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【300万PV突破】不人気職の俺が貴族令嬢に転生して異世界で無双する話 ~武器使いの異世界冒険譚~  作者: 黴男
第一章 王都大会編

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Ep-127 アラドの家

戦闘回8割の現状を何とかすべく、日常回の練習をばと思って書いた奴です。

アラドは激戦に勝利し、新たな力に目覚めた。

そして、それを祝って仲間内で祝勝会を開いたのだが.........


「アラドの剣ってどこで手に入れたの?私も見たことない剣で....」

「ああ、アレは南の大樹海の奥地の遺跡で....」

「アラド、剣術はどこまで極めてるんだ?」

「剣術は剣帝まで修めている」

「アラド、あなたは魔力操作が上手ですわね、どうやって練習したのでしょうか?」

「別に大したことはしていない。後で騙されたと知ったが、魔力を含んだ土を食ったり、魔力が微量に含まれる滝に打たれたり、魔石を砕いて食ったりしただけだ。」

『アラドよ、その剣には見覚えがある、と言ったらどうする?』

「.........後でその話、聞かせてもらおう」


終始こんな感じで、アラド以外は大いに盛り上がった。

だが何故か、アラドは遠い目をして静かに酒を呑むだけだった。

この世界に20歳以下は酒を飲んではいけないというルールはないのでアレックスやクレル、リンドなどは飲んでいるがそれ以外は全員ジュースなどを飲んでいる。


「あ、そうだ」

「どうした、ユカリ?」


俺は気になったことがあって、アラドを外に引っ張り出す。

アラドは不思議そうにしながらも、まだ年も明けて早々の寒い空気に身を晒した。

酒場の喧騒が分厚い扉に阻まれてから、俺はとある疑問を口にした。


「アラドってどこに住んでるの?」

「それは.........王都旧住宅街に家を借りて住んでいる」

「今度遊びに行っていい?」

「良いが......俺は普段依頼で出ていることが多い。事前に行くと言ってくれなければ無駄足を踏ませてしまうかもしれん」

「じゃあ明日行こう」

「急だな」

「急だね」


アラドの家は気になっているのだ。

他のメンバーの家はOSO時代にちらりとでも目にしているが、

アラドやアスキーと言ったゲーム時代は登場しなかったかNPCだった人間の家には興味がある。

俺はちょっとワクワクしながら、アラドを連れて酒場へと戻るのだった。


◇◆◇


翌日、俺はエストニア邸を出る。

最近は主にエストニア邸か、クレルが王都に与えられたというアスランド/アーサー家別宅、学院寮に滞在している。

一応住居としてはリンドが寝泊まりしている洞窟もアリだとは思うが、あの洞窟は風通しがよく涼しい。夏に寝るならともかく今の時期は寒いだろう。

俺は新住宅街を歩く。

新住宅街の方が綺麗で住みやすそうだが、俺は旧住宅街の方が好きなんだよな。

聞けば前王ラーンハルトが、王国建立から数百年間使われていた旧住宅街に代わって新しく住宅街を作ったそうだ。

なので、旧住宅街の方が古き良き王都を体現した街のようだ。

スラム街も元は旧住宅街だったそうで、規模が大きくなりすぎて王国兵ではどうしようもないらしい。


「........あっ、ユカリの姐御じゃないっすか、どうしたんすかこんな所で」

「イアンか、何してるの?」

「あっこれは....解放団の買い物っす」

「林檎?」

「ルドルフのおやっさんがこれ大好きなんですよ。」

「あ、ミーウェイ茶だ」

「これは特に誰かの好物って訳じゃ無いんすけど.......気付いたら減ってるんすよね」

「なるほど」


俺の実家くらいしか見てなかったけど、意外と知られてるんだなミーウェイ茶。

それなりにお高いはずなんだが、それくらいなら普通に予算で落とせるのか。

解放団がどんな商売をしてるかは知らないが、あまり関わりたくないな。

俺はイアンに別れを告げ、再び歩き出す。

新住宅街をしばらく歩き、冒険者商店の横を抜けようとした時、勢いよく扉が開き

俺は吹っ飛ばされた。


「痛ったぁ.......」

「...あ!すいません!お嬢さん........」


扉を開いたのは、明らかに駆け出しと分かる冒険者だった。

その顔には軽い絶望が浮かんでいる。

新住宅街は普通に貴族の令嬢が歩いてても不自然な場所ではないので、

身なりがいい俺を貴族の令嬢と判断したのだろう。

ちなみに貴族は平民なら誰でも、理由さえあれば不敬罪で処分できるらしい。おおこわ。


「いいえ、気にしてないよ」

「俺が気にするんです!お嬢さん、名前は?後でお詫びをしに行きます!」


ちょっとナンパ臭いかも知れないが、俺が嫌ならいつでも二度と俺にたどり着けないようにできる。なら名前くらいならいいか......


「ユカリ・アキヅキ」

「ユカリ...........?」


冒険者ネームは秋月の方を名乗っている。

フォールの名はあんまり使いたくない。


「ユカリ!?あの伝説のSランクの!?」

「Sランク!?私まだCランクなんだけど!」

「でも、ギルドにいつもいるハンスさんがユカリさんの事をSランクだって.....」

「あんのやろぉ......」


確かにSランクと互角に戦えるのかもしれないが、

俺は書類上はただのCランクだ。


「後でハンスにはキツイお仕置きが必要だね。......お兄さん、お名前は?」


一応名前も聞いておこう。


「俺はベンです。ハンスさんには手加減してやってください、あれでも新人冒険者にだいぶ良くしてくれる人らしいので.....」

「そうなの?」

「はい......」


じゃあ手加減してやるか。

俺はベンに挨拶をしてその場を離れる。

そのまま直進し、適当な場所で曲がる。

そして、下りの階段を見つける。

旧住宅街は海抜2m程の場所にあり、段々状になっている構造の王都でも最低地なのだ。

それ故低く見られがちだが、俺は結構この街が好きなんだよな。

俺は旧住宅街に降りる。

そしてメインストリートへと移動する。

メインストリートはかつては王都の中心街だが、今はシャッター街というより廃墟街と化している。法螺貝亭もこの辺だが、今日は反対側へと向かう。

この辺は住宅ではなく、完全な商業地区だった場所だからな。


「おい、お嬢ちゃん。綺麗な格好してんな」


俺は下を向いて歩いていたのだが、

いつの間にか囲まれていることに気付いた。

数は5人ほどか。


「ちょっと良いことしねえか?」

「なあに、悪いようにはしねえよ」


何が悪いようにはしねえだよ。

女の子を5人で囲むなんて下心しか無いだろ。


「おっと、逃げようなんて思うなよ。」

「さあ、俺たちとあの路地で......」

「嫌だね」


俺は真っ向から断る。

それを聞いて、男たちが怒りの表情を浮かべる。


「何だと、舐めやがって!」

「その変な剣で何ができるってんだ!?」

「お前ら、やっちまえ!」


男たちが一斉に俺に近づこうとし......


「エッジ、やれ」

「ぐぼぉぉぉ!」

「ぐああああ!」

「なぁぁぁぁ!?」

「がぁぁあああ!」

「おぼぉおお!?」


一瞬で全員が倒れる。

何をやったかというと、ダンジョンパワーを最大まで流したエッジが、音速で影から飛び出し、男たちを全員殴り倒しただけだ。

やっぱり、ちょい悪なだけの無辜の民を殺してしまうのは、何だか自分......というかユカリという人物を穢すようで嫌だからね。

それに、こんな奴らに刀を抜いたら刀も泣くだろう。泣くかは分かんないけど。

倒れた男たちを放置して、俺は住宅街へと入り、入ってすぐの家へ向かう。

そしてドアベルを鳴らした。


「......誰だ」

「ユカリだよ」

「今行く」


扉が開き、アラドが姿を現す。

アラドは俺の姿を見るなり、中へ引き込んだ。


「こんな寒い中、そんな恰好でいいのか?」


俺は今日、いつも着ているドレスアーマーもどき(ソルジャードレス)ではなく、普通のフリルがたくさんついたドレスを着ている。

俺は良いって言ったのに、ベルが洗濯すると言って聞かないので、仕方なくこれを着て来た。寒さについては、「ロングアイスディフェンシブエンチャント」と「ロングウィンドディフェンシブエンチャント」で防げることが分かったので、何の問題もない。


「アラドの家に行くからね」


余所行きだよ、という意味も込めてそう言う。


「それを着ているところを見たことないのだが、もしや新品か?」

「いや?昔に親から買ってもらったけど、よっぽどの事が無きゃ着ないよ。」


普通にドレスって着脱が面倒臭いんだよね。

今日はつけてないけど、コルセットも締めなきゃいけないしさ。


「そうか............」

「それにしても、意外と良い部屋だね」

「ああ、適当に私物を置いていただけなんだが....」


まず、目に映るのは本棚。

この世界では本は高いものではないが、安いものでもない。

本をこれだけ並べておけるのは、

流石元Bランク冒険者と言わざるを得ないね。

ちゃんと読んでるのかな.......


「あれ、ちゃんと読んでるの?」

「本か。ちゃんと読んでいる。力があっても、知識が無ければBランクにはたどり着けん。Sランクは力があればなれる、だがAランクは違う。こんな言い方はしたくないが、SランクよりもAランクの方が冒険者としては優れている」

「そうなんだ.....」


アラドが割としっかりとした考え方を持っていることに俺は驚かされた。

エターナルバンドの収支計算などもアラドがやってるようだし、結構多芸なんだよな。

俺の眼に、植物が目に留まる。


「あれは?」

「アレはただの薬草だ。まあ、獣人から貰った聖樹周辺の植物の種のようだし、普通の薬草では無いだろうな。大切に育ててはいるが、使う機会がないことを祈ってはいる」

「へえ.....薬草かあ」


部屋のものは大体見終わり、

次は何をしようかと思った時、アラドが棚から何かを取り出した。


「トランプ?」

「大昔に知り合いから貰ってな、そいつはBランク昇格試験で死んだが、そいつとよくやっていた。.........一緒にやらないか?」

「勿論」


俺とアラドは、その後日が暮れるまでトランプで勝負をした。

日が暮れた後、俺はアラドと夕食(パンと干し肉と薄味のスープ。Bランク冒険者の食事ではないが、アラドが冒険者時代からこれしか食ってないのでこれしか用意していないと言い、仕方なく俺も食った。)を摂り、泊っていくか?とアラドに言われたが、普通に寮に帰るからと断り俺は家へとテレポートで帰還した。

最後の瞬間、常に無表情なアラドが一瞬だけ寂しそうな顔を浮かべたのを、俺は確かに見た。





後日、俺を襲った5人組が土下座をして謝りに来た。

その後ろにはノーラ爺さんがいた。


「ゴルルァお前ら謝れ!落とし前を付けんと指を詰めるぞ!」

「「「「「すいませんでした、ユカリの姐御ォォォ!」」」」」


という訳で、解放団のメンバー(てっぽうだま)が5人増え、俺の舎弟(しんじゃ)も5人増えたのだった。


アラドの前で、誤解を招く発言を繰り化すユカリ.......




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