ったのだ。
何故かクレルはどこから学んだかも知れない知識をもとに、チャラ男としての人生を歩み始めていたのだ。
「あの頃のクレル様はちょっとおかしかったわね~」
「今もあれくらい積極的なら結婚してもいいのに...」
「クレル様はどうしてお変わりになられたのでしょうか?」
そう、クレルはあまりいい評判が無かった。
しかし、クレルはいつからか変わった。
それは、ナンパしていた女の子に頼まれて(実はクレルを遠ざける言い訳であったが)、近隣の森に自生する花を取りに行った時からであった。
そこで何があったかは、決して彼は語ることはない。
◇◆◇
「さて...この辺かな?」
そこは森の奥。クレルは森の奥に自生するという伝説の花、ディアムローズを取りに来ていた。もちろんそれはクレルにこの花のことを吹き込んだ女の子の嘘なのだが。
クレルはそんなことも知らず、森の奥...魔物の巣へと向かっていた。
「この辺はずいぶんと...雑草が多いね。人の手が入っていないのかな?」
クレルは独り言を呟きながら護身用ナイフで上手に生い茂る草を伐採して進んでいた。
しばらく進むと、急に霧が出てきた。しかしクレルは、そんなことはささいなことだと無視した。しかし...
「うわっ、これは一度方向を変えたら迷いそうだね」
霧が濃霧へと変化し、自分の手さえ見えなくなってしまった。
しかしクレルはそれも大したことではないと判断し、突き進んでいた。
そして...
「お、開けた場所に出たね...え?」
クレルは、遂に森の中心へとたどり着いたのだった。
しかし、そこには女の子の言うような美しい湖とその中心に咲く花など無く、魔物の死体がうずたかく積まれ、血の匂いが立ち込める空間であった。
そして、その中心にいたのは...
「ぬ?ワシの迷いの濃霧を突破してくるとは、オヌシ、何者じゃ?」
魔物の死体を前に何かをしている最中の、角の生えた少女であった。
魔族。普通の人ならその姿を見た瞬間、固まるか、怯えながら問いに答えるかするだろう。
しかし、クレルは違った。
彼は勇敢にも口を開き――—
「おお、美しい人よ!会えて光栄だ。どうか、その運命を俺と共に歩まないか?」
全く違う答えを口にした。
当の魔族は、その答えに、
「なっ...ワシが美しいじゃと!?...悪くはないの。人間、何故ここに来たかを答えよ」
耳まで真っ赤になり少し動揺したが、すぐに素に戻り、クレルに再び問うた。
クレルは、ここに来た理由を正直に話した。美しい人の命に疑問を抱くことこそ悪!と当時のクレルの主義ではそうだった。
すると、クレルの答えを聞いた魔族は笑い出した。
「くくく、お前、担がれているぞ?この森にディアムローズなど無い...というかディアムローズ自体2000年前に最後の一株が枯れたではないか」
「そんなことはわかっている。綺麗な人の頼みとあらば疑うわけにはいかぬので、勇気を振り絞りここに参じた次第である。」
「ははは、貴様は愚かだな、自分で疑うことはせぬのか?」
「俺は不器用だからな、好いてもらうためならいかな労力も惜しまぬ」
「面白いな、して、オヌシはワシに好いてもらいたいのかな?」
「その通りだ。俺の女になれ」
クレルがプロポーズをすると、魔族の女はニヤリと笑い、言った。
「素直でいいな。良いだろう、あと数か月待ってくれれば研究は成就する。その後ならば付き合ってやってもいい...勿論、研究の手伝いもしてもらうぞ?」
「ああ、わかった。これでも魔法の才はあるほうだ」
そうして、クレルは魔族の女...イリスと共に3か月間、修行と研究を重ねた。
それはクレルにとってとても有意義なものであった。3か月後のその日を除けば。
その日は、いつもの道を抜けてきたクレルに、イリスが話しかけてきたところから始まった。
「クレル、遂に完成したぞ!」
「本当か!?やったな!」
イリスが研究していたのは、特殊な空間理論により、異次元からエネルギーを取り出す魔法であった。取り出すための入り口を開くためには大量の魔力が必要になるため、イリスは何故か魔物が多いこの場所で魔物を狩って魔力を集めていたのだった。
そしてついに、その理論を確立させ、無難にエネルギーを取り出せるようになったというわけである。
しかし、何事も必ずうまくいくわけではなかったのである。
「じゃあ、起動するぞ...」
「おお、凄まじい力が湧き出てくるな!これがあれば、色々な事を可能にできる!」
「そうじゃの、クレル。全てオヌシの協力のお陰じゃ、さあ、この後は煮るなり焼くなりワシを好きに...」
成功を前に喜び、クレルとの約束を果たそうとしたイリスであったが、クレルが先に異常に気づいた。
「イリス!あれは!?」
「何じゃと!?」
瞬間、そこには白い人がいた。
髪も白、肌も白く、瞳も白銀、服も白の男とも女ともつかない人型の、”何か”がそこにいた。
『どこに行ったかと思えば、余計なことをしてくれやがって...』
その”人”は、魔法陣に向けて拳を振り下ろした。
直後、大爆発が起こりクレルは大きく吹き飛ばされた。
すぐに意識を取り戻し、イリスに叫ぶ。
「イリス!イリス―ッ!」
「クレル!逃げろ!ワシは今から『秘術』を使う!巻き込まれぬよう下がるのじゃ!」
美しき人の言葉を疑うものは愚か。
そう信じていたクレルだったが、この時初めて愛する人の言葉に疑念を抱いた。
『秘術』などあるはずがない。魔族がそんなものを持っているとは、イリスも話さなかった。彼女は死ぬつもりなのだと。
「イリス!死なせはしないぞおおおおおおおおお!」
クレルは、森の中心から吹き上がる魔力の濃霧の竜巻に向けて突き進んだ。
そして、竜巻の中を踏ん張って進んだ。しかし...
「クレル、すまないのじゃ!風爆!」
風の塊がクレルを吹き飛ばし、クレルが竜巻の外に転がった直後...
竜巻ごと、凄まじい音を立てて巨大な爆炎が立ち上り、数秒後に全ての爆炎、煙、濃霧の残骸が中心点に引き込まれ、後には何も残らなかった。
「ああ、イリス...イリス...」
クレルは、イリスが自分を吹き飛ばしたことを憎んですらいた。
どうせ死ぬつもりなら、自分も一緒に連れて行ってほしかった。
そう思っていたのだが、裏切られたようだった。
その日から、クレルは抜け殻のようになってしまった。
しかし、持ち前の芯の強さと、最期をみなかったことからまだ生きているに違いないと自分に言い聞かせ、元の軽い性格を無理矢理維持した。
そして、イリスの成功させた理論を自分がやってみようと奮起し...
研究の最中に魔法学院から招待状が届いた。
クレルは研究を成功させるための資金を援助してくれるという魔法学院の誘いに乗り、
魔法学院へと入学した。授業に費やす時間が惜しいので試験を全教科最高点で合格し、誰も文句の言えない優等生になったクレルは、1年間を研究に当てた。
しかし、時が経つにつれクレルは焦燥にかられた。
もしかすると、この研究は完成しないのではないか。
2度と、イリスには会えないのではないか。
クレルはだんだんと、自暴自棄になり校則を破るようになっていった。
しかし成績は良いので誰も文句は言えない。
アルマだけはそんなクレルを、誰かが何とかしてやらなければと思っていたが。
そんな中、クレルは出会う。
「ッ、させないよ」
「おっ、初見でこいつを避けるとはやるじゃねえか」
どうやったのか知らないが目に見えない空気弾を避けた女子生徒。
その顔は良く見えなかった。
「学院の生徒がこんなところで何してるの?」
「おわ!?何で俺が生徒だってわかったんだ!?」
「王都で平日に学院の近くにいたら学院の生徒でしょ?」
その凄まじい洞察力に度肝を抜かれたのは事実だが、「おわ!?」はそれに驚いたわけではなかった。ただ、似ていたのだ。
「お前、よく見ると可愛いな。俺と付き合わないか?」
「お断りよ」
顔を上げた少女の顔が、面影が、最愛の、そして2度と会うことは無いだろう恋人、イリスに。
クレルは、その少女に興味を持った。彼女と話し、結婚すればイリスを失った穴を埋められるのではないかと。しかし、彼は軽い性格ではあったが、心では分かっていた。イリスは戻って来ず、少女と結婚しても何も得られないと。しかしそれを認められない彼は、叶わなかった恋を再び再現しようとするのであった…
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(11/20)ちょい修正。クレル、変わりましたね...




