side-S14 新人冒険者の王都入り
前に出てきたやつの話です。
読み飛ばしても問題ありません。
「ここが....王都かぁ。っとと、すいません!」
「兄ちゃん、王都は初めてか?門がデカくて立派なのはわかるが、周りに気を付けてくれよ!」
俺は、王都のでっかい門...ロヴィア大凱旋門を見上げていた。
だが、つい周囲に気を回せず、恐らく商人であろうおっさんにぶつかってしまう。
気を付けなきゃな。
俺の名前はベン。
ローカン地方出身の、Dランク冒険者だ。
ずっと王都に行くのが夢で、地元で危険な依頼を受けて受けて、受けまくった。
そしてお金を貯めて、魔導飛行船に乗った。
馬車でも良かったが、長旅は堪えるんだよな......
「へえ、これが名高い大通りか.....」
俺は、ギルドへと続く道を見渡した。
大きな道幅を持つ道は見渡す限り遠くまで続いており、
馬車や人間が行き交っている。
ローカン地方で旅人や冒険者に王都の話を聞いた時、いつもここの話を聞いていた。
カーラマイア王国には他にも大きな都市や交易都市などはあるが、その中でもこの大通りはかなり大きいそうだ。道幅は広く、ゆったりと傾斜している。
「さて、まずは.......ギルドに行くか」
魔導飛行船に乗っても余るくらいの貯蓄はしていたので、
数日分の宿代くらいはある。
だが、ギルドで何か依頼を受けて稼がないと、この先はつらい。
冒険者用の賃貸住宅はあるし、ギルドで申請してそこに住むのもありだ。
俺は、颯爽とギルドへと向かった。
◇◆◇
「ん?....何だお前は?」
「でぃ、Dランク冒険者のベン.....です」
「そうか、ベンか........俺が受けるべき依頼を教えてやろうか?」
俺はギルドに入るや否や、自分の身長.....村では中くらいだった......の遥か5倍はあるであろう巨漢に絡まれていた。
周りの人間の話を聞く限りでは名前はハンスで、全身の傷が見る者を威圧しているように感じる。
「いえ.......大丈夫です」
地元でもこういう冒険者はいた。
古参ぶって新しい冒険者に威張り散らす輩は。
だが、この男は.........何か違うようだった。
「心配するな、俺は一応Cランクなんだ」
「し、Cランク!?」
Cランクの冒険者がギルドでくつろいでいるという事は、何か回復不能の障害を負ったか、それなりの立場の人間という事だが....
男......ハンスさんは笑って、言った。
「俺の尊敬しているお方が、新人には優しくしろと言ってるんだ、こっちへ来い」
ハンスさんは俺を依頼掲示板へと手招きする。
それに応じて、俺も掲示板へと移動する。
「どうだ?地元と違って依頼が多いだろ」
「はい......ってえ?どうして俺が地方出身だと.....」
Dランクだとは言ったが、地方出身だとは言っていないはず。
どうして俺の事を.........
「お前の冒険者鞄に付いてる装飾品、ローカン地方の伝統工芸品だろう?」
「あ、これ.......」
「ローカン地方で冒険してた頃に、俺もお守りとして買ったことがある。今は持っていないが、かつてはずっと身に着けてた」
「そうですか..........」
同じローカン地方出身かと思ったが、そういうわけではないようだ。
ただ、ローカン地方はCランクには厳しい土地だ。
魔物は強いが、それに比例して実入りが良くなるわけではない。
俺はきっと、この人が元はBランクだったんじゃないかと思った。
指名依頼を受けなかったり、依頼を一定期間こなさないと、ランクは降格してしまう。
この人はきっと、何かの理由で降格したんだろうなぁ....
「で、この依頼の中で何を請ければ?」
「そうだな.....まずは悪い依頼を説明しよう」
「はい」
俺はハンスさんの指した依頼を見る。
それは薬草の採取依頼で、3本採取で1000オルクまで出すという内容だった。
「破格じゃないですか?」
「よく見ろ、採取する薬草はダルカンヨモギだ。こいつは王都周辺だと西の森にしか分布してない上に、近年の乱獲で数が減少してやがる。西の森はDランクだと苦戦する魔物がいて、一本採取できれば僥倖だろうが、死の危険を冒してまで300オルクを手に入れたいかどうかは微妙だろ?」
「確かに」
そうか、依頼対象がそもそも採取が困難なうえに、それに応じた報酬額としては低すぎるってことか。
「地方ならそういった依頼は選別されて掲示板に貼られる前に棄却するが、ここは王都だからな......毎日数千、数万の依頼が舞い込んで、それらを選別する暇なんてねえ......今は、そうだな、こういう依頼なんてどうだ?」
ハンスさんは俺に依頼を見せて来る。
ゴブリン集落の攻略依頼だ。
「ハンスさん.......俺を舐めてるんですか?こんなEランクでも受けれるような依頼.....」
「まあそう卑下するなって。集団のゴブリンは意外と厄介だぞ。ゴブリン・ソードマンと鍔ぜり合ってる間にソーサラーかアーチャーに脚を潰されて、タコ殴りにされたりする。だから.......ほら」
よく依頼票を見ると、「パーティ依頼」と書かれている。
パーティでしか受けられない依頼なのだろうか?
「ちょっと試したんだが、一目見ただけで分からないようじゃまだまだやっていくのは無理そうだな.......」
「まだまだですかね........」
ハンスさんはしばらく考えて、何かを思いついたような顔をした。
「そうだな、俺がいる時に聞くか、俺の部下を常駐させるから、そいつらに聞け」
「そんなっ、悪いですよ!」
「なに、新人冒険者にしてやることとしては普通だぞ?」
「—————そこまでだ」
ハンスさんの肩に手が置かれる。
俺がそちらを見ると、白いあごひげを生やした男が居た。
「んだよ、ギルマス」
「黙れ、新人の引き抜きは許容できないって言ってるんだ」
「俺はただ、新人に住むところと当分のアドバイザーを提供してやるって言ってるだけだぜ?」
「そうやって恩で固めて縛って、解放団の専属冒険者にしちまうんだろう。ハンス、いくらお前のやってることだからって俺は許容しないぞ。王は許すかもしれないが、俺の目が黒いうちは........」
「ベン」
ギルマス.....つまり、割り込んできた男はギルドマスターという事なのだろうが、ハンスはそれを無視して俺に話しかけてきた。
俺も無視はできず、応える。
「単刀直入に言うが、俺はそこそこ大きい組織のトップで、お前に目を付けた。住むところは紹介してやるし、当分の依頼のアドバイスもしてやる。だから、いざというときは俺に協力してほしい。......どうする?お前がこれをすべて知っていて承諾するならあのクソジジイも何も言えねえ。お前の意志で決めろ」
「................」
要は勧誘なんだろう。
だが、俺は憧れの王都で冒険者が出来ればそれでいい。
悪い話ではない.....のだろうな。
この男が悪い奴でなければ。
「ヤバい仕事じゃなきゃ協力しますよ?」
「うちの団はヤバい仕事は俺の部下が直々にやるから問題ねえ」
「それなら俺も問題ないです」
聞いてるうちに、どうもヤバい組織のようだが、
ギルマスはなにも反応しない。
「.....ハンス」
「んだよ、ギルマス」
「お前とアイツがどこで道を違えたのか、それは知らん。だが.......新人冒険者を”解放”の道具としては使うなよ?」
「ああ、勿論」
ハンスはそれに重々しく頷いた。
その後、俺はハンスにいろんな説明を受け、雑談を交わしてギルドを後にした。
ハンスさんの尊敬する人物とは、Sランクのユカリという人物らしい。
Sランクか........
この平和な王国でSランクになるためには、魔物の討伐しかない。
俺もいつかは.....その人物と会ってみたいものだな。
会って......強さの秘訣を聞いてみたいもんだ。
「ここを下るのか」
俺はハンスさんに教わった通りに、適当な路地で階段を下る。
どうも、今のギルドがあるのが新市街で、ハンスさんの組織の建物があるのが旧市街のようだ。治安が比較的悪く、設備も古いが家は安く借りられるらしい。
俺は階段を下り、旧市街の路地へと入る。
そこからメインストリートへと出る。
そこを右に曲がり、少し進んだ先に建物がある。
夕闇の中で、灯りが付いたその建物に入る。
一階部分はロビーになっているようで、そこには複数人が屯していた。
「ハンスさんから話は聞いてる。4階の左から二番目の部屋だ」
その中でも、少し太り気味な男がそう言った。
俺はとりあえず、その部屋へと腰を落ち着けることにした。
買い物はしてないから、今日は保存用のパンと干し肉だな......
まあ、いいや。
明日から頑張ろう。
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