CEP 折れた黒牙・一 〈黒牙〉の半生
アラドの半生です。
アラドはメンバーの中でも唯一といっていいほど、攻撃スキルを持たないのに高い攻撃力を誇ります。
ただし魔法の適正は0です。
幼い頃、俺は病に侵されていた。
俺に「アラド」という名をくれた両親は、そんな俺を大切に育ててくれた。
そんな親には感謝している。
村の医者も見放した俺を、働けもせずただ寝床で苦しみに喘ぐ俺に、良くしてくれたのだ。
旅の医者だという人間にも、たまたま巡礼に来た聖女にも診てもらったが、
俺の病気は治らなかった。それだけではなく、後者は更に病状を悪化させた。
誰も俺の病気を知らなかったし、誰も俺を治すことはできなかった。
俺は大切に育ててもらったおかげで、14までは元気に育つことができた。
だが..........元々高齢だった為に父が死に、後を追うように母が死んだ。
本来は親戚の家へと行くのだが、成人の年齢だったので俺は野に放たれた。
「どうして、俺がこんな目に...............ッ!」
その当時、俺は着の身着のままで放り出された。
全身を苛む苦痛に耐えながら、果ての無い森を這いずり回ったのは今でも記憶に残っている。
だが、そんな俺にも奇跡が舞い降りた。
それは、ある日の事だった.......
俺はその日、何とか集めた木の実と、奇襲で捕まえた兎の肉を、苦労して起こした火で焼いて昼食を摂っていた。
目的もなく、大樹海を常に移動しているため日々の食事にも困っていたが、その日は幸運にも、阿呆な兎を捕まえることができたのだ。
「あぐ........美味しいとは言えないな」
俺は焼いただけの肉を齧る。
最初の方は生焼けの肉を食べて腹を壊したが、今はそんなヘマは犯さない。
俺は少し酸っぱく、赤い皮を持った木の実を齧る。
これは村でも食べた事があった。
「次はどっちに進もうかな.......」
俺はたっぷり悩みながら、飯を食い終わる。
そして、周囲を見渡す。
「....................................ん?何だアレは」
何か目標のようなものは無いかな、と周囲を見渡していた俺は、何かを見つけた。
それは、苔に覆われ、激しく劣化した何かの像であった。
今ならそれは、竜の頭を模したものであるとわかったが、当時の俺にはそれが何なのかさっぱり分からなかった。
「......せっかくだから、この像が向いてる先に進むか............」
俺は竜の頭が向いている方向に進むことにした。
そして、数時間進むと.......
俺は、似たような石像を発見した。
だがその竜の石像は、全く別の方向を向いていた。
「..............今度はこっちに進んでみるか」
そして俺は、更にそちらの方向へと進む。
陽も暮れてきたころ、俺はついに終点へと辿り着いた。
頭だけではない、巨大な竜の石像が鎮座していた。
そして、その台座には、所々今では使われていない文体や単語を使った文章が書かれていた。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■ければ、竜の眼の前へと掌を翳し、■の力を示せ
~■■■■■・■■■■■~
俺は全く意味が分からなかったのだが、
最後の文章だけは読むことができた。
なので、手を竜の顔の前へと伸ばした。
直後、俺の身体を苛んでいた苦しみが少し和らいだ。
そして...........................
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ................
「な、何だ!?」
森全体が激しく震えた。
そして、竜の石像の横の地面が隆起し、何か四角形の建物がせり上がってきた。
「................................入ってみるか」
俺は巨大な四角形の建物へと入る。
壁画や碑文を横目に一番奥へと進むと...........
「剣?」
俺は出会った、剣に。
台座に突き刺さった剣は、激しく劣化した遺跡の中で、差し込む夕日を浴びて不気味に輝いていた。
どう見ても怪しい。
だが俺は、吸い込まれるようにその剣へと触れた。
「うぐぅっ!?」
俺は、その剣に触れた瞬間、倒れた。
視界が暗くなり、激しい耳鳴りに襲われる。
だがすぐに..........俺は気付いた。
物心ついた頃から既に俺を蝕み、苛んでいた病が、苦痛が綺麗さっぱり消え去っていたのだ。
「この剣が?」
俺はその剣を見た。
ちょっとした装飾以外は、何の変哲もない大剣。
だがそれは、俺を救うほどの力と神秘を秘めていた。
これが何なのかは分からない。
だが俺は確かに、この剣に救われたのだ。
ガラ.........
その時俺は、背後で物音を聞いた。
慌てて振り返ると、そこには見たこともない魔物が居た。
地響きの中心であるここにやって来て、俺を見つけたのだと俺は瞬時に理解した。
逃げることはできない。逃げるためには横を抜けなければいけないが、俺にそこまでの素早さはなかった。
ならば..........
「う、ォオオオオオオオオ!」
俺は剣の持ち手をしっかりと持ち、引き抜いた。
確かな重みが俺の腕を襲うが、俺は剣を地面に引きずるようにして持つ。
そして........................
「ガォオオオオオ!」
「ォォォォォ!」
俺は、魔物の突進をぎりぎりで避ける。
巨体が壁に衝突し、土埃や苔が天井から落下する。
「次の突進......それがチャンスだ」
俺がこの剣を強く振ることはできない。
だが、向こうから勢いを付けて来てくれるなら、大歓迎だ。
俺は、剣を構えてその場に立つ。
そして。魔物は怪しいと思いつつも俺に向かって突進してきた。
「うぉぉぉぉ.........アアアアアアアァァァ!」
俺は剣を構え、魔物の横っ腹を狙う。
「貫け!」
「ガァァアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ...................」
俺は吹っ飛ばされ、遺跡の壁にぶつかるが、追撃は来ない。
剣は確かに魔物を捉え、魔物は血溜まりの中へと倒れこんだ。
だが、まだ生きている。
魔物はこの程度の傷では死なないのだろう。
壁に衝突したおかげで、体の動きが鈍い。
次があるかは分からない。
「...........................なんだ?」
その時俺は、自分の中にある冷めた何かが、剣に移って熱くなる。
そんなイメージを抱いた。
なら、それを剣に込めれば.......?
「軽くなった.....?」
魔力を込めれば込めるほど、剣が更に軽くなったような感じがした。
俺は、剣を構える。
魔物は再び、俺に向かって突進してきた。
だが...........先程とは違う!
「ここだ!」
俺は魔物が着地と同時に振るった爪を避け、その胴に剣を叩き込んだ。
魔物が唸り声を上げて後ろへと倒れこむ。
「終わりだ!」
俺は剣を振りかぶりながら跳び、それを一気に振り下ろした。
何かの力が、ただ振るわれた剣を大幅に強化し、俺の振り下ろした剣は確実に、魔物を一刀のもとに絶命させた。
「.............終わった、か。」
俺は剣を見る。
剣は光るでもなく、音を出すでもなく俺の手に握られていた。
母からよく聞いた伝説の英雄が持つ武器は、知性があったりするものだが、
どうやらこの剣には無いようだ。
俺はただの剣を引きずり、遺跡を後にした。
そして俺は、剣を携えて冒険者の集う街へと旅した。
そこで、俺は................後の人生に大きく影響するような、
出会いと別れ、助けられ騙され、生きた。
『出資者』に半ば強制的に王都へと連れていかれるまでは。
そこで俺は、生まれて初めての陰謀へと巻き込まれた。
そして..............................................
「…名乗りたいが《出資者》の為にも名乗るわけにはいかぬ。ユカリ・フォール、俺は無名の戦士として貴様に、挑む!」
俺は名も顔も知らぬ少女へと挑んだ。
いや、名は知っていたか。
事前に資料を見たからな。
フォール家に生まれた長女。
俺の斬撃は問題なくテラスの彼女の首を斬り飛ばし、それで全てが終わるはずだった。
だが彼女はそれを防いだ。
俺は彼女に挑みかかり........
敗北した。
あらゆる攻撃は意味を成さず、彼女はかつて対峙したアンデッドの剣士、それよりも凄まじい剣術にて俺を攻めた。
俺は何とか敗走したが、その時から俺は、彼女に興味を持った。
それが、俺の王都での生活の始まりだった。
魔物を倒した直後のアラドのステータス
アラド Lv4
<剣術:Lv1>
<魔力操作:Lv1>
<無限魔力炉:Lv14>
アラドの持っていた剣の詳細:
ダインスレイヴ 伝説級
古代に製造された伝説の武器だが、魔力の研究が行われていなかった古代では、
無限に体内の魔力=生命力を吸い上げ、その剣身を鋭くさせる呪いの魔剣だとされ、
古代の神殿に封じられた。
イメージとしては、ほとんどの人間はダインスレイヴを持った際魔力の蛇口を開けっ放しにしたので、無限に魔力を吸い取られ衰弱死したが、
アラドは所持スキルとの相性も良く、魔力の蛇口を制御することに成功した。
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