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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都大会編

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SEP-13 REMINISCENCE-回想-

旧王都で何があったのか、とか各キャラの過去がどうだったのか、とかそういう話です。

日曜日にSEPを上げられなかったので、今日あげることにしました。

最初らへんちょっときついかもしれないので注意です

ある朝、俺は目覚めた。

何の変哲も無く、特に大したこともない目覚めだった。

だが.............


(天蓋付きのベッド.........か)


俺の家には絶対にある筈のない代物。

それに、俺の隣には........


「だ.....れだ?」


見たこともないような美女が横たわっていた。

だが、その身体はだらしなく、どこまでも嫌らしかった。

それに、誰だと呟いた声。

その声が、あまりにも自分の知る声とかけ離れていて.......

俺は慌てて周囲を見渡す。

そして、探していたものを見つけた。


「........これが、俺なのか?」


俺、狩真累。

その姿とは似ても似つかない人物が、半裸で鏡に映っていた。




とりあえず服を探して、外に出る。

すると、ドアについていた飾りが音を立てる。

その音を聞いてすぐに、誰かが近づいてくる。


(メイド?)


しかし、そのメイドは露出の多い服を着た幼女だった。

誰がこんな幼い人間をメイドに.....?

メイドは、俺に震える手で洗面器を渡した。

俺は喜んで顔を洗わせてもらう。

それを返して、立ち去ろうとすると....


「き....今日は何も、なさらないんですか........?」


メイドが恐る恐ると言った風に俺に聞いてきた。


「何のことかな?」


当然気になるので、尋ねてみたのだが。

メイドは目を伏せ、そのまま立ち去ってしまった。

参ったな.....これじゃあ、俺の置かれた状況がよく分からないじゃないか。

俺は足を速め、とりあえずは適当に歩き続ける。

そして.....地獄を目にした。

——————全裸の女たちが、一斉に俺を見つめている。

その顔が、輝くような笑顔に変わるのだ。


「「「「ロイア様!!!!」」」」


そして、全員が競うようにして争い、

全裸で、テーブルの上の豪奢な食事を勧めてくるのだ。

俺は、逃げ出した。

食堂を抜け出し、下の階へと移動する。

だが.........

下の階へと降りて来た俺に、恐怖の視線が突き刺さる。

待機していたメイドたち.....先程のように、露出が多く幼い者たちが、俺を一斉に見る。

俺はもう、耐えられなかった。


「何が、何がどうなってるんだああああああああああ!」


俺は天井を見上げ、そう叫んだのだった。


◇◆◇


それから、数か月が経った。

メイドに自分についてのことを聞いて驚いた。

自分は、一国の王に転生してしまっていたのだ。

しかも、かなりの暴君に。


「自分のやった事、になるんだろうな......」


俺は手のひらを見つめながら、そう言う。

あの後、俺は俺を追って追いかけて来た全裸の女......愛妾たちと、

前夜に激しく盛り上がったであろう女のことを拒絶し、丁寧に元の領地へと送り戻した。

幼いメイドたちも、生活に困らないように懇意にしていた貴族に預けた。

どうやら今世の俺には父親が居たそうだが、俺が改心したと聞いて俺を試しにやって来た。

だが、俺は本当に純潔でいたいと思っているので、何の問題もない。

そして親父....現王は言った。


「そうか....改心してくれて嬉しいよ.....このままだと、お前を処刑しなくちゃいけない所だったからね」

「そ、そうですか......」


前の俺の行いはとんでもないもので、現代日本に生きていた俺にはとても信じがたいものだった。

そして、この世界も信じがたいことで溢れていた。

まず、王都カーラマイア。

どこかで聞き覚えがある名前だと思ったが、その疑問はテラスから街を眺めた時氷解した。

そう、これはゲーム時代の首都と同じつくりなのだ。

それだけなら偶々似てるだけで済ませられたが、

こっそり抜け出して調べた街の各所、それのどれもが俺の知るものと同じだった。

ただし、ゲーム時代には存在していた、新市街エリア。

そこには何もなかった。

となると、俺が転生したのはゲームリリース当時の王都なのかもしれない。

その頃はまだプレイヤー人口も少なかったから、アレでも充分事足りるんだったんだよな。

じゃあ、俺が次にやることは.........


「街を広げようと思」

「無理です」

「何でだよ!」


言う途中で反対されてしまった。

新しく採用した宰相は、俺を甘やかすことはなく真剣に国益を考えてくれる人だ。


「まず、資金です。それから人手、そして建設計画。それに、せっかく街を作っても人が住まねば意味なんてありませんよ?」

「それもそうか........」


資金は国庫を俺が浪費したせいで、殆どと言っていいほどない。

国民はこれ以上の増税に耐えられるとは思えないし、反乱を起こされても困る。

そして、人手。職人を雇うには金が要るし、新市街ともなるとなぁ.....

建設計画は、慎重に練る必要がある。

それ関連の貴族と親睦を深めないとな.........

住む人間に関しては、旧市街はもう人が溢れ始めているので問題ない。

だが、旧市街のあぶれだけではな..........


「どうしたもんか..........」


俺が執務室で資金と人手の調達手段について考えていると、

コンコンとドアが叩かれる。


「どうぞ」


すると、ドアを開けて入ってきたのは執事だった。


「ロイアハルト様、お客様がいらっしゃっています」

「お通ししろ」


いいところに来た。

いつ頼みに行こうかと思ってたんだ。

憑依される前の俺が良く付き合っていた悪友。

あいつなら、きっと何とか出来る。




「よぉ、久しぶりだな」

「最近、全然顔を見せねえからな。賭けでお前から貰った通行証で会いに来たぜ」


目の前に立つのは、”前の”俺の悪友、ハンス・イセフ・セーリクだ。

苗字は俺がつけた。

賭け札をやって、ハンスが勝ったから苗字を与えて王家との繋がりを持たせたらしい。

呆れたもんだ。


「巷じゃあ、お前がすっかり真面目になったって話を聞くが、ありゃ嘘だろ?」

「いや?俺は質素倹約に目覚めてな。それに、今日お前を通したのも、ひとえに相談したいことがあるからだ。その通行証は返してもらおう」

「うえっ!?マジかよ..........」


ハンスは目に見えて落ち込む。

だが、俺の記憶が確かならこいつは恐喝、暴力、窃盗と悪の限りを尽くす王都でも指折りの強さを持つチンピラだ。

あくまでもチンピラの中でだが、俺と知り合ってからはずっとツーマンで王都のチンピラから恐れられている奴だ。


「相談したい事がある。それ次第で、通行証を奪わないでおいてやる」

「おっ、いいぜいいぜ?それで、なんだ?やっぱり女が欲しくなったとかか?」

「いや、さ......ハンス、お前腕っぷしに自信はあるよな?」

「おう!俺の腕は王都一だ。」

「よし、じゃあ各地の名のあるチンピラをぶちのめして配下に加えてこい」


ハンスの顔が固まった。

まあ、当然か。


「な、な、なんでそんな事をするんだ......?」

「お前、そろそろ組織を持つべきだ。王都の治安は良いとは言えない。お前が各地の有名なチンピラを率いてマフィア組織をやれば、王都の治安は良いほうに傾く。基本的に、悪い奴らってのはその界隈の巨悪には逆らわねえもんだからな」


俺は最後まで言い切る。

一か月かけて調べたところによると、この王都には驚いたことに大きな闇組織が無い。

小さな組織が点在して悪さをしているのだ。

それなら、王家の制御可能な闇組織を作ってしまい、単独のチンピラや小さな組織がそうそう悪さができないよう王都をシマにしてしまうのだ。


「そうと決まったら、行け!」

「待ってくれよロイア、俺にも準備ってものが」

「準備なら要らん!こいつをやる」


俺はハンスにあるものを投げる。

それは金板に王家の紋章を押し付けた、王家の手形だ。


「これは?」

「そいつがあればあらゆる支払いは王家に行く!だが、旅が終わったら返させてもらうし、路銀と先々での支払い以外で使ったらぶっ殺すからな!」


ただでさえ国庫はギリギリだからな。

女とか買ったらぶち殺す。


「おいおい、俺の貯蓄を舐めるなよロイア。女が欲しかったら自腹で買うさ」

「チッ、思考を読みやがって」


五年くらいの付き合いだから、相手の考えていることは両方わかる。

ハンスは恭しく礼をすると、部屋を出て行った。

信じてるぜ、ハンス。




それから2年が経ったある日、ハンスが戻ってきた。

各地から集めてきた9人の仲間を引き連れて。

順番に紹介すると、

【血海】のアルペン、【雷熊】のノーラ、【烈女】のユーリ、【錬金王】ジャリュス、【緋斧】のフィアス、【深謀艶女】のイルマ、【狂弓】のシルヴァー、【双剣】のリリア、【奇剣】シジマ

となる。

実に頼もしいメンバーだ。

これらのメンバーは4か月ほど前にとっくに揃っていたらしいが、揃ったなら王都をぱぱっと制圧してしまおうということで、4か月かけて王都を完全制圧したらしい。

その過程で仲間や付き従う勢力も増え、団は大きく成長したそうだ。

そして———————————


「それじゃあ、新市街は?」

「直ぐに建設に取りかかれるぜ!仲間も資金もばっちりだ!」


新市街の施工が始まった。

団........一応、ハンハルト団という名前になった団主導で、工事は行われた。

旧市街と王城を隔てていた崖を切り崩し、そこに街を建てていくのだ。

旧市街の面々も協力し、

”新たな王都”は徐々に完成に近づいて行った。

俺は、建設途中の新市街を見て、思った。


(これで、王都も完成かな。......この先も、きっと上手く行くだろう————)








——————そう思っていた俺は、愚かだったのだろう。

”俺”が変わるには、あまりにも早すぎたんだ。


「ユーリが死んだ。リリアも後を追って——————」


それから数年後。

そんな台詞を、王城に来たハンスが言った。

あまりにも急すぎる仲間の死に、俺は何の反応も返すことができなかった。


「そうか」

「...........なんで、そんなに軽いんだ。仲間.....仲間なんだぞ!」

「分かってる!」


俺は大声を上げた。

軽いわけが無い。姐御肌のユーリはハンスと恋仲だったし、

リリアも気さくでたまに酒を飲んでいた仲だ。

けど、急すぎる............

病にしては前兆が無いし、まさか、毒殺か......?


「とりあえず、葬儀を上げよう.....それが俺にしてやれることだ」

「・・・・・・・・・だな」

「え?」

「何にも、分かってないんだな!」


ハンスは、今までにないほど怒り狂い、その眼に涙をためて俺に食ってかかった。


「俺には何も無いのか!俺は、俺はユーリを愛していたのに!!」

「なんて言えば、良いんだ?ご愁傷様、か?それとも可哀想か?」


俺は、不器用だった。

嘆き悲しむハンスにも、生来のキレ性を発動させてしまった。


「お前は同情が欲しいのか?それとも憐れんでほしいのか?俺だって急すぎる別れで辛いのに、自分を慰めてほしくてここまで来たのか!?」


ハンスの顔が、驚愕で染まる。

十年来の付き合いだが、この表情をしたハンスは..........


「..........ッ!そうか、そうかそうか.......ロイア、お前ってそういう奴だったんだな」

「違う、違うんだハンス!俺だって、俺だって悲しい!」

「言い訳はもう聞き飽きたんだよ!」


ハンスは拳を振りかぶり、俺に殴りかかる。

俺はそれを躱し、ハンスの空いた胴体を掴んで投げ飛ばす。

ハンスは即座に受け身を取り、俺に向かって再び向こう見ずな突進をしてくる。


(しょうがないか)


俺は突進を避けつつ、考える。

仕方ない、今日のところは..............


「アルモス!アルモス!来い!」


俺は叫ぶ。

すると、ドアを蹴破り、豪奢な鎧に身を包んだ王宮騎士団長、アルモスがやって来た。

少々傲慢だが、根は良い奴だし何より家庭的だ。

それに、二人の部下........まだ若いがエルモスという父親に似て傲慢な見習い騎士、そしてゼックという王宮騎士だ。


「こいつを摘まみだせ!」

「了解しました!ゼック、エルモス!こいつを取り押さえるぞ!」


そして、ハンスは縛られて連れていかれる。

俺を睨み付けるハンスに、俺は言った。


「また後日、落ち着いて話そう。いいな?」


だが........

それが叶うことはもうなかった。

後日、ハンハルト団はハンス王国解放団と名を変えた。

公的組織から、反政府勢力となったのだ。

その際、ハンスは嫉妬に狂った俺がユーリを毒殺したと語った。

そして、リリアも俺に犯されて屈辱のあまり入水し自殺したとも根も葉もないことを喋ったらしい。

もうこの時点で、俺とハンスの溝は修復不可能なほどに深まってしまったが.........

崩壊はまだ続いていた。

アルペン、ジャリュス、シルヴァー、シジマ。

この4人が団を抜けた。

それぞれの理由は.......


「俺はハンスさんのカッケー所に惚れ惚れしてついてきたんだぜ?それが今じゃただの女の復讐狂いだ。やってられっかよ」


とアルペン。


「儂は王家と協力して何かをする、それが好きじゃったから付いてきたんじゃぞ?いっくらハンスさんには恩があれども、もう付いていけんわい」


とジャリュス。


「俺は前々からハンスさんが気に食わなかった。だから抜ける......決して、リリアが好きだったわけじゃねえ、それに王様がリリアを強姦だなんてするわけねえからな。もう信用できねえ」


とシルヴァー。

そして......


「先代は前王に借りがあった。拙者もジャリュスと似たような理由だ。ただの闇組織に属する気は毛頭ない。暇を頂こう」


とシジマ。

2人が死に、4人が抜け.....9人いたハンスの仲間は3人だけとなり、

ハンス解放団は続いて行った。

俺も、出来ればそんなことはしたくなかったが、

市民に被害を出すようになった解放団を、抑圧したりした。

その度、俺はどこからかハンスが俺を睨みつけているようで嫌だった。

けれど.........


「俺にどうすりゃよかったんだ?」


俺は苦悩した。

結局王都の新市街も途中で計画は終了し、完成しなかった場所はスラム街となってしまった。

でも、俺はハンスにどうしてやればよかったんだろうな。

ただの大学生だった俺に.........













それから数十年が経ったある日、俺はある噂を耳にした。

それは、魔導飛行船がいきなり翼竜に襲われ、少女がそれを一人で撃退したという話だ。

王宮騎士に調べさせたり、影のものに調べさせたりとしたが、

決して酒の席で広まった噂では無かった。

翼竜の死体も、目撃証言も過剰なほど集まった。

その少女の名は.......


「ユカリ・アキヅキ・フォール..........」


『ユカリ』。

まさか、〈武器王〉がこの世界に来ているのか?

興味を持った俺は、謁見に同行することにした。

そして。


(確かに、ユカリだ..........)


懐かしさを覚えたが、

俺が転生者だという事は誰も知らない。

もしこの”ユカリ”が俺の知る〈武器王〉ではないのなら、俺は問題発言をしてしまうことになる。

俺は話しかけたい気持ちをぐっとこらえ、

その場をやり過ごした。

さらにさらに、転換は続く。

最近は落ち着いてきていた解放団が、急に僅かな乱れすらなくなりを潜めたのだ。

不思議に思った俺が、昔から解放団に忍ばせている奴に尋ねると.....


「ああ、ウチらが最近落ち着いてるのは、団長が女に惚れて骨抜きにされちまったからよ。その女の方針で、俺らは悪事なんぞ働きたくても働けねえよ。団長に殴り殺されちまうからな」


そいつはそう語った。

そんな馬鹿な、あのユーリ一筋で王すら裏切った奴が女にそうホイホイ惚れるわけが.....

そいつの名は!?

俺が尋ねる前に、そいつは言った。


「あ、そうそう思い出した。その女はユカリって言うんすよ。ユカリの姐御、姐御って団長がいつも言ってる」


......やっぱり、ユカリは俺の知ってるユカリなのかもしれない。

だが、王の俺が一応貴族とはいえ自由に行動しまくるユカリに会う機会はない。

呼びつけることは出来るが、必ず我が息子のジルベールが同行する。

俺の下半身が信用できないんだろうな。.........今の俺はそんなことしないのに、ぐすん。


「入れ」

「はっ」


そんなある日、ユカリに付けた女騎士のエルミアが報告を持ってきた。

あの死んだアルモスの娘で、剣の技術は兄にも負けないほどだ。

将来有望だが、女ゆえに苦労も多いらしい。

そんなエルミアが報告を俺にする。

最近のユカリの動向を逐一報告してくれるのだが......


「総合大会か......」

「そうです。クラン『エターナル・バンド』のほぼ全員で参加するようです」

「そうか、分かった。もう下がっていい」

「はっ、カーラマイアに栄光あれ」


エルミアはそう言って部屋を後にした。


「総合、大会か.........」


示威としてハンスらも出場するらしいこの大会。

俺は、執務室を後にし、自分の寝室へと戻る。

全てが始まったこの部屋。

その奥の戸棚に手をかける。

その中には........


「俺も、過去との決着を付けよう、それにあの『ユカリ』..........俺が、見極める」


かつて使っていた、平民が持つような剣が立てかけられていた。

俺はそれを手に取り、部屋を後にした。


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