Ep-129 本選5 リンドヴルム対アドラー(中編)
遅くなりました。
アドラーの力は描写が難しいんですよね。
観客席まで響く激しい衝突音。
リンドが拳を振り上げ、アドラーに向かって振りぬく。
だがその直後、拳は空中で停止し、アドラーの周囲だけが抉られ削られる。
リンドが素早く後方へと退くと同時に、アドラーが拳を受け止めた手の逆、右手から白い閃光を放つ。
「ハァ!」
リンドは放たれた閃光を多少慣れたように避ける。
「その動き.....もらった!」
迸る閃光が鎌を形作る。
アドラーはそれをリンドの移動先に向けて放つ。
すると、鎌から閃光の残滓が漏れ出て刃となり、リンドへと向かって飛んだ。
「魔竜鱗鎧!」
リンドは全身に赤色の光を纏って突進する。
リンドへ斬撃が命中するが、それらは鱗を貫通できず、謎の腐食も起こらなかった。
「...........ちっ!」
アドラーは舌打ちをすると、鎌を思い切り後ろへ振りかぶる。
そして......
「投げた....だと!」
「驚いただろう!」
鎌をぶん投げた。
鎌はそのままリンドへと真っすぐ飛び......
「ふんぬぅぅぅ!」
リンドは右手に生えた剣のような爪でそれを受け止める。
当然、突進の勢いは完全に止まり、地面に足を付けて静止する。
(危ない!)
思わず、俺はそう思った。
アドラーが右手を向け、そこに大きな力が集まったのがここまで伝わってきたからである。
「消し飛べ」
ドギュ、という空気が振動する音と共に、右手から極太の極光のような閃光が迸り出る。
鎌の勢いは強く、下手に回避をすると勢いをつけてリンドに食い込み、致命傷となるのは自明の理だ。
リンドはどうする.....?
「ガアッ!」
リンドは鎌を一度弾き飛ばし、再び自分に戻って来る前に鎌を今度は剣爪を交差させて受け止めた。
「お、オオオオオオォォォォォッッッ!」
そして、鎌を受け流し空へと突き上げる。
鎌は空へと飛んでいく。
それを見届けたリンドはさっと後方へと飛ぶ。
またさっきの繰り返しか......と俺は思ったが違った。
リンドの移動先の地面が光輝き、地面を砕いて閃光の顎門が姿を表した。
「厄介な」
リンドは閃光の顎門を空へと浮上することで避ける。
後を追うように閃光も口を開けるようにしながらリンドを追う。
それはまるで、地面から顔を出した蛇が羽虫を喰らうために追うようだった。
「逃さん!」
アドラーが一言呟くと、アドラーの周囲の地面を砕いて、3つの閃光が姿を現しリンドを追う。リンドはそれらから逃げるようにして、空へ空へと一気に急上昇した。
観客たちが一斉に空を仰ぐのが俺の目の端に映る。
「.........」
「臆したか?竜の帝王たる者も情けないな」
逃げを取ったリンドにアドラーが挑発する。
だが.........
「反転した!?」
俺は思わず叫んだ。
リンドは結界の高度限界ギリギリで一気に反転し、閃光を振り切る。
そのままの勢いでアドラーへと突っ込む。
が........
「やることが単純だな!」
「どうであろうかな?」
アドラーが単発で閃光の弾を放ち、リンドの進路を塞ぐ。
対するリンドは.......ブレスで返した。
しかしブレスは直ぐにアドラーが打ち消してしまう。
何のためにブレスを.....?
その理由はすぐにわかった。
後続で来る追尾閃光の熱線、それをかき乱し、ブレスの残滓に隠れて自分の位置を一瞬見失わせることが目的なのだ。
だがアドラーはそれに気付いていない。
リンドは一瞬制御を失った閃光の熱線を搔い潜り、
低空飛行でアドラーへと肉薄した。
そして..........
「なッ................!」
「グオオォォォォォォォォッッッッッ!!!!!」
ブレスの残滓の元を潜るようにして、リンドが高速で接近する。
ブレスの残滓に隠れていたせいで、アドラーは上空を飛んでいると思っていたリンドが
いきなり目の前に現れたと思っただろう。
「だが.........」
「その術は..........もう飽きた!」
リンドがアドラーに向けて、超至近距離でブレスを放つ。
ブレスはアドラーの前で打ち消されるが..........
「ゴォオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
腐食の閃光と吐息が激しくぶつかり合い...........
キィイイイイイイ!!
リンドのブレスが細く鋭くなり............
腐食の閃光が形作る壁を貫いた。
「ぐああああああああああああああっ!」
そして、吐息がアドラーを一瞬のうちに吞み込んだ。
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